詩の形式

詩の形式でなら言えそうなのだ
詩でしか言えないことがある
詩のように書くことで吐き出している
詩なんてまったくわかってないくせに
特に詩が好きというわけでもなかった
散文の方がずっと性にあっていたはずなのに
背伸びしてフランスの詩を読んでいた若い頃
悪の華に地獄の季節にあとはなんだっけ




雑草

雑草が生い茂ってやがる
五月の初めのこの時期
まだ暑くなる前の一番過ごしやすい時期
我が物顔に独占していやがる
楽しそうだ
生きるとはどういうことなのか
土に根を張って動けなくても生きている
光を浴びて自給自足しているらしい
俺も社会では雑草みたいなものなのだ
奴らのように自己完結することはできないけれど
俺は生き物を食い散らかす雑草なのか




分岐点

天へ舞い上がりそうな快楽
表層が痛覚で満たされる
抑圧が消失したことで生じる虚無
人生が分断されてしまった
別の道が開けてしまった
裏街道が享楽に通じていた
整理が今もできていない




言葉と自然

言葉はもう言葉ではいられない
言葉が内なる変革を求めている
人間が言葉を使いすぎたのだ
言葉を道具扱いした愚を犯した
どうして人間に降り立ったのか
認識という強欲な化物が暴れている
意志に流されているだけなのか
自然は認識の横暴を許容しているというのか




怠惰

心底疲れました
もう何もしたくない
本を読んでも何も残らなかった
ほとんど内容を忘れてしまった
忘れた後は自然の景色が少しだけ美しく感じられた
きっとそのためにわけもわからず読んできたのだ
頭の中でまわるよけいな思考を浄化するためだったのだ
今はもうずっと寝ていたい
布団の中から出たくない
怠惰だけが人生だ
怠惰だけが本物であった




口から出まかせ

分裂した自我を飼いならすことができない
誰もが自我は一つだと思い込んでいる
インターネットがそういうふうに仕向けてくる
各々の自我を走らせることができない
だから小説は力を失った
人は固定された自我の中に立てこもるようになった
いつしか批評も力を失った
批評は単なる攻撃に様変わりしていった
批判する対象への愛を失ってしまった




虚無の安売り

何かをつかまえたいと思っている
思考を続けることでいつか視界が開けることを期待している
そんなことはくだらない
すべて灰に帰して終わり
それでもはじめから諦める奴になりたくない
知った顔で悟ったふりをしてなんになる
虚無へと陥る道はもはや既定路線
虚無という製品が今日も生産されている
虚無はもう百円ショップで売っている




素直に見る

素直に見るということ
周囲の草花と同化するということ
ずっと何かを考えている
頭の中が無駄に忙しい
俺は生涯目の前を見ることはないだろう
視界に写る景色というものがある
解こうとしてはいけない
問いを見出そうとするのもどうだろう
精神が疲れ切ったときに不意にやってくる
風邪が治ったときのようなあの感じ
あの感じがほしいのだがもう無理なのかもしれない




本心

今までの自虐は全部ウソ
すべて見せかけ
自己が自己を偽装するとか言ってるだけ
カッコつけてるだけ
本当は自分が好きでたまらない
本心なんて言葉はくだらないけれど
言葉をどこまでも疑う姿勢もくだらない
平面化されたのっぺらぼう
そっちの方に行けない人たちの真面目くさった人間談義
もういい加減聞き飽きた
底知れぬ卑怯さと軽薄さと向き合わずして
一体何が得られるというのだろう




はじめに他人ありき

見栄とか体裁とか虚栄とか
他人の視線がすべての原動力
どう見られているか
どう思われているか
怯えながらさらに階段を登ろうとする
他にどういう生き方があるのか知らない
自我など脆いものだ
他人の言動で自我の根幹など容易に変わる
何をやっても間が悪かった
誰といても間が悪かった
間の悪い奴はだめなのだ
人との間がわからない
人間がわかっていない

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-05-10

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