霊能探偵・芥川九郎のXファイル(14)【白川公園のキマイラ編】
第1章 白川公園の怪獣騒動
霊能探偵・芥川九郎は、事務所で友人の牧田と話していた。彼の事務所は中区にあるが、古びたビルの一室に過ぎない。
芥川「白川公園に怪獣が出没したという情報が、SNSでバズっているらしいね。」
牧田「そうなんだよ。目撃者が撮った動画や画像が、各種SNSで拡散されているよ。」
芥川「それでまた京子から、魔獣に関する調査依頼がきたわけか。」
京子は愛知県警の刑事である。牧田も刑事として彼女と共に活躍してたが、数年前に退職して今はフリーランスである。
牧田「この前は、熱田神宮でケルベロスを退治したんだよね。魔獣研究者・榊原が黒幕だった。」
芥川「今回も榊原かもしれない。」
牧田「でも、榊原は君が始末したじゃないか。僕も目の前で見ていたからね。」
芥川「ところが、僕たちが現場を京子たち県警に任せて去った後に、彼の死体はいつの間にか消えていた。」
牧田「僕はいまだにその話を信じられないんだけど。そんなことあり得ないだろう?」
芥川「あの魔獣研究者は、魔界で魔獣を研究するために悪魔と契約したのかもしれない。悪魔に魂を売り、魔力を手に入れたとすると・・・」
牧田「頭を吹き飛ばされても死なないというのかい?」
芥川「実は彼を射殺した時に、命を奪った感覚がなかったんだ。ちょっと不思議な違和感があったんだけど、彼の死体が消えるまで気のせいだと思っていた。」
牧田「榊原はまだ生きているのか・・・」
第2章 魔獣研究者・榊原博士
芥川「まだ生きてるというか・・・これは僕の仮説なんだけど、彼は悪魔と契約したために魔界から出られないんじゃないかな?」
牧田「魔界から出られない?じゃあ、僕たちの前に現れた榊原は何だったんだい?」
芥川「魔力を具現化させた、仮の体みたいなものだったのかもしれない。」
牧田「なるほど。その仮説が正しければ、頭を吹き飛ばされた彼の仮体が消えてしまったことも、説明がつくね。」
芥川「強力な悪霊が実体を持つように、強力な魔力で作った仮体は実体を持つ。榊原は仮体により、魔界からこちらの世界へ遊びに来ているんだろう。」
牧田「遊びで魔獣を召喚されても困るよ。」
芥川と牧田がそんな話をしていると、服部夫人と能年(鎧)が帰ってきた。服部夫人は芥川の叔母である。芥川の事務所の隣は服部税理士事務所だ。彼女は税理士先生の奥方で、甥っ子の芥川のためにいろいろ世話を焼いてくれる。能年は鎧の妖怪で、芥川の助手である。彼の事務所に住み込みで働いている。
服部夫人「あら、牧田さん。いらっしゃい。ちょうどよかった。スーパーでお菓子をたくさん買ってきたから、食べていってね。」
牧田「ありがとうございます。ごちそうさまです。能年君は服部夫人のお手伝いかい。偉いね。」
大きな買物袋を両手に持ったまま立っている能年は、コクッコクッと頷いた。
芥川「叔母さん、ありがとう。お菓子でも食べながら、今夜の調査について話し合おうか。」
牧田「さっそく今夜から、白川公園を見回るのかい?」
芥川「うん、早い方がいいだろう。能年君にも手伝ってもらおう。」
それを聞いた能年(鎧)は、不思議そうに首を傾げた。
第3章 深夜の白川公園
その夜、芥川、能年(鎧)、牧田は白川公園を散歩がてら見回っていた。日付が変わるまではポツポツ人通りがあったが、数時間後の丑三つ時には人気がなくなった。静まりかえった闇夜に時々、道路を自動車が走り去る音が聞こえてくる。
芥川「夜はまだ涼しいけど、歩いていると少し蒸し暑く感じるね。」
牧田「今夜は収穫なしだったね。そろそろ帰ろうよ。」
その時、能年(鎧)が突然、立ち止まった。
芥川「能年君、どうしたんだい・・・」
見ると、向こうから怪しい人影が近付いてくる。
牧田「驚いた・・・本当に榊原だよ。」
榊原はニヤニヤしながら話しかけてきた。
榊原「おや、霊能探偵の芥川さんではないですか。こんばんは。」
芥川「こんばんは、榊原先生。頭を吹き飛ばされても、死にきれなかったようですね。」
榊原「ハハハッ。私の本体は魔界にあります。私を倒したところで、何の意味もありませんよ。」
牧田「榊原さん。魔獣の召喚なんて危険なこと、もうやめてください。」
榊原「大丈夫ですよ。今回の騒動は、霊能探偵の芥川さんに真相を気付かせてあげるために起こしただけですから。」
芥川「榊原先生は悪魔と契約したために、魔界から出ることができない。寂しさを紛らわすために、こうして未練がましく、人間界の様子を覗きに来ているのでしょう。哀れですね。大変お気の毒なことです。」
榊原はしばらく沈黙していたが、その表情は怒気をはらんでいた。
第4章 芥川の霊能力:火炎魔法
激高した榊原が絶叫した。
榊原「霊能探偵風情が生意気なっ!私は真理を追究する孤高の魔獣博士!!侮辱は許さんぞぉお!!!」
榊原は召喚魔法を唱えた。召喚ホールからキマイラが跳び出した。
榊原「キマイラよ!この人間どもを食らい尽くせ!!」
芥川は能年(鎧)に向かって叫んだ。
芥川「能年!キマイラを斬り殺せ!!榊原は俺がヤる!!!」
芥川の指示を受けた能年(鎧)はサーベルを抜くと、キマイラの前に跳び出した。能年(鎧)は一瞬でキマイラを斬殺した。芥川は火炎魔法を唱えた。
芥川「火炎魔法!聖なる炎よ!!悪魔に魂を売った魔獣博士を焼き尽くせ!!!」
芥川の放った火炎は、榊原を灰になるまで焼き尽くした。
牧田「すごい!能年君は、本気を出すとメチャクチャ強いんだね。」
芥川「能ある鷹は爪を隠す・・・だね。」
牧田「芥川君は火炎魔法で榊原を灰にしたけど・・・」
芥川「うん。こいつは仮体に過ぎない。榊原氏の言うとおり、仮体をいくらやっつけても意味はない。」
牧田「それにしても、榊原の召喚魔法はすごかったね。魔獣博士の称号は伊達じゃない。」
芥川「僕もやり方は知っているけど、使ったことは一度もないよ。そもそも魔獣を召喚しないといけない機会なんて、滅多にないからね。」
牧田「そりゃそうだ。異世界ファンタジーじゃあるまいし。」
芥川「悪霊相手なら普通の法術で十分だし、人間相手なら鉄パイプで十分だからね。」
牧田は肩をすくめて言った。
牧田「芥川君。人間相手に鉄パイプを使うのは、立派な犯罪だよ。」
元警察官の牧田はそう言って、芥川をたしなめた。
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