zoku勇者 マザー2編・13
ドコドコ砂漠編・1
「……ふぁあ~……」
あっという間に朝が来て……、又新たな一日が始まりジャミルは
目を覚ました。アイシャとアルベルトはもうすでに起きている。
支度もとっくに終えている。
「はあ、又俺がペケか、……流石に気持ち良すぎたなあ~、
ふぁあああ~……」
ジャミルが大口を開けて欠伸をしていると、側にちょこちょこ
アイシャが寄ってくる。
「ジャミル、やっと起きたのね!?」
「アイシャか、……おはようさん……」
眠い目をこすりこすり、ジャミルがアイシャの顔を見た。
アイシャは何となく又、そわそわして落ち着かない様子。
「あのね、このサターンバレーに……、ミルキーウェルって
呼ばれてる不思議な洞窟があるんですって、……どせいさん達は
今まで一度も入った事がないらしいんだけど……」
「洞窟か、何かあるのかな……、気になるなあ……」
「ええ、アルはもう洞窟の手前でどせいさんと話をしているわ、
さ、私達も行きましょ!」
ジャミルとアイシャも洞窟付近に行ってみるが、アルベルトは
どせいさんと話をしていると言うよりも……。
「……あの、は、鼻……、触らせて貰っていいですか?」
「ぷう、……はな、おすき???どうぞ、いくらでも。」
どせいさんはそう言うと大きい鼻を……、ぬっとアルベルトの
前に突き出した……。
「ありがとう、……う、ひゃ、ひゃああーーっ!この感触、
こ、この…柔らかいぷにぷに感……、あ、ああああーーっ!!」
「ぷう?ぼくのも、さわるます?」
「わしのも。いかが?。」
「わたしのほうが。なんだかやわらかいですけど。」
「ありがとうっ!……あああ、ああああーーっ!!」
どせいさん達の鼻は……、例えると、恐らくスクイーズ
マスコットの様な感触なのであろう。
「おい、あれって……」
「……」
丁度、ジャミルとアイシャは……、アルベルトぶっ壊れ現場を
目撃してしまうのであった……。
「もうっ、アルったら!ずるーいっ!私も触るーーっ!!」
「……おい……」
この件に関してはジャミルは冷静であった……。
……壊れてしまった友人達を見つめながら……、
もう暫くの間だけ様子を見、待っててやる事にして、
ジャミルはその場にしゃがみ込む。
「あーもんどもなか、おひとつ、どうぞ。」
「ああ、こりゃどうも、……美味いな……」
「ぷう~。」
どせいさんがくれた最中を齧りながら、ジャミルはぶっ壊れ
友人たちの暴走を様子が落ち着くまで只管眺めていた……。
「……ぷにぷにぷに……、ちょん、うふゃああああーーっ!!」
「ふにゅふにゅーーっ!!きゃーー!!」
「……しかし、美味いなあ、この最中……」
「うれしですねえ。ぽええ~。どももです。こーひーもどぞ。」
「わりィねえ、……はあ~……、しかしほっこりすんなあ~……」
思えば遠くへ来たものだ。
「……ブ!!」
どせいさんからコーヒーを貰って飲むと、又コーヒーブレイク
メッセージが流れ出した為…、ジャミルはコーヒーを盛大に吹いた……。
さて、漸く友人達も様子が落ち着いて来た?処で……、トリオは
漸くミルキーウェルの洞窟へと入って行った。
「……うふふ、うふふ、うふ、うふふ……、鼻、柔らか……」
「……」
……パンッ!!……
「いったああ~……」
ジャミルはアルベルトからさっとスリッパを取り上げると、
