zoku勇者 マザー2編・18
フォーサイド編・4
「ナイスなクソッタレ共に最高の爆弾をお見舞いするぜい!
ンーーーー!ぶっとばしてくれい!!」
「俺も、爆弾が出る……」
「ジャミル、早くトイレに行って来なよ、じゃないと……」
「じょ、冗談だっての、早く引っ込めろよ、スリッパ!」
「もう~……」
「ウェルカムトゥザ、トンズラ・ラストライブ、イン・トポロ!
おしっこがちびっちゃうようなノリノリのステージを!そこの
入り口近くにいる、チビスケ達の為に……」
途端にぱっと舞台に照明が付いて明るくなり、トンズラ
ブラザーズが姿を現した。他の観客は一斉にジャミル達の
方を見る……。
「や、やだ、恥ずかしいわ……」
「!?ねえ、ジャミル!トンズラブラザーズって
確か……、5人の筈じゃ……、どうしてもう一人
増えてるんだい、まさか、……幽霊?」
「アル、それについては後でな、突っ込んだら呪われるぞ……」
「ひ、ひえええ!?」
「……ジャミル、嘘言わないのっ!」
「T・O・N・Z・R・Aーーー!」
「イエエエーーー!!」
「す、凄い、……ね……、耳が割れそうだよ……」
あまりこういうのに慣れていない所為か、周りの
大歓声にアルベルトが耳を塞いだ……。
「その内に慣れるよ、こういう経験も大事だぞ、アル!」
「うん、そうかもね……」
「きゃああーーっ!トンズラさああーんっ!!」
アイシャも客席から身を乗り出してぴょんぴょん跳ねる。
やがて、演奏が始まり暫く過ぎた頃、急に演奏が止まり、
舞台が再び真っ暗になった。
「何だ?まさかこれでもう終わりとかじゃねえよな?」
「やーっ!」
「……」
再び舞台が明るくなる。明るくなった舞台にいたのは……、
ジャミルが突進して胸にぶつかった、金髪ブロンドの
お姉さんであった。
「!!!はうわーー!!」
胸に挟まれたのを思い出したのか、ジャミルが発狂する……。
アイシャがジャミルの方をむすっとした表情で見る。
当然面白くないらしい。
(私だってえ~、将来はジャミルを窒息させるぐらい
ボインになるんだから、見てらっしゃいっての、
きいいいい~~っ!)
「本日のスペシャルゲスト、夢のスペシャルコラボ
ステーーェジ!!あの、超大人気歌手、ビーーナス
ちゃんがっ!!な、なんと……、トンズラブラザーズとっ!!」
「ビーナスです……、本日はお招き有難う、とても光栄だわ……」
打楽器担当メンバーの演奏に合わせ、ビーナスが
ボーカルのナイス、ラッキーと声を合わせ歌いだす。
さっきまで騒がしかった会場が一斉にビーナスの
美しく優しい歌声に包まれる。
「……綺麗な歌声ねえ~……」
「本当だね……」
さっきまでブスくれていたアイシャも……、アルベルトと
一緒にビーナスの美声にすっかり聞き惚れて夢中である。
「……何とかナス、……ビーナス、そうか、あの人が……、
ツーソンのおばさんの、娘さんだったのか……」
「はっ!そ、そうだわ!そうよ、伝えなきゃ、おばさんが
心配してたって!」
アイシャも漸く思い出した様子。
そして、何故かステージに乱入して来た?トラベリングバスに
ビーナス搭乗し、一緒に乗ったナイス、ラッキーと共に退場する。
そして、大盛況のうちに、フォーサイドでのトンズラブラ
ザーズの舞台は幕を閉じた。
「おっさん達、ステージお疲れっ!」
「おお、ジャミ公と変な愉快な仲間達!ありがとな、無事
ステージ終わったで!」
「お疲れ様でしたー!」
「……うーん、変な愉快な仲間達……、ですかあ~……」
ジャミル達が楽屋で燥いでいると、楽屋にビーナスが
姿を現した。
「先程はどうも、皆さん、お疲れ様でした……」
「おお!ビーナスちゃんや!わしに会いに来てくれたんか!?」
「お前じゃないわ!アホ!引っ込んどれ、このチビデブ!」
「何を言うか!このダッチョ髭め!」
「おどれ達でもないわ、おどりゃ!わしじゃけんのう!」
「♪ちがうよ~、ビーナスちゃんはあ~、お・れ!に、
会いに来てくれたのさあ~!」
「目立たないおれだけだど、断言するよ!このおれだよ!」
トンズラが揉めだし、ジャミル達が呆れて見ていると、
……ビーナスがトリオの処へ……。
「あ……」
「昼間の元気なボウヤ……、楽屋に平気で出入り出来るほど、
皆さんと仲が宜しいのね……、びっくりしたわ……」
「え?あ、へ、いや……、色々あって、へへ……」
「皆のお名前、教えてくれる?」
