映画『君のクイズ』レビュー
「一文字も読まれていない問題文を、やらせ一切なしで正解できるのか?」
誰もがあり得ないと思う疑惑を検証する舞台。そこで開陳される「正解するための技術」が私のような初心者にもクイズの面白さを伝え、翻って渦中の人物の謎を大きく膨らませていく。これだけでも十分なエンターテイメントなのに、だからこそ、といわんばかりにクイズに挑む解答者自身へと苛烈なスポットライトを浴びせるストーリー展開が白眉。どんなクイズにも正解があり、そのクイズが用意されて成り立つイベントを取り上げる映画として抱えざるを得ない閉鎖性を中村倫也、神木隆之介、ムロツヨシの名優三竦みで破壊し、作品としてのテーマを大きく広げることに大成功していました。
本作における「正解」という言葉はそこに流れ込む文脈次第で、使われる意味がサイコロみたいに様変わりします。3人が演じるキャラクターに関係性もそれに合わせて変化し、見かけ以上に複雑な変化を遂げますが、かかる過程で生まれるドラマを、坂田泰彦演じるムロさんの怪演を抜きにして語ることはできません。
例えば本庄絆と坂田泰彦。本庄絆のミラクルな解答の仕方に関して、三島玲央は彼らの癒着を強く疑っていましたが、これはある意味で当たっていました。だって、彼らが目指すゴールは全く一緒だったんですから。そのセンスの部分で坂田は本庄を高く評価していた。「こいつは特別」と呟いたシーンの、妙にヌメっとした感触がとても記憶に残っています。
次に三島玲央と坂田泰彦。クイズに真剣に取り組むあまり、視聴者の存在を忘れる三島について坂田は何も語りません。まるで空気のような扱いをする。その態度が一変するのは三島が本庄の秘密にたどり着いた時。その真相の答えを求められて、三島はこう答えました。
「これは…彼の魔法としか言いようがないものです」
この言葉を聞いた瞬間、坂田がニンマリと笑うリアクションが最高に気持ち悪くて震えました。ここにもいたかよ俺の同志という見えない台詞がスクリーンを埋め尽くているように見えて仕方なかった。その後、坂田は三島の元に現れ、次のクイズ番組への出演をオファーします。私にはあなたしかないと言わんばかりの距離感で、親密に、胡散臭く。
微笑みを絶やさない彼の、底知れぬ不気味さは三島がなぜ、魔法なんて言い方をしたのかを一切考えない態度の現れで、自分自身の「正解」を少しも疑わない彼の世界観そのもの。それに気付いた時、坂田の背後に透けて見える世相も一斉にケタケタと笑い出します。狂ったようなこの歯車の噛み合い方は、本作に込められたクリティカルな社会批判です。これに対して、本庄と三島がそれぞれに出す答えこそ本作のハイライト。各々の「正解」を携えて世界を相対化し、その幅を、奥行きを広げていく。struggleな人生に覚えられる可能性に対して、その手で出す答えたち。そこに、キミが詰まっている。まさにタイトル通りのエンディングです。
肩肘張らず、ただただ座席に身を委ねるだけで最高のエンタメを味わえる作品はテロップ等の視覚情報の使い方も上手く、その内容が優れた説明描写であるのと同時に、映画自体を盛り上げる特殊効果にもなっていて見応えがありました。大衆芸術こそ映画の本領。むちゃくちゃ面白かったです。『君のクイズ』、興味がある方はぜひ劇場へ。お勧めです。
映画『君のクイズ』レビュー