今日はいつもと反対でアルベルトの頭を引っ叩いてみた……。
いい感触であった。
「よう、目が覚めたか?」
「返せっ!……もうっ!これは僕の専売特許なんだからねっ!」
「あ!けちっ!」
アルベルトは顔を赤くしてジャミルからスリッパを取り上げた。
……しかし、いつかはアルベルトの頭も引っ叩いてやりたいと
思ってたので今回初めて頭を叩く事が出来、ジャミルは
大満足であった。後ろにいたアイシャが大きく溜息をついた。
ミルキーウェルの洞窟はいけないキノコなど、植物系の
厄介な敵が多かったが、それ程ボスの処までも距離はなく、
比較的楽に進めた。立ち塞がっていたボスも、例の如く
巨大な光のオブジェで、側に寄ると大きな目玉が付いた
芽に変化する。姿、形は……、何となくゲップーに似ている
様な気がするが、流石に臭くない。……ミルキーウェル、
此処はどうやら、又ジャミルだけの場所らしかった。
……よく来たな、ここは3番目のお前だけの場所だ、
しかし今は私の場所だ奪い返してみるがいい……、
奪い返せる物なら……
ねんちょうじゅのめが、アルベルトをかっと睨みつけた……、
すると……。
「!?」
「うわ!?」
……アルベルトの顔が、ダイヤモンドになってしまった……。
ダイヤにされてしまったアルベルトは、喋る事も出来なく
なってしまい、慌てる。この状態を治す事が出来る高LVの
ヒーリングは、今のジャミルではまだ使う事が出来ない…。
「アル、大丈夫!?」
「……!……!」
「……人間ダイヤか……、何カラットの価値があるのかな……、
元の世界でもアルは光のダイヤモンド担当枠……」
「……!!!!」
「ジャミル、アルが物凄く怒ってるわよ……」
「冗談だっつーの、……さて真面目にやるか、いいよ、
今回は俺らで何とかすっから、アルは休んでてくれ……」
アルベルトは頷くと、すごすご後ろに引き下がって行った……。
「まずは、一緒にいる雑魚を片付けちまうか、アイシャ!」
「はーいっ!行くわよーっ、PKファイアーβ!」
アイシャは覚えたばかりのPKファイアーβで、
ねんちょうじゅのめと一緒にいたつよいあるくめを
あっという間に焼き払ってしまった。
「……」
今回はあまり活躍出来ないアルベルト、後ろで黙って待機、
顔はダイヤ状態で表情は分らないが、何だか面白くない様子。
やがて、ジャミルが止めを刺し、バトルは終了した模様であった。
(……ペンシルロケットももう無いしな……、僕って役立たず
だなあ……)
「よし、終わったぞ、ほらアルも外行くぞ!」
「……」
「な、何かその顔で……、近寄って来られると怖いな…」
「アル、大丈夫…?何だか機嫌が悪い様な気がするのだけれど……」
アイシャが聞くと、アルベルトはそんな事はないよと言う様に
首を横に振った。……本当は若干機嫌が悪かったのであるが。
そして、トリオは外に出る。……其処にあったミルク色の
不思議な泉に近づくと……。
「あ……」
ジャミルの頭に又何かうっすらと不思議な記憶が
流れ込んでくる……。誰かが差し伸べる優しい手、
……赤ちゃんの頭を撫でる優しい手。けれど、
その手は……、この異世界での母親枠のファラでは
なく……。
……優しく、思いやりのある強い子に……
(何なんだろう、……今回のこの感じ……、今までと違う……、
覚えてる様で……、覚えてねえ、これは本当に俺の記憶なのか?)
