復讐の旋律
復 讐 の 旋 律
作 杉 山 実
96-01
「好子!こちらに来なさい!」55歳の吉村和昌は20歳以上年の離れた美貌の妻をベッドに招いた。
和昌が好子と再婚したのは先月の事で、まだ新婚生活が始まったばかりた。
風呂上がりで髪を乾かし終えたタイミングで呼んだのだ。
吉村和昌は大手の建設機材メーカーYMDの代表取締役だ。
二代目で父親が起こした会社を大きくして、今では業界トップの地位に押し上げた凄腕の男だった。
好子とは再婚で、前妻は数年前に癌で亡くしていた。
好子がベッドに近付くと、待って居ましたと腕を持って引き寄せる。
「好子の洗い髪の匂いが好きだ!」と長い髪を手で持って匂う様にする。
この好子は自分の会社の事務員として働いていたのだ。
実は好子には付き合って居た男が居たのだが、横取りをして自分の妻にしてしまったのだ。
荒木義治がその哀れな男だった。
別れた荒木は好子の結婚が決まると同時に会社を辞めて、何処とも告げずに姿を消してしまった。
義治と好子の間では既に肉体関係も有り、結婚近いと同僚も思っていた。
「お金が目標額貯まれば結婚しよう!」そう口約束をしていた。
名古屋支店では事務の社員の中でも噂に成る程だった。
「荒木さん!支店一の美女を射止めたわね!」と冷やかされる事も屡々だった。
長い黒髪と清楚な雰囲気、大きな瞳が愛くるしく、誰が射止めるか注目されていた。
そんな永井好子が社長の目に止まってしまったのだ。
年に一度位しか名古屋支店には足を運ばない社長。
その社長の訪問に合わせて、お茶を出す係に選ばれたのが好子だった。
一目見て気に入った和昌は名古屋支店の部長に、自分が彼女に興味が有ると話した。
部長は荒木と好子の関係を知っていたが、引き離して社長と好子を結び付けて点数を稼ぐ事を考えた。
荒木は栃木工場への転勤に成り、二人は遠距離恋愛に成ってしまった。
それでも「後200万貯まったら結婚する」と頑張る決意をしていた。
名古屋支店の慰安旅行が実施され、日頃の労いに今回は社長が特別参加と支店長と部長が好子と会う機会を特別に設定したのだ。
社長直々好子は口説かれ、結納金の名目で大金を実家に贈られてしまう。
丁度父親も定年で二次就職の事に困っていたので、手を差し伸べ好子の心は大きく動いてしまった。
荒木とは月に一度程しか会わないので、徐々に疎遠に成って行った。
栃木工場勤務なので、簡単には名古屋には帰れない。
200万を貯める為に名古屋に帰る頻度も少なく成った。
鏑木部長の思惑通りに事が進んだのだが、、、、、
好子は生理が飛んでいる事に初めて気が付いた。
元々生理が不順で飛ぶ事が多く気にして居なかったのだ。
荒木が栃木へ行って初めて帰った時、寂しさも手伝いラブホに行ったのだ。
荒木とは三度目のSEXで、久々にお互いが燃えて居た。
ゴムを着けるのを完璧に忘れた荒木。
それ程性的な事を熟知していなかった好子。
男性も荒木が二人目で、最初の男性は大学の先輩だった。
美人の好子は男性に誘われる事が多かったが、殆どが遊んでいる様な男性で相手にしなかった。
身持ちの堅い女で彼氏も少なかった。
その為性に対しても未熟の部類だったのだ。
荒木と別れて、吉村社長とつき会い始めたが、吉村社長は忙しいのも有るが中々好子と関係は無かった。
「私、荒木さんの子供を身籠っている様なの」と悲痛な顔で母親の和子に告白した好子。
早速病院に、、
そんな事が吉村社長に聞こえたら即縁談が壊れる。
両親は相談して、極秘で始末して貰える病院を探した。
結婚前で大会社の社長の事だから、娘の過去を調査する事は間違い無いと両親は不安が募っていた。
父親の達夫は極秘で始末して貰える病院、それは風俗の女性が行く病院だと考え毎夜錦町を探し回った。
三日目、女が逆に声をかけて来た。
「親父が腹ませたのか?病院探している様だな!」
「何処か内緒で始末して貰える病院知らないかな?」
「何処の店の子なの?」
「風俗の娘じゃない!素人だ!」
「親父!素人娘に手を出したの?それで困っているの?相手の親父に見つかったら殺されるわよ」
「そ、そうなのだよ!知っているなら教えて貰えないか?」
「どんな娘を腹ませたの?写真無いの?」
「写真?」
「そうだよ!本当に素人娘か確認しないと、裏に暴力団の怖いお兄さんが居たら、病院が困るでしょう?」
40代の女に達夫は恐る恐る携帯の画面を見せた。
「な、何こんなに美人の子をやっちゃったの?そりゃー大変だわ」大袈裟に驚く女。
木村綾子43歳でこの近くで飲み屋に勤めて居た。
綾子は達夫に明日指定の時間にここに来たら、病院の看護師を紹介すると話した。
達夫の携帯番号を控えて、明日大丈夫なら連絡すると話した。
三次婦人科は闇の商売を引き受ける事は以前から知っていた。
風俗の女専門の堕胎、性病で生計を立てている医者だ。
一応見かけは小さな婦人科病院に見える。
自宅に帰ると達夫は和子に病院が見つかりそうだと嬉しそうに伝えた。
見つかれば母親が一緒に付いて行く事で、娘の好子も安心していた。
とても一人では病院に行ける状態ではなかった。
好子は荒木との間に宿った命を葬り去る事は耐えがたかったが、別れた以上父親の無い子供を産む訳にはいかない。
両親は既に吉村社長から仕事の世話、そして金品を沢山貰っているので今更破談には出来ない。
復讐の旋律