続高校珈琲 第三話

おはようございます。第三話のお届けです。槇に告白するチロ。結果は。お楽しみに!

第三話


 「続高校珈琲」
        (第三話)


         堀川士朗


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場当たり稽古をつけながら立村槙の事が気になって気になって仕方ない。
俺が書いて俺が与えたセリフを立村が真剣に真面目に男声を使って発するだけですごく心臓がドキドキする。
一挙手一投足に注目してしまう。
美しいフォルム。
横顔がとても綺麗だ。
何だろうこれ。
あれだ。
きっとあれだ。
己にまかせよう。
俺は自由だ。

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僕たちは魂の会話をしているんじゃないだろうか。
もしかしたら30年前の喫茶モゾビーに僕たちはいるのかもしれない。
窓の外ではちらほらと雨が降っていた。
今日は天気が変わりやすいと、朝のニュースで言っていた。
魂の会話。
永遠に続けば良いなと思った。
この瞬間が最大に美しくて刹那かった。
そして僕は高校演劇連盟祭の思い出に心をダイブさせた。
あの夜の事だ。

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舞台『七人の黒沢ひろあき』の通し稽古を二回やったら夜遅くなり、自転車で帰ろうとすると立村槇がぽつんと立ってこちらを見ていた。
無言だったけど彼女の綺麗な瞳には既に強力な磁場が発生していた。

「乗ってく?」

と声をかけた。
立村はうなずいた。
なぜかそばにいた宮嶋志保がふくれっ面をしていた。
ふくれっ面だとますます松雪に似ていた。

自転車にニケツして中川の長い長い川沿いを走って埼玉県の南端の立村の家まで送っていく。
途中の大木が植えてあるお地蔵さんのところで立村がお尻が痛いと言ったのでそこからは自転車を押しながら歩いた。
街灯が少なくて暗い。
こんな時間、この長い暗い一本の道には俺たち以外誰も通らなかった。
飯塚橋を過ぎた。
横をチラチラ向きながら俺は、立村のキリッとした濃い八文字の男眉毛ばかり見ていた。
あと、彼女の天然パーマのショートカット。
くせっ毛が風に揺れていた。
色々な話をした。将来の事とか家族の事とか。
立村も俺と同じくひとりっ子で父親がいなかった。

「俺さぁ」

中川の川のどぷどぷと流れる音を聞きながら「俺さぁ」の続きが言えず、俺は立村を強く抱きしめた。
自転車が倒れた。
構わない。
キスをした。
風が吹く。

「好きだ。大好きだ。俺の彼女になってくれ」

と俺は言った。
立村槙はクールな瞳に光を宿して、

「よいですぞ、黒沢ひろあきどの!」

と男声でおどけて言った。

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           つづく

続高校珈琲 第三話

ご覧頂きありがとうございました。また来週お会いしましょう。

続高校珈琲 第三話

僕たちは魂の会話をしているんじゃないだろうか。

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更新日
登録日
2026-05-16

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