「あっ、俺、ジャミル!」
「アイシャです!」
「ぼ、僕は……、アルベルトですっ!」
(赤いリボンの女の子……、やっぱり……、ツーソンの……)
「あ、あの、私が何か……?」
「「いえ、何でもないわ…」
ビーナスは此処でもアイシャの顔をちらちら見ていたが、
すぐに目を反らした。しかし……。
「あのっ!お姉さんは……、ツーソンの出身ですよね?私達、
ビーナスさんのお母様に……」
アイシャの言葉に……、揉めていたトンズラブラザーズが
一斉にピタッと動きを止めた。
「人違いじゃないかしら……?」
「ええっ!?そんな筈ないわっ!」
「お、おいっ、アイシャっ!」
「な、何よっ、ジャミルっ!?」
ジャミルが慌ててアイシャを止めようとする……。
ビーナスの表情が浮かない顔つきになってきたからである。
「それでは、私、この後も自分の仕事が控えていますので……、
本日はどうも……、お世話になりましたわ……」
「ビーナスさんっ!?」
ビーナスはトンズラのメンバーに頭を下げると
楽屋を出て行った。
「あああ、行ってもうた~、わしのビーナスちゃ~ん……」
「こりんのう、おどれもっ!」
ラッキーが名残惜しそうに楽屋入口の方を見つめている。
それに歯止めを掛けようとするナイス。
「……私、ビーナスさんとお話してくるわっ!」
「おいっ!待てっての、アイシャっ!!」
後を追って楽屋を飛び出して行ってしまったアイシャを
止めようと慌ててジャミルとアルベルトが追い掛ける……。
「……」
「待ってくださいっ!ビーナスさんっ、……お姉さん!
どうして逃げるんですかっ!?」
後を追って来たアイシャを見て、ビーナスが迷惑そうに
アイシャを振り返る。
「お姉さんのお母様、とっても心配してらしたんですよ!
お母様が……、娘に有ったら宜しく伝えてって……、だから
私達……」
「やめて頂戴、……もうあの町にいた頃は振り返りたく
ないの……、只の何のとりえも無かった田舎娘だった頃に
戻りたくないの、お願い……、生まれ変わったままの
ビーナスの私でいさせて……、過去の私は死んだの……」
「だからって、でもっ!」
「よせよ、アイシャっ!」
追い付いたジャミルが強くアイシャの肩を掴んだ。
「今はあまり何も聞かない方がいいよ……、人には
色々事情があるんだよ……」
「ジャミル……、アルまでっ!あっ!?」
再びアイシャが正面を向くと、もうビーナスの姿は
其処にはなかった。
「どうして……?」
さてさて、暴走を二人に止められた姫様は……、若干
お怒りモードであった。
「ジャミルもアルもっ!何で止めるのっ!バカっ!」
「……おめえなあ~、人にはやられたくねえお節介だって
あんだよ!たく、少しは学習しろっての!何回それが引き金に
なって危ねえ目に遭ったと思ってんだっ!」
※前作のドラクエ編含み……
時たまお節介になるのはやっぱりジャミルも同じなのだが。
「だって……、ビーナスさん……、自分の生まれた町も……、
ご両親の事も全部比定して目を反らそうとしてるのよ、
どうしてよ……」
「アイシャ、ビーナスさんはもう少しそっとしておいた方が
いいんじゃないかな?本心から自分の生まれ育った故郷の事も、
……ご両親の事も、嫌いな筈がないよ……」
「……分ったわ……」
アルベルトに諭されて、漸くアイシャも落ち着いた様子。
アルベルトもほっと胸を撫で下ろした。
「おーい!ジャミ公と愉快なお友達ー!どないしたー!!」
心配したトンズラ達がジャミル達の様子を見に来た様であった。
「だ、大丈夫だよ、落ち着いたよ……」
「そうか、……で、お前らこれからどないするんや?」
「わしら、此処での仕事も終わったさかい、次ん処へ
向かおう思うとるんやが……、途中まででよければ又、
バスに一緒に乗ってくかー?」
「ん~、そうしたいんだけどな、俺ら、もう暫く
フォーサイドにいるよ……」
「な、何でまた?まだ、何か用があるんかいな、幾ら
都会とはいえ、そろそろ飽きたんと違うか?」
「モノチッチ・モノトリーの動向を探ってんだ……」
「そうかそうか、モノトリー……」
「モノチッチ……」
「……」
ラッキーとナイスが顔を見合わせ……。
「どふぇえええええっ!?」
そして、話を聞き仰天したメンバーが両手を上に掲げて
ぶったまげポーズを取った。
「……ほんまかいな、マジかいな!?」
「カカカカカ!や、やめとけええ!モノトリーだけはアカン!