音の石がミルキーウェルでの記憶を染み込ませた。
「ジャミル、どうかしたの……?」
アイシャに声を掛けられ、漸くジャミルが我に返った。
「……あ、な、何でもねえよ、それよりも此処での仕事も終わったな、
スリークももう、元に戻ってる頃だろ、俺らも早く戻ろうや……」
「え?ええ、そうね……」
「はあ~、僕の顔も漸く元に戻ったよ……、どうなる事かと
思ったけど……」
「何だ、もう戻っちまったのか、……ダイヤ顔も輝いてて、
結構男前だったんじゃね……、い、いででで!」
茶化すジャミルにアルベルトが飛び掛かって行き、
又喧嘩が始まりそうだったが、……アイシャに怒られ、
ジャミルとアルベルトが小さくなった……。そして、
トリオは洞窟を再び通りサターンバレーに戻る。
……どせいさん達ともお別れであった……。
「いつまでも、げんき、げんきで。」
「また、あそびくる。」
「ぷうう~。」
「ぼくたち、ともだち。ずっと。」
「……どせいさん……、きっとまた……、会いに来るわ……、
本当にありがとう……」
「なかないで。えがお、わすれないでな。」
「ぷぷぷう。わらったほう、かわいい。なくな。」
「うん……、ぐすっ……」
「アイシャ、大丈夫か……?」
「……平気、大丈夫……、うん、笑顔、笑顔!」
ジャミルが心配してアイシャに声を掛ける。アイシャは
泣き腫らして赤くなった目をごしごし擦ると、ジャミルに
笑顔を見せた。
(はあ~、……お別れにもう一度……、鼻を突かせて下さい……、
何て言えない……)
……後ろの方で、アルベルトもこっそりと未練たっぷり……、
淋しそうであった。
「ぷう、これ、あげます。いのちのうどん、くわがたむし、
どせいさんのこいんです。」
「うわ!」
アルベルトの背後からどせいさんがぬっと鼻を突きだした。
反射的にアルベルトは思わず又鼻を触ってしまうのであった……。
「ありがとう!ぶひゃーっ!……う、うう~、うっかり又
触れちゃったーーっ!」
「ぷう。」
きっと又、必ず会いに来る事を約束し、ジャミル達は
どせいさん達とサターンバレーに別れを告げ、スリークへと
元来た道を辿る……。再び薄暗い地下通路を通り、地上へと
出ると其処は……。
「……お?眩しいな……、太陽だ……!」
「私達……、スリークにやっとお日様を取り戻せたのね……」
「……臭くて色々と大変な事もあったけど……、本当に良かった……」
と、トリオが喚起回っている処に……。
「皆さん……」
スリーク中の町の人達が集まって来ていた。ゾンビ対策本部の
人達もいる。
「こんな小さな子達が……、スリークを救ってくれたなんて……、
本当にありがとう……」
「あなた達の事、ずっと忘れないわ……」
「また、いつでも遊びに来てくれよ……!」
スリークの町の人々は、ジャミル達に駆け寄ると、
皆でハグをした。
「……えへへ……」
ジャミルは照れながら、アイシャとアルベルトを振り返る。
二人も笑っている。こうして、スリークの人達とも別れを
告げて、次の場所、フォーサイドへとジャミル達は又、
新たな冒険へと歩き出すのであった。
ジャミル達はフォーサイド行きのバスに乗って暫しの間、
身体を休めていた。このままいけば、快適なバス旅に
なる筈だった。……しかし……。
「何か、異様に暑くなってきたな……」
「うん……、暑いわけだよ、二人とも、見てごらん、
窓の外……」
「?あ、本当だ……」
「わあ、大きな砂漠だわ……」
アルベルトに言われ、ジャミルとアイシャが座席シートから
窓の外を覗き込んだ。確かに、外は広大な砂漠の景色が
広がっている……。
「用はないわな、暑くてしょうがねえから早く抜けてくれ、
……ん?」
「あら、どうしたのかしら……」
「!?」
突然、運転手が運転をストップした。急にバスが動かなく
なってしまったのかと思いきや、どうやら大渋滞に
巻き込まれたらしい。
「おいおい、早くしてくれよ、こっちは急いでいるんだが……」
「何してるのよ、もうっ!早くしなさいよっ!」
他の乗客も、どうやら騒ぎ出した。数分後、何やら運転手が
