zoku勇者 マザー2編・17
フォーサイド編・3
「おお、お前らまさか本当に……、ヌシをやったんか?」
「倒したからちゃんとこうやって出て来たんだろうが!」
「大変だったんだから……」
「疲れました……」
真っ黒な顔をして穴から出てきたジャミル達を見て、
ショージが目を丸くした。ヌシ退治を頼んだものの、
半分は多分無理だと思っていたらしい。
「俺たちゃ頼まれた以上やるっつったらやるんだよ!
まいったか!」
「そ、そうさな、……お前らはすげえよ、雅に選ばれた
お子様だな!よし、今日は又本部に泊まってげえ!チュージ、
すぐ風呂沸かしてやれ!」
「へーい!」
「げえ?何語だ……」
○ンマーの方言である。
「何でもいいわよ、お言葉に甘えさせて貰って、
本部で休みましょう……」
疲れ切ったアイシャが口を開いた。とても眠そうであった。
「そ、そうだな、行くか!」
トリオは再び埋蔵金本部へ……。お風呂を借りて
綺麗さっぱりした後、チュージが用意してくれた
食事を頂く。食事を出した後、チュージは又外へ
仕事に出掛けて行った。ショージの方もまだ戻らず、
発掘作業を続けているらしい。
「もう真っ暗なのにな……」
「また穴掘りが再開出来て、嬉しいのかも知れないわ……」
「無理しないといいんだけどね、お歳なんだし……」
更に時間が過ぎて、時刻は夜の23時を回ったが、
モッチー兄弟はまだ戻る気配がなかった。埋蔵金
発掘までまだ時間は掛りそうで、トンズラブラザーズを
救えるのも後になりそうであった。なので、一旦、
フォーサイドまで戻る事にした。
「……お先に休ませてもらいましょ、私、本当に眠いわ……、
ふぁ……」
アイシャが大きな欠伸をした。……アルベルトもうつったのか
釣られて欠伸をする。
「明日さ、フォーサイドに戻る前に……、もう一度、
砂漠探索行かね?」
「……ええええっ!?ジャミルっ、何考えてるんだよっ!
お蔭で目が覚めちゃったじゃないか!」
「私もだわ……」
「その、砂漠のコンタクトレンズがだな……」
ジャミルは二人の表情を覗いながら、しどろもどろに
答えた……。
「だってよ、落とし主、困ってんじゃん?……大切な
物なんだろ?」
「そうねっ!私も賛成よっ、偉いわジャミル!そうゆう事で、
アルもいいでしょ!?」
お節介アイシャは直ぐに人助けに反応する……。こうなった以上、
アルベルトもどうにもならず。……ジャミルはこっそりほくそ笑む。
「ん?君、今笑わなかったかい……?もしかして、お礼に
期待してるんじゃないの……?ん?ん?ん~?」
眼鏡を光らせてアルベルトがジャミルに顔を近づける……。
「そうなの……?」
「ちげーよっ!ほ、ホントに礼なんかどうでもいいのさ!
うん、あはは、あははは!」
「……」
笑って誤魔化そうとするジャミルを……アルベルトは鋭い目で
見つめるのであった。
「はあ、仕方ないなあ、又濡れタオル、買い込んでおかなくちゃね……」
「よっしゃよっしゃ!んじゃそゆ事で!おやすみー!」
「……何か又眠くなってきたわ……、それじゃ、アル、
私も寝るね……」
ジャミルとアイシャは個室に引っ込んで行った。
「やっぱり、何か引っかかるなあ~???」
翌朝、トリオは再び砂漠へと出かけて行く。モッチー兄弟は
相変わらず埋蔵金掘りにますます勢を出している。
「濡れタオルも大量だし、俺のヒーリングもあるからな!