手ェ出したらアカン!危険すぎや!何考えとんねん、お前ら!!
わてら、この街で奴の色々と良くない噂沢山聞いてんのやぞ!!」
「危険も何も……、ケンカ売ってきたんは向こうだし……、
俺ら常に狙われてんのさ……」
ジャミルはささっと、此処までの経緯と事情をトンズラ達に
説明するのだった。
「そうだったんかいな……、けどなあ~……」
「大丈夫だよ、ラッキーのおっさん、俺達危険なお子様だかんな、
何が起きたって大丈夫だよ!」
「……しかしのうう~、今回ばかりはホンマにお前らヤバイかも
しれんぞ、なあ、悪い事は言わん、奴に見つからん様にわしらが
ちゃんと逃がしてやるさかい……」
「ううん、ちゃんと私達で解決しないと……、もしも
モノトリーに見つかったらトンズラさん達にご迷惑
掛けてしまうもの……」
「アイシャ嬢ちゃん……」
ナイスも心配するが……、アイシャはいつもの調子で
明るく答える。
「んじゃ、俺らはこれで、さ、ホテルに戻ろうや、
休憩期間は終わりだ、又色々聞き込みとか、対策
考えねーとな、……おっさん達も元気でな!」
「えへ、又何処かで会えたら宜しくね!今まで
本当に有難う!」
「失礼します、皆さんもどうかお身体にお気を付けて、
お元気で……」
「お前ら……」
トリオはそれぞれ、トンズラ達メンバーに挨拶を交わし、
トポロ劇場を去って行く……。
「おい、アカン、このままじゃアカンでえ……」
「人のセリフ取るな、そや、あの子らには散々世話に
なったんや、今度はわしらがあいつらを守る番や……、
カッカッカ!!」
「そうじゃ、あまりにも危険じゃ……、わしらにも
出来る事をせんとのう!」
「♪縁のしたのおお~、力持ちいい~!本領発揮ーー!!」
「モノトリーの処へ行くには……、おれ達の力が必要になるかも
知れない、そんな気がする……」
外に出ると……、何やらサンドイッチマンがビラをばら撒いていた……。
ジャミルは飛んできたビラを拾って一枚見てみる。
「えーと……」
「さあさあ、モノトリーデパート新装開店だよーーっ!