無線で連絡を取っているのが見えた。何やら緊急の様子。
「……ご乗車の皆さま……、大変申し訳ございません、
現在、バッファローの大群が道路を横断し、通行の
妨げになっている模様です、皆さまには大変申し訳
ございませんが……、本日の運転は中止とさせて
いただきます……、本当に誠に申し訳ございません……」
「えええええーーっ!?」
……当然の事ながら……、ドルは皆、客に返金し、ジャミル達にも
返金された。他の客は激怒し、バスをしぶしぶ降りる。
ジャミル達もバスから降ろされてしまう……。
「どうすんだよ、んなとこで捨てられても困るっての、
……スリークまで歩いて戻るにしたって遠いし、もう日も
暮れるしなあ……」
「渋滞が解除されるまで……、どれくらいかかるのかしら……」
「何処か他にフォーサイドまで行ける道はないのかな、
それにしても……、暑い……」
幸い、トリオが捨てられた場所の近くにドラッグストアが
あった。取りあえず一旦そこに入り、必要な物を買い込む。
……ちなみに、ここの砂漠の名称は、ドコドコ砂漠らしい。
案内看板が立っていた。
「助かったけど……、此処、宿場じゃねえしなあ……、砂漠で
野宿なんて勘弁してくれよ……」
「ホント、じっとしてても……、暑いわね……、……」
「おい、アイシャ……?」
「……ふうう~……」
「ジャミル、アイシャの様子が変だよ、あ、あっ!!」
アイシャはそのままばたっと店内の床に倒れた……。
ジャミルとアルベルトは慌ててアイシャに駆け寄る。
「ハア、……ハア……」
「……日射病だ、よし、すぐに俺のヒーリングで!」
「お嬢ちゃん大丈夫かい!?すぐに此処のソファへ!」
「あ、ああ、どうも……」
店員の行為に甘え、アイシャをすぐに店内のソファーに
寝かせる。相当熱くて苦しいのかアイシャはハアハア
呼吸が荒い……。
「日射病にはこれ、濡れタオル!サービスでお嬢ちゃんに
一枚どうぞ!店内でも売ってるからね、砂漠のお供には
欠かせないよ!」
……結局の処、店の商売の宣伝も兼ねているのだろうと
思いつつ、ジャミル達は濡れタオルを貰うとアイシャの
額にそっと置いてやった。
「だから砂漠に用なんかねえっての、……にしても、アイシャ、
大丈夫か……?」
「……大丈夫よ、大分身体が冷えて来たわ……、ジャミル、アル、
心配かけてごめんなさい……」
「無理しちゃ駄目だよ、もう暫く此処で休ませて貰おう……」
「有難う、アル、本当に平気……、よいしょ……」
アイシャがソファーから降りた。まだ身体がふらふらして
いる様ではあったが。
「あのさ、ここら辺て……、何処か、泊まれる処って、
ないよな……?」
「……宿屋?……こんな辺鄙なところだからねえ、ウチも一応、
宿屋も兼ねてるけど、ベッドはボロボロだし、今夜はもう、
客が入ってるんだよ、あ」
ジャミルの問いに店員がポンと手を打った。何か思い出した様だ。
「此処から東に、空き小屋があった筈だよ、其処を利用するといいよ」
「……小屋か、やっぱ少し歩かなきゃだよな……」
「でも、少しでも身体を休めないと……、だけど……」
アルベルトが心配そうにアイシャの方を見ると、アイシャは
大丈夫!……と、言う様に頷いた。
「もう、夜になるからな、少しは涼しくなるだろ、しょうがねえ、
行くか……」
どっちみち今からスリークまでは戻れない、しかし他に何処も
泊まれる場所もあらず……、フォーサイドまでの道路は現在も
未だ復帰の見通しもたたず、という事で、トリオは東にあると
言う、砂漠の空き小屋まで歩き出した。……しかし、やはり砂漠の
暑さは……、昼も夜も関係なく……。
「……きゅうう~……」
途中で今度はアルベルトが日射病で伸びてしまう……。
急いでジャミルがヒーリングβで治すが……、一歩……、
数歩歩くごとに、又アイシャが日射病になり……。
「俺もだ……」
今度は、ジャミル自身も日射病で倒れてしまい……、
大波乱の砂漠の旅路の幕開けとなるのであった……。