いつでも安心して倒れていいぞ、お前ら!」
「バカ言ってるなよ、たく……」
「昨日いたヒーラーさんみたいな事言わないでよ……」
「ははははっ!」
アルベルトは、一刻も早くコンタクトレンズが見つかる事を
祈るのであった……。
「はあ、やっぱり暑いわね……、覚悟はしてたんだけど……」
「アイシャ、大丈夫かい?」
「大丈夫よ……」
「♪ふんふんふ~ん」
「……」
日射病に免疫が出来てしまったのか、どういう訳か、この人だけ
異様に元気である。
「やっぱり、バカだ……」
「アル、何か言ったかよっ!?」
「別に……」
「何だか、砂漠から道外れたみたいよ?……道路沿いまで
歩いて来ちゃったみたい……」
「ん?ホントだ、戻るか……」
「ふう……」
「其処行くおにいさん達!」
「ん?」
声に振り向くと、路上にメキシコ帽子を被った変な
おっさんが並んでいた。
「兄のパンチョでーす!」
「弟のピンチョでーす!」
「何だ?大道芸人かい?こんな糞暑い処で……」
「ぼくはスロットマシンさ」
「あら?こっちの機械さん、お喋りするわ!」
「本当だ……」
喋る機械と言う事で、アルベルトも興味深そうに
スロットマシンに近寄る。
「ぼくは壊れていて動かないけれど、ぼくの後ろにいる、
ピンチョ、パンチョ、そして友達の大塩平八郎が君達を
陽気で愉快な気分にさせてくれる筈だよ!」
「お、大塩平八郎……?」
一人だけすっとんきょうな名前の奴に、ジャミルが目を丸くする……。
「あの、二人しか……、姿が見当たらないんだけれど……」
アルベルトが機械に訪ねると、ピンチョが返答を返した。
「彼は今、乱を起こして行方不明さ」
「砂漠の何処かにいる筈だよ、だから今はぼくら、
スロットブラザーズも稼働お休み中!」
「はああ!?」
パンチョも返答を返す。ジャミル達は揃って声を
ハモらせた……。
「乱を起こしたって……、あの、言ってる意味
わかんねーんだけど……」
「仲間割れ、ケンカではないかな……」
「あ、そう……、成程……」
「喧嘩は良くないわよ!理由は分らないけれど……」
「しょっちゅう俺に突っかかるお前が言うなっての!」
「何よ、ジャミル……、何か言った?」
「いや、別に……」
今一良く状況を理解出来ず、取りあえずジャミルが頷くと、
スロットマシンが又、トリオに話し掛けた。
「お兄さんたち、お願いがあるんだよ、もしも砂漠を
歩く事があったら……、デンジャラスだけど、大塩平八郎を
見つけてやってくれないか?このままだと、スロット
ブラザーズは動けない、砂漠で疲れた旅人を陽気な気分に
させてあげる事が出来ないんだよ、お願いだ……」
「ま、まあ……、見つけられたらな……」
「はあ~……」
……又厄介な仕事が増えたと、アルベルトは頭を抱える……。
毎度の事であるが、騒動解決屋は本当にご苦労様なのだ。
しかも、大半がノーマネーなので……。
「ま、まあ、人ならコンタクトレンズよりかは、
見つけられる確率高いと思うで……、行くか……」
「頼んだよ、アミーゴ!」
「……」
スロットマシンに見送られ、ジャミル達は再び砂漠へ……。
「はあ、……それにしても、もっと場所を考えて失踪して
欲しいよね、冗談じゃないよ、何で砂漠のど真ん中に
なんか突っ込んで行くんだよ、もっと人の迷惑も考えろっての!
駆り出されるのは毎度の事、結局僕らなんだからさあー!
……ブツブツブツ!」
「ジャミル、……アルが切れて来てるわ……」
「暑さでプッツン来ちまったか……」
「……きゅう~……」
「きゃあ!……アルっ!!」
アルベルト、散々愚痴を言った後、日射病で倒れる……。
ジャミルは慌てて濡れタオルをアルベルトの額に当てた。
「どうだい?ちったあ、頭冷えたかい?」
「ああ、……でも、早くコンタクトレンズも……、行方不明の
困ったおじさんも早く見つけてしまいたい物だよ……」
「こんにちは、ジャミルさん達……」
「何だ?んん……?」
何処からか、小さな小さな声がした。
「私達よ、黒ゴマと白ゴマよ」
「ん~……、お、おおおっ!?お前らかっ!!」
「久しぶりねっ、あはっ!」
目を凝らして地面を良く見ると、確かにいたのは、小さな
黒ゴマと白ゴマであった。
「お久しぶりです、まだ砂漠にいらしゃったんですか?