老若男女、お子様問わず、生まれ変わったモノトリー
デパートに是非来てねーーっ!!掘り出し物、バーゲン
セールも実施予定だよーーっ!!……だとさ」
ピエロ姿のサンドイッチマンはビラを配りながら何処かへ
姿を消した……。
「成程、明日からか……」
「折角だから、行ってみない?私、色々お買いものしたい!」
「でもなあ……、モノトリーの経営してるデパートだぞ、
それに今まで閉店してたのが急に開店って、どうも
きな臭い臭いが……アウアウ!」
「そんなの平気よーっ!だって直にモノトリーが出てくる
訳じゃないんだからっ!」
「分ったから首絞めんなっての……」
「じゃあ行こうねーっ!あ、私、喉乾いちゃった、ちょっと
其処の自販機でジュース買って来る!」
アイシャは近くの自動販売機まで小走りで走って行った。
……その隙を見て、アルベルトがジャミルを引っ張る。
「ジャミル、今回は異様に慎重だね、珍しいね、君がこんなに……」
「バカにしてんだろ、オメー……、まあ、トンズラの
言った通り、今回は本当にやばいからな、油断しねえ
ようにしねえとな……」
「ああ、いつ何処からモノトリーの手下が僕らを
見張ってるか分からないからね……」
「だな、この数日間も……、行動を常に見張られてたかもな……」
やがてアイシャがジュースを3缶抱えて戻って来た。
「はい、どうぞ、これ二人の分よ!」
「おお、気が利くな!サンキュ!」
「有難う!」
「其処のベンチで座って飲んで行きましょ!」
トリオはジュースを飲んで喉を潤すと、ホテルへと
戻って行った。……その様子をずっと眺めていた者がいた。
「グゲ、グゲゲゲゲ……」
「ゲゲゲゲ……」
先程のビラを配っていたサンドイッチマン達である……。
そして、次の日……、トリオは再びデパートの前に訪れていた。
最初に来た時は閉店していたデパート、そして、今又、
新装開店したと言うデパート。モノチッチ・モノトリーが
経営者のデパートに……。
「何でこんなに緊張すんのかなあ……」
「やだ、ジャミルったら!デパートぐらいで、どうしたのっ!」
「俺もそう思うんだけどなあ、なんでなんだろう……」
ジャミルはそう言いながらアルベルトに目配せする。
アルベルトも分った様でジャミルの顔を見て頷く。
昨夜ホテルで……、アイシャが寝付いた頃、二人は部屋で
一晩中相談をしていたのであった。カーペインターの事例も
有り、モノトリーは絶対に非力なアイシャを最初に狙って
くる可能性は十分高い。片時も目を離さず、アイシャを守ろう、
そう決めたのであった。
「さー!お買いものーっ!」
「ちょちょちょちょ!待てコラ、お前は一番後ろにいろっての!
しっかり俺らの後、離れずくっ付いて来いよ!」
「えー、何でえ?」
「何でもっ!迷子になったら困るんだっての!」
「まあ!私、そんな子供じゃないわっ!何処にも行かないったら!」
「アイシャ、今は僕らの言う事聞いて、お願いだから……」
「分ったわよう……」
喧嘩が又始まりそうであったが、アルベルトが止め、
アイシャはしぶしぶ二人の後ろに回った。若干不満
そうではあったが。
(たく、人の気も知らねえで……)
……自分達が、決してアイシャの側を離れずにいれば
絶対に安全だと。そう思っていた。必ず守り切れる事が
出来ると。そう思っていた。
「うーん、何となく不安定な雰囲気だなあ……」
「ホント、モノトリービルの中みたい……」
「経営者が同じだしね……」
デパートの中、1階ロビーは何となく灯りが付いて
いても薄暗い感じであった。それでも何人か、客らしい
客?はいたのだが。1階の主なメインはトポロ劇場の
場外チケ販売と商品売却カウンター。
「ようこそ、トポロ劇場のチケットをお求めですか?」
「いや……」
「……チケットには用ないんですね」
「返却物があるんじゃないですよね?……ああ、良かった、
これからも等デパートをお引きたて下さいませね、うっふん」
返却カウンターのオバンはジャミルに投げキスを飛ばしてくる……。
「何かこのデパート、停電するみたいな感じだね、ひっひい……、
この俺の側に居る、ねずみ君がそう言ってんの、ひっひ!」
「ちゅう~」
ロビーのソファでニュースペーパーを読んで寛いでいた男性が
ジャミル達の方を見てにやにや笑った。
「あの……」
「アイシャ、構うなよ、2階へ行くぞ……」
アイシャを不安にさせない様、男性から遠ざけると、トリオは
さっさとエスカレーターに乗り次の階へ。2階へ上がると