「はあ、これじゃPPが幾らあっても足りやしねえ……」
「やっぱり、ドラッグストアで濡れタオルも買い込んで
おいた方がいいかもね……」
「……商売上手な親父だぜ、たく……」
……トリオは砂漠を歩き回り、漸く小屋らしき物を発見するのだが……。
「あれ?……灯りが付いてるぞ……、何だよ、空家じゃねえのかよ!」
「ホントね、……人がいるみたい……」
「そ、それでもいいよ、……断って……、休ませてもら……」
「……アルっ!!」
また、アルベルトが日射病で倒れた……。体力の無い
アルベルトはどうにもこうにも日射病で倒れる回数が
一番多いのであった。
「おーい、君達、大丈夫かーっ!?」
「あ……」
外にいたおっさんが、ジャミル達の側に駆け寄ってくる。
……何だか、探検隊の様なおかしな格好の様子。
「さあ、すぐに小屋の中へ!さあさあ!」
「あ、有難う、助かるよ……」
急いで小屋までアルベルトを運んで貰い、すぐにベッドに
寝かせて休ませる……。小屋の中には、年老いたもう一人の
おっさんがいた。こちらも探検隊の様な服装だった。
「やあやあ、坊や達、こんな砂漠までご苦労さんだね、
こんなに具合が悪くなるまで……おれはショージ・モッチー、
……砂漠の大きな穴をみたかい?あれはおれが掘ったんだよ、
……あの穴は凄い穴だよ……」
「穴?」
「あ、おれは弟の、チュージ・モッチーっス、おれ達、
埋蔵金掘ってるっス」
「ある奴に頼まれてな、掘ってんだよ、……だけど途中で
力尽きてめんどくさくなっちまってな、腹も減って来たし……、
なあ、何か食いモン持ってるかい?ピザ以外なら何でも
いいんだが、おれはピザが嫌いなんだよ、もしもなんか
ピザ以外の食いモンくれたら、出てきた埋蔵金は全部
あんたらにやるけど?」
「……」
ジャミルとアイシャは目を白黒させる……。幾ら何でも気前が
良すぎる気がする……。知り合ったばかりの、しかも子供に
頼んで、食べ物を提供して貰うだけで、お礼に埋蔵金を
全部ジャミル達にくれると言うのだから……。
「おいおい、どうするんだい?こっちゃもう……、腹が減って
腹が減って……、ぶっ倒れそうなんだよ……」
ショージの方がジャミル達に訴える……。本当に何か
食べたくて仕方がないと言った感じであった。
「分ったよ、確かどせいさんに貰った……、アーモンド
もなかの残りが……、後でゆっくり食おうと思ってたけど、
この際仕方ねえ」
「あ、ジャミルったら、……何時そんなの貰ったのっ!?」
ジャミルはごそごそリュックを探り、アーモンドもなかを
取り出した。見ていたアイシャはずるーいの一点張りである。
「お前らがどせいさんの鼻いじって暴走してる時だよ……」
「ぶうーっ!」
「おお、こりゃどうも!……こりゃまた、珍しくて美味いな、
しかも腹もいっぱいになる、これは本当に美味い!!おおお!!」
ショージはアーモンドもなかの美味しさに大分ご満足した
様子で自分の腹を擦っている。
「さて、約束だ、無事掘り起こせたら埋蔵金は全部君達にやろう」
「マ、マジで……?本当にいいのかよ……」
どうやら、ショージの言葉は本当らしく、ジャミルもアイシャも
驚きを隠せず……。かつてのトンチキ並みの太っ腹対応である。
「ん、男に二言は無い、だが、掘り出すまで時間が掛かる、
どうだね?その間に、砂漠の探検でも行ってみては?暫くの間、
ここの小屋も宿代わりに貸すぞ……どうやら、見た処……、当分、
この先には行けそうにないぞ……」
「あの、渋滞……、まだそんなに酷いんですか……?」
アイシャが聞くと、ショージがうむと返事を返し、今度は
チュージの方が状況を喋り出した。
「おれも道路状況の方、見て来たんスけどね、まあ~、
偉いモンすよ、バッファローの群れが、道路で居座った
まま、動かなくなっちまったらしいんスよ、……近いうちに、
駆除隊が出るの、出ないのと、騒いでますよ」
「けどなあ、砂漠かあ……」
「まあ、ドコドコ砂漠は、確かに変な怪物ははびこっとるし、
糞暑いわで大変だと思うが……、じっとしてもいられないだろう?