アイシャさんもお元気そうで何よりです」
「ええ、私は元気よ!」
「其処の眼鏡のお兄さんは……、あまり体調良くないみたいね、
早く砂漠を出た方がいいと思うのだけれど……」
「色々とね、事情があって、僕だっていつまでもこんな処には……」
「まあ、フクザツなのね……」
「ははは……」
白ゴマの言葉にアルベルトが苦笑いするのだった。
「お前らこそ、どうしたんだ?砂漠を出るんじゃ
なかったのかい?」
「おれ達、もう少し、此処でデンジャラスな経験をして
おこうと思いまして、思い出づくりですよ……、ジャミルさん
達こそ、どうしてまだ砂漠に?」
「……デンジャラスねえ……、ちょっとした事情があってよ、
一旦此処に足を運んだのさ、ま、今砂漠を歩いてるのは、
ついでで探しモンがあってよ、コンタクトレンズだ……」
「コンタクトレンズですか……、それでしたら、北の方に
光る物がありましたが……」
「ま、マジかっ!?」
「ええ、良かったらご案内しますが……」
トリオは黒ゴマたちに誘導され、光る物が有るという、
北の方角へ……。結果、見事にコンタクトレンズを
見つける事が出来たのであった。
「助かったあ~、マジでありがとな、黒ゴマ、白ゴマ!」
「いえいえ、こんな小さなおれ達ですが、お役に立てて
何よりです」
「後はフォーサイドに戻ったら、落とし主にお届けして
あげればいいのよね!」
「物好きねえ~、あなた達も、ふふふ……、まあ、小さな
私達もだけどね……」
「とにかくこれでコンタクトレンズ回収作業からは
解放された訳だね、でも……」
アルベルトが溜息をついた。まだ仕事が終わった訳ではない。
「あら?眼鏡のお兄さん、何だかご不満そうね、又体調
悪いのかしら?」
白ゴマが訪ねると、……ジャミルが困った様な顔をした。
「実はな、……後一人、砂漠に出て行った、行方不明の
おっさんを探してんだよ、あんたら、見なかったかい……?」
「いえ……」
「おっさんは知らないわ……」
……コンタクトレンズは見つけられても、変なおっさんは
黒ゴマ、白ゴマも見掛けていないらしい……。大塩平八郎の
方が実はコンタクトレンズよりも厄介な部類なのかも
知れなかった。
「今日はもう無理だよ、一応スロットマシンの処へ
報告に行こう……」
「だな……」
「な、何だか大変そうですけど……、頑張って下さいね……」
「小さな私達だけど、これからも陰ながら応援してるわよ……」
ジャミル達は黒ゴマ、白ゴマに礼を言うと、再びスロット
ブラザーズ達がいる路上へと戻った。
「兄のパンチョでーす!」
「弟のピンチョでーす!」
「友達の大塩平八郎です!」
「おい……」
「な、何で……」
「……」
トリオの目が点になる……。散々探し回ったのに、
大塩平八郎がちゃっかりとその場にいたからである。
「どういう事……、なの……?」
アルベルトがスロットマシンに訪ねると、彼は困った様に
返事を返した。
「気が変ったんだそうです、……もう乱を起こすのは止めて
勝手に戻って来たそうです……」
「あはは、……そう、あはははは!……ふうう~……、うふふふふ!」
気疲れと疲れと……、日射病でアルベルトがその場に
倒れるのであった……。
「きゃーっ!?ジャミルっ、大変よっ、又アルがっ!
……ジャミル……?」
「アミーゴ!スロットマシンに一ドル入れてみてね!」
「……何がだっ!この野郎ーーっ!!」
ジャミルがスロットブラザーズにケリを噛ます。特に強く
大塩平八郎に……。すると、パンチョとピンチョ兄弟が
勢いよく、くるくる回り出した……。
「あっ、お金、入れてないけど……」
「い、いいですよ、お嬢さん……」
スロットマシンが焦って脅えだした……。
「一大事でござるぜアミーゴ!凄い大当たりでござるぜ、
セニョール・セニョリータ!果報者のアミーゴにビッグな
貢物でござる、はい、オレンジジュース!」
「いらねえからーーっ!てめえらは反省しろーーっ!
