続高校珈琲 第一話
おはようございます。新作第一話のお届けです。中年になった森川チロは最愛の元恋人立村槇に再会します。お楽しみに!
第一話
「続高校珈琲」
(第一話)
堀川士朗
登場人物
森川チロ
47歳。
高校の時は演劇部に入っていた。
プロの俳優になったが、病気を患い今は障がい者年金をもらいながら照明清掃会社に勤めている。
小説も書いている。
実家を処分し、足立区のマンションで一人住まいしている。
立村槇
47歳。
チロの元恋人。
槇も高校時代、演劇部に入っていた。
チロが演出した高校演劇連盟祭の舞台「七人の黒沢ひろあき1992」でチロに出会い恋をしたが、別れた後は勤務先の上司と結婚。二児の母。
品川由紀夫
世界的演出家。
チロを抜擢し演劇の世界へいざない、導いていく巨匠。
202○年春。
僕は生きている。
まだ生きている。
50年近く生きてきて、全てを失いつつまだ己の人生をかろうじて生きている。
日曜日。
中年になった僕は、日々の節制からは遠く離れた放蕩な食生活の果てに太ってしまった。
今日は仕事が休みだ。
お昼前。
散歩する。
今日は一時間くらい歩くコースにした。中川橋を越えて八潮市方面に行ってみよう。
あそこには水元公園もある。
6号線を過ぎたところで軽く汗が出てきた。
心地よい。
散歩コースに、僕の高校時代の最愛にして初めての恋人立村槇の実家がある。
30年ぶりに寄ってみて様子だけ見てみようかな。
ストーカーっぽいけど、多分槇はもうあそこにはいないだろう。
昔を思い出すと
疲れる。
だが、思い出して
やらないと
もっと疲れる。
細かい事をよく覚えていると思われるかもしれない。だが、たいがいの事は忘れてしまった。
過去へ。
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俺の演出プランに逐一ウンウンと真剣にうなずく立村槙は背が165センチぐらいあって、高い靴を履くとほぼ俺と変わらなかった。だからだろう、高校演劇ではよく男役を振られるらしい。スポーティな引き締まったカラダ。
でも肌の色は白く、右目の下に涙ぼくろがあって色っぽい。距離が近くて、短髪のヘアーからシャンプーのいい匂いが漂って来てやべえ。超やべえ。
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槇の実家についた。
粗末な平屋建ての集合住宅の一角だ。
外から様子を見ていると、室内からテレビの音がしている。
中に人がいるようだ。
お母さんかな。
まだ元気にしているのだろうか。
中に入る勇気は僕にはないし、そんな理由もない。
しばらくした。
もう帰ろうかと思ったところへ、
「うちの家の前でうろちょろしてあなた誰ですか?……ってチロ?もしかしてあなたチロくんなの?」
僕の後ろに立っていたのは立村槇だった。
つづく
続高校珈琲 第一話
ご覧頂きありがとうございました。また来週土曜日にお会いしましょう。