君達は若いんだ、若いうちの苦労は買ってでもしておけちゅう
言葉もあるだろう、砂漠にも冒険のロマンはある、どら、明日
ちょっくら砂漠めぐり行って来い!ははは!」
ショージはそう簡単に言うが、ベッドの上でウンウン唸っている
アルベルトの様子を見ながら……、どうしたもんか、ジャミルも
考えてしまうのであった……。
「……あーぢいいいよーー!あぢあぢあぢい!」
「ホント、暑いわあ……」
「うう、死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ……」
……結局の処ジャミル達は、小屋でじっとしてはおれず、
ショージに勧められた通り、砂漠の探検に出掛ける事に
したのであった。途中で何回も全員日射病に掛かりながら……。
それでも、ところどころに置いてある、プレゼントボックスの
中身を回収しながら広い砂漠を巡る……。
「ド○ク○時代でも……、砂漠はあったけど、あんときゃ、
日射病つう、余分なオプションが無かったからまだ
マシだった様な……」
「……ちょっとジャミルったら、何ブツブツ言ってるの、
しっかりしてよ!」
「死ぬ、只管死ぬ……、僕はもう駄目です……」
よほど苦しいのか、アルベルトも今回、相当弱気に
なってしまっていた……。
「……ふう、マジで冷たい水が欲しいなあ、お?何だこの看板は……、
なになに、えーと?」
※ このドコドコ沙漠にて、とても大切な物を落してしまいました。
お婆さんの形見のコントタクトレンズです。とても大切にしていた
物なので、もしも拾って下さった方がいらっしゃいましたら必ず
お礼を致します。
フォーサイド、パン屋の2階、ペテネラ・ジョバンニまで……。
「……あれま、随分とまあ、難易度の高い物を落としなさったのう……、
たくよう……」
「ジャミル、……アルがまた日射病よ!」
「……はいよ、今いくよ……」
日射病はジャミルのヒーリングβで治せるが、砂漠を歩いて
いる限り、何回治そうがすぐに掛かってしまう事、これは
避けられないので……、常にジャミルのPPとにらめっこ
状態であった。しかも、砂漠の脅威は日射病だけでなく……。
「うふふふふっ!あははははっ!」
「敵かっ!?」
……砂漠の土の中から……、意味も無く笑うタラコ唇の丸い球体の
敵が現れる。笑いボールであった。
「……きゃああーーっ!」
「アイシャ、アルっ!!」
笑いボールを攻撃しようとした瞬間、突如別の敵、トサカランが
横から割り込み突進し、アイシャとアルベルトを突き飛ばした。
二人は大分遠くに跳ね飛ばされ、ジャミルから引き離されてしまう。
その間にも、トサカランは猛スピードで走ると、孤立してしまった
ジャミルの処までわざわざ戻ってきた。笑いボールは独りになった
ジャミルを見てほくそ笑み、満足している様子。
「……んなろお~、俺を舐めてんじゃねえよ、……来いやっ!」
ジャミルはバットを構えると、笑いボールに向かってスマッシュ
ヒットを叩き込み、笑いボールに大ダメージを与えた。しかし……、
先に笑いボールを倒してしまったのが祟り……、笑いボールは爆発し、
逆にジャミルに致命傷の大ダメージを与えたのであった……。
……そして、ジャミルが気が付いた時には……、埋蔵金発掘本部の
小屋のベッドの上であった……。
「ジャミル、大丈夫……?」
「気が付いたみたいだね……」
「アイシャ、アル……、いてて、畜生……、俺、まーたベッド行きに
なっちまったのかよ……」
アイシャと日射病が治ったらしいアルベルトが心配して
ジャミルを見ている。ジャミルは急いでベッドから
降りようとするが。
「やっぱり、砂漠は過酷過ぎるよ……、用もないんだから特に
命懸けで回る必要なんてないんだし、道路の渋滞が収まるまで
此処で待たせて貰った方が良いよ……」
「……」
皆の安全を第一に訴えるアルベルトの言葉にジャミルが
考える……。すると……。
「やれやれ、こんな処までわざわざ来るぐれえだから、
どれだけ根性あんのかと思ったけどよ、……やっぱり此処
までか、今時の子だな、おれの勘違いだったのかな……」
ジャミル達の様子を覗っていたショージが何となくがっかりした
様に再び外に出て行った。……ショージの言葉が聴こえてしまった
らしく、ジャミルは……。
「俺、もう一度砂漠行くわ、お前らは此処で待ってていいぜ……」
「ジャミルっ!?」
「ちょ、ちょっと待ってよ、何でっ!!」
「何でも糞もねえ、行きたいから行くんだっつーの、だから
お前らは此処にいていいよ」
「ま、待ってっ、私は行くわよっ!……ジャミルを一人にして
ほおっておいたら又何無茶するか分からないものっ!!」
慌ててジャミルの後を追い、アイシャも小屋の外へ飛び出す……。
こうなると自分も動かない訳にいかないので溜息をつきながら、
仕方なしに更にその後をアルベルトも追った。
「……お?アニキ、あの子ら、又動き出すみてえですが、
大丈夫スかね……」
「おお、そうかそうか、やっぱ若えモンはこうでねえとな!