……特にそこの大塩平八郎ーーっ!!」
広大な砂漠にジャミルの大声が響き渡る。その大声は
埋蔵金発掘現場にいるモッチー兄弟の耳にまで届く程であった……。
再び、バスに乗ってフォーサイドへ。処が……、跳ね橋の
途中に差し掛かった処で、他の乗客が騒ぎ出した……。
「な、何なのかしら……」
「プ、ショベルカーに乗ってるよ、何処から来たんだ!?」
「ジャミル、ジャミルっ!」
「……う」
すっかりいい気持ちで居眠りをこいていたジャミル、
アイシャに叩き起こされる……。
「んだよ、人が折角……」
「それ処じゃないよ、窓の外見てっ!!」
「だから何……、いっ!?」
アルベルトにも言われ、しぶしぶ窓の外を見た
ジャミルは慌てる……。ショベルカーに乗った
チュージが追い掛けて来たからである。しっかり
トリオに手を振っている。
「す、すんませーん、降りまーす!」
緊急で仕方ないので、やむを得ず、トリオはバスから
降ろして貰った。橋のど真ん中で……。
「やっと追いついて良かったス!実は埋蔵金はまだ掘れて
ないんですが、こんな物が掘れましてね、アニキからこれを
取りあえず、ジャミルさん達に届けてやれや!……と……」
「ん……、こ、これは……」
「ダイヤモンドだわ!!」
「!!」
「すいませんねえー、埋蔵金発掘までは、まだ相当時間が
掛かりそうで……、一体いつになる事やら……、後、数年は
掛かりそうな……」
「ジャミル、これは凄く高そうなダイヤだよ、これがあれば、
トンズラさん達を……」
「助けられるかもだわ!」
「が、ががががが!い、いいよ、……これで充分だって!
けど、マジでこんな物受け取っちまっていいのかい……?」
「ええ、おれらの目的は埋蔵金掘りですから、では確かに
お渡ししました!発掘現場作業も立て込んでますんで、
これで本部に戻りまーす!」
「……」
チュージはショベルカーに乗って、ガコガコ凄まじい音を
立てながらドコドコ砂漠方面へと引き返していった。
「俺らも急いでトポロ劇場に戻ろうや!」
トリオはダッシュで跳ね橋を走り出し、フォーサイドへと
向かうのであった、。
……再び、トポロ劇場、女支配人のお部屋
「ぼくちゃんたち、今度は何のご用かしらーん?此処は
幼稚園じゃないのよーん」
「……トンズラブラザーズを自由の身にして貰いに来たんだよ」
「んー!だから言ったでしょ、あのおじちゃん達はずーっと
もう、こ・こからっ……、出られないのよーん、ちゃんと
聞いてた?めっ!」
ジャミルは血管を浮かせそうになるが、アルベルトに肘で
突かれ平静を取り戻し、チュージから受け取ったダイヤモンドを
女支配人の目の前に差し出す。
「金の代わりと言っちゃなんだけど、これでも駄目かい……」
「なによー、それは……、……こっ、これはっ!?
ダ、ダダダダダダ……、ダイヤじゃないのっ……!!」
女支配人、目を丸くしダイヤに夢中で……もう今にもダイヤに
レロレロしそうであった。
「これは、100万ドル以上の価値の有るダイヤだわ……、
ぼ、ぼくちゃんたち、も、もっと近くでダイヤを見せて
頂戴!!」
「ん……」
「す、すごいわああーーっ!!モノホンの純金ダイヤよーーっ!!」
あははははああーーっ!!あっ……」
ジャミル、興奮してなりふり構わず、髪まで乱し始めた
女支配人からさっとダイヤを取り上げた。
「渡したっていいけど、ちゃんとトンズラブラザーズを
解放しろ……、じゃなきゃこのダイヤは俺らで使わせて貰うぞ……」
「わ、分ったわっ!約束するわっ!もうトンズラブラザーズは
自由の身よ、契約書は破るわ、……ビリビリビリ!ビーリビリッ!