フードコートで、ハンバーガーショップとベーカリーが。
「どうする?何か食っていくか?」
「食べましょっ!」
「うん……」
ジャミルとアイシャはハンバーガーショップで、アルベルトは
ベーカリーで、それぞれ軽食を買いベンチに腰掛けて食べる。
「今の処、大丈夫みたいだけどね……」
「このまま何も起きねえといいんだけどなあ……」
「だから何なのよ、二人とも……、何もないわよ、もう、
心配性ねえ!」
「はあ……」
片時もアイシャから目を放せない状況の為、ジャミルと
アルベルトは心配しているのだが……、肝心の本人は呑気で
こうである。
「あー、美味しかった!さ、次の階行きましょ!」
「……ごっつあんです……」
ややヤケクソ気味にジャミルが返事を返した……。そして、
トリオは3階へ。3階フロアはドラッグストアと雑貨屋で
あった。雑貨屋の方で、アイシャ用の武器のシェフの
フライパン、防具の金の腕輪を3人分購入。……此処まで
来て特に今の処、何も起こらないのでジャミルも段々
気持ちが落ち着き、砕けて来ていつもの悪調子が戻って来た。
「よしよし、さっさと買いモンして出ようや!」
「ゆ、ゆっくり見させてよね!せっかちなんだから、
ジャミルは!」
「オメーも人の事言えねえのっ!」
「何よっ!」
「この部屋から……」
「おい、アル……、そっちは倉庫じゃね?おい、何処
行くんだっ!」
二人が揉めている際に、急にアルベルトがふらふらと
倉庫の方へ歩きだし、ジャミルとアイシャは慌てて
後を追った。
「さ、騒ぐなっ!……ああ、アンタか、俺は今回は
此処で隠れて密売している、欲しい物があれば
取引するぞ……」
倉庫に隠れていたのは、ドコドコ砂漠にいた密売屋であった。
「それじゃ、僕用の武器のハイパービームと、ペンシル
ロケットを数本……、買って貰って大丈夫かな、ジャミル」
「あ、ああ、構わねえけど……」
「毎度、今後ともひいきに……、又何処かで会ったら宜しく……」
一体、この密売屋とアルベルトがどういう過程で、
知り合いになったのか特にジャミルは突っ込み
たくもなかったが、アルベルトの戦力が少しでも
上がるならまあいいかと思ってみる。
「さて、次は4階か……」
4階はスポーツ用品売り場&おもちゃ売り場であった。
「夏だ!若者だ!スポーツをしよう!」
スポーツ用品店の店員がジャミルにどかどかとバットを
勧めて出してくるが、今のジャミルには今一使い処が
物足りないバットばかりだった。
「ジャミル、こっちのヨーヨー……、の方がいいんじゃないかな?」
アルベルトがおもちゃ売り場でヨーヨーを見つけてきた。
攻撃力はスポーツ用品売り場のバットよりは結構高い様で
あった。
「今の処、攻撃力が大幅に上がるのはこれしかねえか……」
雑貨屋の方で、ジャミル用のすっごいヨーヨーを購入。
「アイシャ、何してんだ?」
「うわあー!可愛い!」
アイシャは早速可愛いクマさんのぬいぐるみに夢中。
「……良かった、また、愛に生きるアニキ君じゃなくてよ……」
「!?」
リリパットステップでのやり取りを知らない為、アルベルトが
首を傾げた。
「可愛い~、うふふ!誕生石付のクマさんのぬいぐるみも
あるのね!」
「それ、欲しいなら買ってやろうか?」
ぬいぐるみを見ているアイシャにジャミルが声を掛けた。
「え?い、いいわよ、もっと他の事にお金は使った方が……」
「いや、前に言ったろ?可愛いの買ってやるって……」
「ほ、本当にいいわよ、でも、もしも必要な物を全部買って
余裕があったら、お願いするね!」
「け、けどさ……」
ジャミルがアイシャにぬいぐるみを買ってやりたく
なったのは……、もう一つ理由があった。先程から
アイシャの姿を見ていると……、まるで自分の
目の前から急に彼女が消えてしまう様な……そんな
嫌な感覚に陥るのである。アイシャを見ていると、
何故か気持ちが不安定になり、今にも消えてしまいそうな
彼女を笑顔にさせてやりたくてどうしてもたまらなかった。
「ジャミル、どうかしたの……?」
アルベルトがジャミルに声を掛け、ジャミルがはっとする。
「い、いや、何でもねえよ……」
(何なんだよ、さっきから胸ん中で感じてる、この変な……
どうしようもねえ違和感……)
「ねえねえ、ジャミルっ!買ってくれるのなら私、
こっちがいいな!今度はね、ラブに生きるアニキさんの
ぬいぐるみ!新商品みたいなの!」
「……前言撤回っ!それは駄目っ!早く元の処に戻して来いっ!!
