悪魔城殺人事件 in 東三河(9)【終幕編】
第1章 警察の到着
夕食が終わり、参加者たちはそれぞれの時間を過ごしていた。多くの者は、自分の部屋でコーヒーや紅茶を飲んでくつろいでいた。神谷と美雪は3階の廊下で話していた。
美雪「来ないですね。警察。」
神谷「ここは東三河の山奥だからね。でも、もうそろそろ到着するんじゃないかな。」
しばらくすると警察が到着した。制服の警察官やスーツの刑事たちがやって来て、1階で執事と弁護士の誉が状況を説明しているようだ。やがて、現場検証や事情聴取が始まった。美雪と神谷も刑事の事情聴取を受けることになった。
刑事「どうも、刑事の法月です。よろしくお願いします。」
美雪「アイドルグループあんこ娘の美雪です。よろしくお願いします。」
法月「美雪さんは名古屋で活動されているんですよね。土井氏とはどのようなご関係ですか?」
美雪「土井さんはあんこ娘の熱烈なファンで、それで今回のパーティーに招待されたんです。あんこ娘のファンの間では有名な方です。いわゆる、トップオタだったんです。」
神谷「私は美雪さんの遠縁の知り合いで、今回は彼女の付き添いで来ました。」
法月「なるほど。いくつか形式的な質問をさせてください。参加者のみなさん全員にお聞きしています。」
法月はそう言うと、美雪と神谷にプロフィール、事件発生時の状況、そしてアリバイなどを聴取した。美雪と神谷は正直に話した。
法月「ご協力ありがとうございました。」
第2章 殺人の動機
参加者全員の事情聴取が終わると、身元を確認できる人は帰宅を許可された。しかし、ここは山奥にある別荘である。夜も更けて外は真っ暗だ。参加者のほとんどは館で一泊し、明日の朝に帰るようだ。
美雪「結局、ここで一泊することになりましたね。」
神谷「もともと一泊二日のパーティーだったんだから、支障はないよ。」
美雪「明日の朝食が楽しみです。」
神谷「朝食は夕食みたいに豪勢ではないと思うけどね。」
美雪「そうですけど、きっとおいしいごちそうを用意してくれますよ。」
神谷「犯人は誰なんだろう・・・まぁ、警察の捜査が進めば分かるんだろうけど。」
美雪「土井さんはなぜ殺されたのか・・・」
神谷「無差別のテロでなければ、殺人の動機は限られる。一番可能性が高いのは、感情の暴走だろうね。」
美雪「口論の末にカッとなったり、あるいは日常的な不満が爆発したり・・・」
神谷「怨恨の場合もある。確執、いじめや虐待への復讐とか。あとは痴情のもつれ。浮気、別れ話や嫉妬などのトラブルだね。」
美雪「最近は、ストーカーによる犯罪も多いですよ。」
神谷「その可能性もあるね。あと、土井氏はお金持ちだから、私欲からの犯罪かもしれない。単純な強盗、あるいは金銭トラブルに伴ういざこざ。」
美雪「お金目当てでなくても、何か秘密を握られて、脅されていた人が思い詰めて殺害することもあります。」
神谷「こうして列挙してみると、意外とたくさんあるなぁ。」
美雪「そうですねぇ。」
第3章 朝食
神谷と美雪は話が終わると、それぞれの部屋で就寝した。翌朝、食堂で朝食を食べることになった。
美雪「おいしそうですね。さっそく食べましょう。いただきます!」
神谷「いただきます。」
朝食はご飯とみそ汁に、魚や山菜のおかずがいくつか用意されていた。パンも用意されていて、他にも肉やチキンなどをバイキング形式で取ってきて食べることができた。
美雪「昨夜は現場検証と事情聴取がありましたけど、殺人事件の場合、捜査本部が設置されて、戒名を決めるんですよね。」
神谷「戒名って・・・事件名のことかな。美雪さんはミステリーやサスペンスが好きだから詳しいね。でも、本当にそんなドラマみたいなことになるのかな?」
美雪「戒名は・・・東三河悪魔城殺人事件とか?」
神谷「悪魔城はまずいんじゃないかな?みんながおもしろがって勝手にそう呼んでいるだけで、この館は土井氏の別荘に過ぎないんだから。」
美雪「そうですねぇ。」
神谷「朝食が終わったら帰ろうか。もう帰ってもいいみたいだから。」
美雪「そうですね。パーティーが中止になって、やることもありませんからね。」
神谷と美雪は朝食が終わると、刑事の法月、弁護士の誉、執事など、知人や関係者にあいさつして館を後にした。神谷は車に乗る前に振り返り、壮麗な館を見上げてつぶやいた。
神谷「悪魔城・・・か。」
二人は車に乗り込むと、帰途に就いた。
神谷「美雪さんはこのまま名古屋に帰るんですよね?駅まで送っていきますよ。」
美雪「はい、ありがとうございます。お願いします。」
第4章 事件の真相
二人が帰途に就いてからすぐに、事件は解決した。土井氏を殺害した犯人が自殺したのだ。犯人はパーティー参加者の一人だった。彼女は、朝食を食べに食堂に下りてこなかった。帰宅もしないで部屋に閉じこもっているので、不審に思った執事が様子を見に行くと、彼女はすでに死亡していた。医師の和田が死亡を確認し、刑事の法月が遺書を確認したそうだ。
神谷「事件はあっけなく解決したね。」
美雪「捜査本部も戒名も必要ありませんでしたね。」
神谷は用事で名古屋に来ていて、美雪と会ってコメダで話していた。
神谷「犯人は土井氏の愛人だったんだね。」
美雪「愛人ではないですよ。土井さんは随分前に離婚して、独身だったんですから。」
神谷「結局、動機は痴情のもつれだったようだね。」
美雪「彼女はニューハーフで、土井さんと10年近く交際していたそうです。土井さんがなかなか結婚してくれないので、もてあそばれていると感じていた。パーティーの日に激しい口論となり、カッとなって・・・」
神谷「土井氏の本心はどうだったんだろう?」
美雪「愛し合っていたんじゃないですか?愛と憎しみは表裏一体です。殺すほど愛していたとも言えるでしょう。」
神谷「なるほど。しかし、土井氏の本心を確かめることは、もうできない。永久にね。」
美雪「事件は解決したけど、永久に解けない謎が残されたんですね。」
神谷はコーヒーを飲み干して言った。
神谷「そろそろ東三河に帰るよ。それでは、またね。」
美雪「ごちそうさまでした。また来てくださいね。」
二人はコメダを出て、神谷は駅に向かった。美雪はしばらくの間、神谷の後姿を見つめていた。
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