何処へでも連れて行って頂戴、もうあんなムサイおっさん達、
用済みだわっ!!」
「よし……」
ジャミルはダイヤを女支配人に手渡した。これで本当に
トンズラブラザーズは借金という呪縛から解放されたので
あった。……其処に、ドアが開き……。
「ジャ、ジャミル、ほんまかいな……、わしら、又借金から
解放された言うて……」
「夢じゃないんじゃのう……」
「♪かね、それはほしいもの~、でも、自由も欲しい~、
……夢じゃなーーいっ!」
「目立たないおれだけど、お、おれ……、小便が
ちびりそうだよ……」
何時から話を立ち聞きしていたのか、トンズラブラザーズが
部屋に突撃して来たのであった。
「あんだよ、いたのかよ、たく……、まあ、あのおばさんが
アレだからな、もう心配しなくていいぜ!」
ジャミルが指で女支配人の方を指差した。
「レロレロ、レロレロ!これは私の物よっ!!し、
しっかり舐めまわして唾をたっぷり付けておきます!!」
「よ、良かったですね、皆さん……」
「ふふっ、でも、もうこれで本当にお人好しも
程々にしないとね!」
「だから、お前が言うなよ……」
「……何よ、ジャミルっ!!」
「よ、よおーし!後はナイスのアホが戻って来たら此処で
最後の打ち上げや!おい、お前ら、俺らの大事な奇跡の
お子様達を胴上げすんでーー!!」
「おおおおーーっ!!」
「ちょ、ちょちょちょ!待てって……、……うわあーーっ!!」
「きゃああーーっ!?」
「ど、何処触ってるんですか……、其処は……、あ、あああーーんっ!!」
「す、すまん、メガネ坊主……」
「wwwww」
ラッキー、間違えて、思春期のアルベルトの大切な
場所に触れる。アルベルトは赤面している……。
「わーっしょい!わーーっしょおおおーーーいい!!」
トンズラブラザーズがジャミル達を胴上げする横で……、
必死にダイヤを舐め回している女支配人の姿があった……。
「レロレロ!レーロレロ!!ああ、流石純金ダイヤは
しょっぱいわああーー!」
「あー、楽しかったなあ!ダイヤに過剰反応してたあんの
糞ババアのツラ……、ひ、ひひひ!」
「うん、すっきりしたね!」
「冗談じゃないわよっ!もうっ!」
トリオは足取り軽く、ホテルへと向かう途中であった。
ナイスが戻って来ればステージが再開出来る為、
それまでホテルを拠点に色々活動しようと決めたので
あった。
「そうだ、ついでにコンタクトレンズ届けに行くか、確か
パン屋の2階だったか……?」
ベーカリーに寄って、2階にいるペテネラの事を尋ねてみた。
「ペテネラさんかい……?確かに、ウチの2階に住んでるけど……、
えっ、君達、コンタクトレンズを見つけたのかい、本当に!?」
店主に許可を経て、2階へと上がらせて貰う。
「ペテネラさん、お客さんだよ、どうやらアンタが
探してた大事なコンタクトレンズを探してきてくれた
みたいなんだ……」
店主の声が聞こえたのか、慌ててコンタクトレンズの落とし主、
ペテネラが部屋から飛び出して来た。
「はあー、まさかこれを……、君達が……、本当に見つけて
くれたのか、……あああ、何という子供達だ、これは
亡くなった祖母の形見で大切な大事な物だったんだよ……、
ぼくの家系は凄く物を大切にしているのでね……」
「いいっていいって、良かったな!」
「えへへ、正確に言うと、見つけたのは私達じゃな……、
んーー!」
ジャミル、慌ててぱっとアイシャの口を塞ぐ……。
(……余計な事言うんじゃねえっつーの!オメーはよっ!)
(何よっ、ジャミルのバカっ!!)
「はあ~」
……ジャミルが心で思ったメッセージをアイシャが感じ取り、
テレパシーで会話する二人……。溜息を洩らすアルベルト。
「よし、お礼をしなくては、ちょっと、待ってておくれ……」
「ッシャ!お礼キターー!」
「ジャミル、やっぱり君は……」
「ん?や、やだなあ、アル……、だからお礼なんて別に
いーんだっての、あははあはは、あーははは!……お、
お菓子とか、期待してねーから!」
「……」
やがて、部屋に引っ込んで行ったペテネラが再び顔を出した。
「待たせたね、これはお礼だよ、はい、魔法の靴下だよ……」
「ん……?げ、げええええっ!?」
「くっ、さああーー!!」
「臭うわああーーっ!!」
ペテネラがお礼として差し出したのは、モロ臭う、
臭い靴下であった……。
「ご、ごれが……、ぼれいがい……?」
