霊能探偵・芥川九郎のXファイル(17)【南信州のスライム編】

第1章 南信州への旅

 名古屋の霊能探偵・芥川九郎は、友人の牧田と東三河の霊能探偵・神谷京介と共に、南信州へ向かっていた。
芥川「京介君に車を出させて、運転までさせて申し訳ないね。」
神谷「いえ、全然大丈夫ですよ。僕はドライブが趣味なんです。わざと下道を選んで、何時間も運転したりすることもあります。」
牧田「今回は飯田市で一泊してから、山へ調査に行くんだよね。」
芥川「うん。南信州の山で化け物が出たという噂が広まっているんだ。多分、魔獣だと思う。」
神谷「父から芥川先生と一緒に調査に行くよう言われたんです。」
京介の父・神谷寛志は芥川の師匠であり、東三河で霊能探偵事務所を営んでいる。
牧田「魔獣を捜索し、魔法で魔界に送還するんだね。でも、山中を捜索して探し出すのは大変だろう。」
芥川「魔獣の放つ魔力を探知すればいいんだよ。砂漠で宝石を探すようなムリゲーではない。」
牧田「僕には霊能力がないから、よく分からないなぁ。」
神谷「魔獣の魔力を探知すれば、居場所が大体分かります。見当をつけて探すことができるんです。」
 三人は昼過ぎに出発したので、飯田市に着いた頃には日が大分傾いていた。彼らは飯田市に到着してからまず、宿泊施設にチェックインした。
芥川「今日は晩ご飯を食べたら、各自好きなように過ごそう。」
神谷「僕は明日に備えて早めに休みます。」
牧田「そうだね。明日もあるから、今日はさっさと休んだ方がいいね。」
芥川「僕は少し晩酌を楽しんでから寝るつもりだよ。」

第2章 スライムが現れた!

 翌日、三人は朝早くに出発した。神谷の運転する車は、南信州の山道をどんどん進んでいく。芥川がつぶやいた。
芥川「ここら辺で捜索してみようか。」
神谷「芥川先生も探知されましたか。確かに、何かいますね。」
牧田「僕にはよく分からないけど、なんだか不気味な雰囲気がするよ。」
神谷は車を路肩に停めた。三人は車を下り、周囲を捜索した。牧田が登山道の入口を発見した。
牧田「ここから登っていけそうだよ。」
芥川「牧田君、でかした!ここから登っていけば、いい感じで遭遇できそうだ。」
神谷「それじゃあ、行きましょう!」
 三人は登山道をひたすら登っていった。しばらくすると芥川が魔獣の魔力を感知した。
芥川「ビンゴだね。あそこにいるよ、多分・・・」
牧田「本当かい?ドラゴンとかフェニックスとか、恐ろしい魔獣が潜んでいるということだよね・・・」
神谷「芥川先生、どうしましょう。挟み撃ちにしましょうか?」
芥川「そうだね。僕が向こうから回り込むよ。」
芥川がそう言ってズンズン進むと、潜んでいた魔獣が現れた。
牧田「なんだ、アレは?!」
神谷「スライムですね。見た目は地味ですけど、危険なモンスターです。」

第3章 魔法博士・柊慎一郎

 芥川が神谷に言った。
芥川「さっさと片付けよう。京介君、やってみるかい?」
神谷「はい、分かりました。」
神谷は送還魔法を唱えた。
神谷「送還魔法、発動!」
スライムの足下に送還ホールが形成された。スライムは大きな円い影のような送還ホールに吸い込まれていく。やがてスライムが完全に吸い込まれてしまうと、送還ホールは消滅した。
神谷「終わりました。」
芥川「お見事だね。」
牧田「これで一件落着か。」
芥川「そうだね。あそこで見物している人物に真相を聞いてみようか。」
神谷「あれは・・・」
 少し離れた木陰から、怪しい老人が一部始終を観察していた。老人は静かにゆっくりと近くまで歩いてきた。
老人「スライムを送還してくれたんだね。ありがとう。」
牧田「あなたは誰ですか?」
神谷「あなたは魔法博士の柊慎一郎先生ではありませんか?」
牧田「魔法博士?!」
芥川「やれやれ。魔獣騒動の原因はあなただったんですか。」
柊「君は確か、名古屋の霊能探偵の芥川君だったね。騒動の尻拭いをさせてしまったようで、すまなかった。」
芥川「柊先生は魔獣を召喚したわけではないようですね。」
柊「私はそんな危険なことはしないよ。私はただ、魔界へ通じるトンネルを形成しただけだ。」
神谷「魔界へ通じるトンネル・・・」

第4章 魔獣騒動の真相

 芥川は柊に質問した。
芥川「柊先生、何の目的でそんなことをしたんですか?」
柊「悪魔と契約し、今も魔界に囚われている親友・榊原博士に会いにいくためだよ。」
牧田「榊原・・・あの魔獣博士のことですね。」
柊「魔界へ通じるトンネルを形成するのは、簡単なことではない。いくつか条件を満たさないとできない。」
芥川「そんな簡単に魔界トンネルが開通したら、大変なことになりますよ。」
神谷「それで柊先生は、榊原博士に会うことができたんですか?」
柊「何回か試みたが結局、叶わなかった。いつもトンネルがうまく形成できるとは限らないし、形成できたとしても時間が限られている。おまけに魔界は思いのほか広大だ。」
芥川「先生がトンネルを通り、魔界をうろついている間に、魔界の魔獣がこちらに迷い込んだ・・・これが真相か。」
柊「本当に申し訳ないことをした。君たちが魔獣を発見・送還していなかったら、大変なことになっていた。」
神谷「先生、榊原博士の件はどうされるんですか。」
柊「・・・・・・」
柊は寂しそうな表情で押し黙っていた。
 沈黙を破るように芥川が言った。
芥川「どうするもなにも、あきらめるしかないでしょう。今の人類の魔法学で、どうにかできる問題じゃないよ。」
牧田が芥川に続いてみんなに言った。
牧田「とりあえず街に帰ろうよ。スライムの問題は解決したんだし・・・」
神谷「そうですね。」
四人は登山道を下りていった。柊は年のせいなのか、病気のせいなのか、その足取りはおぼつかなかった。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(17)【南信州のスライム編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(17)【南信州のスライム編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-12

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  1. 第1章 南信州への旅
  2. 第2章 スライムが現れた!
  3. 第3章 魔法博士・柊慎一郎
  4. 第4章 魔獣騒動の真相