霊能探偵・芥川九郎のXファイル(20)【名古屋ヴァイオリン編】

第1章 ヴァイオリンナイト(騎士)

 霊能探偵・芥川九郎の助手・能年(鎧)は、芥川の指導の下にヴァイオリンを練習していた。能年(鎧)は鎧の妖怪である。中区にある芥川の事務所に住み込みで働いている。事務所と言っても、古びたビルの一室に過ぎないのだが。
芥川「能年君、あきらめるのはまだ早いぞ。自分を信じるんだ。」
芥川にそう励まされ、能年(鎧)はコクッと大きく頷いた。そして、『きらきら星』を一生懸命に練習している。そこへ、芥川の友人・牧田がやって来た。
牧田「こんにちは。ヴァイオリンの音色が聞こえてくるから、まさかと思ったけど、やっぱり能年君が弾いていたのか。ギターはどうしたんだい?ギターを極めて、ギターナイト(騎士)になるんじゃなかったっけ?」
芥川「ギターナイト(騎士)のための練習は一旦中止して、今はヴァイオリンナイト(騎士)を目指して練習しているんだ。」
牧田「どうしてまた・・・なんでヴァイオリンなんだい?」
芥川「先週、『北京ヴァイオリン』という映画を観たんだ。僕は猛烈に感動してね。それで思い立ったんだ。能年君をヴァイオリンナイト(騎士)にしようってね。」
牧田「その志は素晴らしいけど、芥川君はヴァイオリンなんて弾いたことないだろう?」
芥川「うん。僕はヴァイオリンなんて弾けやしないさ。でも今は、YouTubeで何でも学ぶことができる時代だ。それに『北京ヴァイオリン』の父親だって、ヴァイオリンを弾くことはできない。」
牧田「YouTubeって・・・それに映画の話を持ち出されてもなぁ。」

第2章 名古屋ヴァイオリン

 助手の能年(鎧)はヴァイオリンの練習で手が離せないので、芥川は自分でコーヒーを入れて牧田に渡した
芥川「僕は能年君をヴァイオリンナイト(騎士)にするために、彼(鎧)を音楽大学に行かせるつもりだ。」
牧田「音楽大学って・・・能年君は高校を卒業していないから、大学に進学できないだろう。」
芥川「音大に進学する前に、通信制の高校を卒業すればいい。高卒認定試験を受けて合格する方法もある。」
牧田「高校を卒業って・・・能年君は妖怪だから、そもそも戸籍がないだろう。」
芥川「戸籍なんてその筋の業者から買えばいいだろう。今の時代、それなりのお金さえ用意でれば、人間の内臓だって買えるんだから。」
牧田「芥川君。僕はこれでも元警察官だ。僕の前でそういう質の悪い冗談はやめてくれないか。」
牧田は、今はフリーランスとして活動しているが、元警察官である。数年前まで、愛知県警の刑事として活躍していた。
芥川「僕はロジカルに話しているだけだよ。決してラディカルではない。」
牧田「君のことをよく知らない人が聞いたら、頭がおかしいと思われるよ。いい加減にした方がいい。」
能年(鎧)はいつの間にか、ヴァイオリンの練習をやめて二人の口論を聞いていた。やがて彼は、静かに事務所から出ていった。

第3章 安形クリステル

 能年(鎧)が事務所から出ていっても、芥川と牧田は気付かずに口論を続けていた。彼(鎧)は一人、ヴァイオリンを両手に抱え、堀川沿いの道をぶらぶらさまよっていた。その時、向こうから安形クリステルが歩いてきた。
クリステル「あら、芥川先生のところの能年さんじゃないですか。どこへ行くんですか?買い物ですか?それともお散歩かしら。」
安形クリステルは名古屋で有名な女子高生探偵である。千里眼の力で難事件を解明してきた能力者である。
能年(鎧)「・・・・・・」
能年(鎧)の元気がない様子を見て、安形クリステルは心配そうに言った。
クリステル「芥川先生とケンカでもしたんですか?」
能年(鎧)はどう答えたらよいのか分からず、頷いたり首を振ったりしている。
クリステル「芥川先生が許してくれるまで、私の家にいらっしゃい。空いてる部屋がたくさんありますから。」
能年(鎧)は迷いながらコクッと小さく頷いた。彼(鎧)は安形クリステルに連れられて、彼女のお屋敷に行くことになった。安形クリステルの家は名古屋で代々続く老舗企業であり、彼女はそこのお嬢様である。
 しばらくして、芥川と牧田は能年(鎧)がいなくなったことに気が付いた。二人は周辺を探したが、彼(鎧)を見つけることはできなかった。

第4章 安形家のお屋敷

 安形クリステルのお屋敷に居候することになった能年(鎧)は、翌日から安形家執事の指導の下で働いていた。その日の午後、お屋敷に芥川と牧田がやって来た。
クリステル「いらっしゃい。芥川先生の助手・能年さんは今、庭でお掃除をしていますよ。」
芥川「安形さん、ご連絡ありがとうございます。うちの能年が世話になっているようで。ご迷惑おかけしました。」
クリステル「一体、何があったんですか?昨日、私は守屋愛の件についてお話を伺うために、芥川先生の事務所へ向かっていたんです。そうしたら、能年さんがとぼとぼ歩いていらっしゃって・・・」
牧田「昨日、私と芥川が能年君のヴァイオリンのことで、激しい口論になりまして。能年君はそれで、心を痛めて事務所を出ていったんです。」
クリステル「能年君のヴァイオリン?」
芥川と牧田は、昨日の口論について安形クリステルに説明した。彼女はあきれて言った。
クリステル「本当に・・・しょうもない・・・」
芥川「安形さん。今回ばかりは僕も、本当に反省しているんです。」
牧田「僕も反省しています。能年君に謝りたいんです。」
クリステル「分かりました。能年さんは1階にいますから、連れて帰ってください。」
 芥川と牧田は、大きなお屋敷の広大な庭で掃除をしている能年を見つけて駆け寄った。
牧田「能年君。昨日は、君の気持ちも考えずに悪かったね。許してくれ。」
芥川「一番悪いのは僕だよ。能年君、すまなかった。さぁ、帰ろう。叔母さんも心配しているよ。」
能年(鎧)はコクッと大きく頷いた。昨日の出来事で落ち込んだ彼(鎧)の気持ちも随分、回復したようである。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(20)【名古屋ヴァイオリン編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(20)【名古屋ヴァイオリン編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-16

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  1. 第1章 ヴァイオリンナイト(騎士)
  2. 第2章 名古屋ヴァイオリン
  3. 第3章 安形クリステル
  4. 第4章 安形家のお屋敷