「うん、凄い靴下なんだよ、魔除けになるんだ、坊や達の
お守りになるといいんだけど……、ほんの数回、ぼくがちょっと
履いただけだから、大丈夫だよ」
ペテネラ、優しい顔をして物凄い事を言う……。臭うのは
やはりペテネラが履いたからであろう。
「ジャミル、受け取っておきなよ、折角だからね……、君のだよ、
遠慮しなくていいからさ」
「うん、ジャミル良かったわね、じゃあ、私達、外で
待ってるね……」
「……あっ、おいっ!待てよお前らあああーー!俺を
置いていくなあーーっ!!」
アイシャとアルベルト、ジャミルを置いて物凄い勢いで
その場を逃げ出す……。ペテネラはにこにこしながら、
ジャミルが靴下を受け取るのを待っている。
「さあどうぞどうぞ、本当に遠慮なんかしなくていいからね!」
「ちーきーしょおおお!……もうクセーのは嫌だああーーっ!!」
ジャミルが絶叫している頃、下のパン屋でアイシャと
アルベルトはパンを買い、もぐもぐと、リスの様に
パンを口に頬張り、食べていたのであった……。
「おいひいね、アル……」
「……うふん、あんはん、おいふいいね……」
それから三日後。トリオは特に何事にも事件に巻き込まれる
事も無く、フォーサイドでの毎日を呑気に過ごした。時には
トンズラブラザーズをおちょくりに行ってみたり、街で買い物を
したり。……しかし、ジャミルにはそろそろ暇になって来た様で……。
先程、廊下を走った際にドジを踏み廊下を歩いていたホテルボーイと
衝突したりと騒ぎを起こし掛けた。……その耽美、いつも頭を
下げるのはアイシャとアルベルトの二人である。
「はあ、そろそろナイスのおっさん、退院出来ねえもんかね……、
こんなに何も起きねえとかえって不気味だわ……、暇で暇で
しょうがねえよ……」
「あ、じゃあ……、お洋服観にでも行かない?」
「……聞こえなーい!最近耳が遠くなったみたいだなあー!?」
ベッドの上でジャミルが急に横を向いた状態になると、耳に
手を当て、ハア!?の、ポーズを取った。
「……ぶうー!」
「だから、平凡なのが一番なんだよ、……もう少し大人しく
してなよ……」
「う、ううう~……」
アルベルトはそう言うが、やはりこの男には無理な様である。
「俺、トンズラの処行ってくるわ、ナイスのおっさん、今日は
退院してるかもしんねーし」
「またかい、もう、しょうがないなあ……」
「ホント、しょうがないジャミルねえ~……」
(でも、ホントの事いうと、実は私も少し退屈に
なってきてたのよね!)
そう言う訳で、トリオは今日もトポロ劇場へと走るのであった。
「おっさん達、いるかーい!」
もうすっかりトンズラ達と顔馴染みになったジャミルが
楽屋のドアを開ける。
「おう、おるでー!カッカッカ!」
「その変な笑い声は……」
「話はこいつらから聞いたで、いやあ、久しぶりやなあ!
ジャミ公、アイシャちゃん、……と、見知らぬ眼鏡君!」
チョビ髭の男がジャミル達の方を振り向いてにっと笑った。
「ナイスのおっさん!やっと退院したのか!」
「ああ、インフルと、ついでに便秘とダッチョにもなったがの、
この通りや!」
「こんにちは!お久しぶりです、良かった、元気になったのね!」
「こ、こんにちは、アルベルトと申します……、宜しくお願いします……」
「何や、新入りさんは随分ジャミ公と違って真面目で頭よさそ
やのう、本当に友達か?」
「あはは、ははは……、あ、彼方此方で良くそう言われます……」
「……うっせーよ、髭親父っ!」
照れ隠しの為か、ジャミルがナイスに舌を出して抵抗した。
「処で、もうお身体は大丈夫なんですか?まだ退院した
ばかりだし、急に動いたら……」
「アイシャ嬢ちゃん、もうこいつ心配ないわ、今夜、此処で
ファイナルコンサートやるさかい、休んだ分はバシバシ扱き
使ったるわいの!あ、でも、ファイナル言うても、歌うの
最後ちゅー意味やないで!此処での仕事がもう、これきり
ちゅー意味や!」
「Ohー!ロウドウキジュンホウイハン、ラッキーのアホハ
キチクー!……と、まあ冗談はおいといてな、そう言う訳での、
是非見に来てやー!此処での最後を飾るに相応しい最高に熱い
ステージをお届けするさかい!!」
「そっか、やーっとあんたら活動再開するんだな、
待ちくたびれたよー!」
ナイスは退院したばかりだが、早く舞台に立ちたくてもう
仕方がない様であった。やはりステージに立ち、思い切り歌い、