それでこそ、埋蔵金を渡す甲斐があるってモンだ!よーし、
チュージ、おれらも穴バンバン掘ったろうや!!」
再び、のそのそと砂漠へ向かって歩き出したトリオを見て、
満足そうにショージが豪快に笑うのであった。
……取りあえず、もう一度ドラッグストアに寄り、日射病
対策として、濡れタオルを大量に買い込み、気を引き締め、
再度砂漠探検へと繰り出す……。
「お?あれ、オアシスじゃん……」
「本当だわ!」
「もしかしたら、蜃気楼かもって、おーい……」
ジャミルとアイシャは堪らずオアシスまで駆けだす。
蜃気楼ではなく、本物の泉であった。当然、水着など
持っていなかったが、なりふり構っていられないので、
服を脱ぎ棄てジャミルはトランクス、アイシャは
シミーズの下着姿になるとそのままオアシスに
飛び込むのであった。
「……はあーっ!きんもちいいーっ!」
「アルも入りなさいよーっ!」
「はあ……、どうしてこう……、君達は……、その楽天的な性格が
たまに羨ましくなるよ……」
「んなとこでボーっとしてると、まーた日射病になんぞおーっ!」
「……何したって、砂漠にいる限り日射病は避けられ……わわわ!」
「恰好つけてんじゃねえっての!意地張んな、オラ来いよっ!!」
数分後、結局アルベルトもジャミルの手に寄り、無理矢理
オアシスに引きずり込まれる……。……当然アルベルトは
激怒するが怒りながらもそのまま服の状態のままでオアシスを
泳ぎだした……。
「……全くっ!馬鹿ジャミルっ!!」
「冷たくて気持ちいいだろ?これで暫くは身体が冷えるぜ!」
「確かに、気持ちはいいけど……」
「ねえ、アル、メガネは大丈夫なの?」
「……外すの忘れてたよ……」
トリオは暫くオアシスで休憩した後、身体が冷たい内に
再び砂漠を歩き出した。
「……大変よ、ジャミル!あんな処に人が二人倒れてる!!」
「ん~?」
アイシャに言われて目を凝らしてみると……、確かに砂漠の
ど真ん中に誰か人が倒れていた。
「暑さでまいっちゃったんだよ!大変だ、助けなきゃ!!」
「よしっ!」
急いで、倒れている二人の処に駆け寄ってみると……。
「何みてんのよ、糞ガキ……、みせもんじゃないわよ……」
「向こういけよ、折角のバカンスを邪魔すんじゃねえよ……、
しかし、こんなとこで寝てると死体とよく間違えられるん
だけどよ……、けど、死体は普通水着でなんか寝転ばねえだろ……」
倒れていた二人組はどうやらアベックの様であり、
……水着姿で日光浴を楽しんでいたらしい。
「たくっ、紛らわしいってのっ!……しかし、変わった
奴らもいるもんだなあ……」
アイシャとアルベルトも遠巻きに、糞暑い場所で平然と、
恵方巻きの様に寝転がっているアベックを不思議そうに
眺めるのであった。
……まだまだ砂漠の探索は終わらない……。
zoku勇者 マザー2編・13