たくっ!!」
「けちっ!!ジャミルのバカっ!!」
と、途端に胸から変な違和感が消えてジャミルは
ほっとする……。
「消えちまうなんて、んなワケねえよな、カーペインターの
時とは違う、アイシャには俺達が付いてるんだ、絶対に
大丈夫だ!」
「ジャミル、君こそ、本当に大丈夫かい?」
「……ア、アル、何でもねえったら、それより買うモン
買ったら下に降りるべ、用が済めば、こんな陰気くせー
デパート、いつまでもいたくねーっての!」
「……」
それぞれの武器、防具を購入出来たのでデパートを
出る事にし、トリオはエスカレーターを下り始めた。
再び、1階が近くなってくる……、と、フロアに男の子の
泣き声が響き渡っている……。
「どうしたのかしら、泣いてるわ、あの男の子…」
途端にジャミルの胸の中に、再度、嫌な感覚がぶり返し
始める……。
(ま、まただ……、くそっ、アイシャが……、アイシャが
いなくなっちまう……)
……再びジャミルの胸に違和感が戻り始めたその瞬間……、
階段を降りる様にエスカレーターをアイシャが駆け下り、
ロビーで泣いている男の子の処まで走る。前に乗っていた
自分達を追い抜いて……。先にエスカレーターを降りて
アイシャが自分達から離れた……。ほんの僅かな……数分の
時間帯だったのに……、それなのに……。
「……ママ、ママあ~……」
「どうしたの?お母さんと逸れちゃったのかな?大丈夫だよ、
泣かないで……、ね?お姉ちゃんが一緒に探してあげる!」
「ひっく、ぐすっ、うええ……」
「駄目だっ、アイシャっ……!も、戻って来いっ!早くっ!!」
「……ジャミル?ど、どうしたの、本当に……」
アルベルトがジャミルを心配し声を掛け、ジャミルも
エスカレーターを駆け下り地面に足を付けたその途端……、
急に視界が真っ暗になった……。
「何だっ!?停電かっ!?」
「嫌だっ!こわああーーいっ!!」
……脅える他の客の声に交じってジャミル達の耳に
聞こえて来た声は……
「!?……っ!ーーーっ!!」
くぐもってはっきりと聞こえ取れない、アイシャの声であった……。
「アイシャっ!何処だっ!何処にいるんだっ、返事しろーーっ!!」
「ジャミル、一体何が起きているんだろう、ア、アイシャはっ!?」
「分らねえ、くそっ、こいつでっ……!」
取りあえず、常備していた懐中電灯で周りを照らす……。
……アイシャの姿は其処にはなく……、カウンターフロアの
店員と、他の客……、それに、先程アイシャが声を掛けた
迷子の男の子だけであった……。
……たすけ……て、ジャミル、アル……
「アイシャかっ!?い、今何処だっ!?何処にいるんだっ!?」
「……アイシャっ!!」
テレパシーを通じ、二人の心にアイシャが呼び掛けるが……、
その声もいつもと違い、弱弱しく、はっきりと聞き取れない……。
身体中……、抑え付けられてる……の、苦しい……、
声も出せないの……真っ暗で……、今、自分が……、
何処にいるの、か、も……、わ……から……
それきり……、アイシャのテレパシーの声もぷつりと途絶え、
聞こえなくなってしまった……。
「グゲッ、グゲゲゲ……、お呼び出しを申し上げます、
オネットからお越しのアホのジャミル様……」
「な、何だっ!?」
突如、館内アナウンスが流れ始め、デパート中に異様な
声が響き渡った……。
「お友達のアイシャ様が……、4階事務所でお待ちです、
すぐにお越し下さい、ゲゲッ、ゲゲゲゲゲ……」
「ジャミル、アイシャは4階に連れて行かれたんだ、
……すぐに戻ろう!!」
「くそっ、待ってろっ!絶対に助ける……、アイシャ!!」
必ず守り切れると……、そう思っていた。ジャミルの心に
どうしようもないやるせなさと悲壮感があふれてくる……。
……こうして、二人は再び引き離されてしまう……。
zoku勇者 マザー2編・18