客に唾と汗を飛ばして演奏する事が彼らの幸せと生きがい
なのだから。トンズラは今夜の準備も有る為、トリオは又
ホテルに戻る事にした。
「ああ、ジャミル、ちょっと……」
「ん?」
楽屋を出て行こうとしたジャミルをゴージャスが呼び止めた。
「近いうちに、君の歌を作らせて貰おうと思うんだけど、
少し歌詞を書いてみたんだ、聞いてくれる?」
「お、おう?俺かい?何か照れるなあ……」
「それじゃ、行くよ、♪ジャミル、それはあ、落ち着きの
無い謎の異星じい~ん……、爆弾よりも恐い物、そ、れ、
わああ~!」
「やめれや、おい!」
「えー、駄目かい!?」
「……プ!」
笑い声が聞こえない様に、先にアルベルトが楽屋を
飛び出して行った……。
「キイーーン!」
「……ジャミル、何してんのよ、まーたっ、廊下走ったら
危ないでしょ!」
「精神年齢小学生以下……、いや、分かってるんだけどね……」
「何か今日の俺は一段と走りたい気分で、……あらら、
止まんねえーーっ!!あ、あああああーーっ!!」
「ちょ、バカジャミ……、!?」
「……」
「坊や、……廊下を走ったら危ないわ、気を付けなさいな……」
止まらなくなった暴走ジャミルを止めたのは、……金髪
ブロンドのセクシーで綺麗なお姉さんであった。ジャミルは
勢い余ってお姉さんの胸に突進したらしく、顔がおっぱいの
間に挟まっている……。
「何してるのーっ!ジャミルーーっ!!」
アイシャがムキになって胸と胸の間からジャミルを引っ張る……。
ジャミルはおっぱいパフパフからスポーンと外された。
「あら……」
「助かった、ふう~……」
「もうっ!知らないっ!!ジャミルのバカバカバカバカっ!
バーカバカ!!きいいーー!!」
「……おい、其処まで言うこたあねえだろ!!」
「いや、アイシャの言う通り……、君は本当に落ち着き……
&冷静のスキルを習得するべきだよ……」
顔を青白くし、縦線が入ったアルベルトがスリッパを持ち、
ゆっくりとジャミルに近寄って来た……。
「ま、待て!……話せばわかる、落ち着け、な、な、な……?」
「いや、分らないから!君は絶対!!」
アルベルトは血管を浮かせ、ますますジャミルに顔を近づける。
後ろでアイシャはフグの様に頬を膨らませブン剥れている……。
「うふふふ!面白いボウヤ達ね……」
「あっ……」
先程の金髪のお姉さんがくすくす笑い出した。ジャミル達の
やり取りを眺めていた様子……。
「そ、その……、これは別にそのですね、えーと……」
アルベルトが顔を赤くして、さっとスリッパを後ろに隠した。
「いいのよ、もっと続けなさいな、君達もステージに
出るのかしら?受かるといいわね、頑張って、応援して
いるわ、じゃあ……」
「ス、ステージ……?」
お姉さんはブロンドの髪をなびかせ、ハイヒールをカツカツと、
美しいモデル歩きで……。控室の方へと歩いて行こうとする。
「ああ、あなた……、お団子頭のお嬢さん……」
「は、はいっ!?」
お姉さんに呼ばれ、ちょっとびっくりした様にアイシャが
返事を返した。
「……いえ、何でもないわ、それじゃあ……」
「……」
お姉さんは最初、アイシャを見て不思議そうな顔をしていたが、
特にそれきり何も話し掛けはせず、そのまま姿を消した。
(なによお、ちょっと美人でおっぱいおっきいからって……、
もう~!……でも、どうやったらあんなに大きくなるのかしら……?)
そう思いながら自分の発展途上の胸をアイシャがじっと眺めた……。
「はあ、取りあえず助かったかな……」
「いや、全然助かってないから!君には後でしっかり反省して
貰いますっ!勿論、今でもいいよっ!?」
そう言いながらアルベルトは隠していたスリッパを再び
取り出すのであった……。
「……鬼っ!腹黒っ!!フギャーーー!!」
「それにしても、ステージって一体何の事……?あっ!!」
アイシャは廊下にある、施設内イベント・主な催し物の内容が
記載されているお知らせボードの紙に目を通す……。
※目指せ、未来の珍へっぽこ漫才師君達、オーディション
参加者募る!君こそスターだ、スターへの一歩を今こそ
踏み出す時……
「……踏み出さないわよっ!!」
「!?」
そして、夜になり、漸く満を見たし、ステージ開演まで
後わずかとなる……。フォーサイドでの、トンズラブラザーズの
最後の大舞台である。
zoku勇者 マザー2編・17