霊能探偵・芥川九郎のXファイル(5)【大須の痴漢騒動編】
第1章 大須の痴漢騒動
霊能探偵・芥川九郎が牧田と知り合う前の話である。当時、牧田はまだ愛知県警の刑事だった。彼は同僚の京子と大須の痴漢騒動について話していた。
牧田「昨日も大須で痴漢騒動があったそうだよ。」
京子「最初の痴漢騒動が起きたのはちょうど3か月前。特別対策班が設置されて、毎日、大須を見回りしているのに・・・どうして犯人を特定できないのかしら?」
牧田「目撃者が少ないんだよ。見える人には見えるけど、見えない人には見えないような感じなんだ。要所要所にある防犯カメラもチェックしているんだけど、写ってないんだよ。」
京子「目撃者が少ないのは、犯人が狡猾で用意周到な男だからかな?でも、毎週のように現れる痴漢が、防犯カメラに写っていないというのはおかしいわよね?」
牧田「それで、班長が知り合いの探偵に協力を依頼したらしいんだ。」
京子「警察が刑事事件で探偵に協力を依頼するなんて・・・探偵小説とかそれを元にしたドラマや映画とかではよくある設定だけど、普通ありえないんじゃない?」
牧田「班長が言うには、これは怪奇事件だから、その道の専門家である霊能探偵の協力が必要だと。」
京子「怪奇事件・・・それこそドラマの話でしょ。そもそも、霊能探偵なんて本当にいるの?」
牧田「それが名古屋の中区にいるらしいんだ。班長はその霊能探偵氏とSKEのイベントで知り合い、いろいろ相談に乗ってもらっているそうだよ。」
京子「相談って・・・何の相談よ。」
牧田「まぁまぁ。とにかく会ってみようよ。その霊能探偵氏が明日の午後、大須の見回りに参加してくれるそうだよ。」
京子「私は怪奇事件も霊能探偵も信じていないんだけど・・・班長の指示には従うわ。それに、一日も早く犯人を逮捕するためには、大須を見回りするしかないもんね。」
第2章 霊能探偵・芥川九郎
牧田と京子は、大須観音の仁王門前で霊能探偵氏を待っていた。霊能探偵氏は時間通りにやって来て、二人にあいさつした。
芥川「どうも、はじめまして。霊能探偵の芥川九郎です。よろしくお願いします。」
牧田「こちらこそ、よろしくお願いします。私は牧田と申します。彼女は同僚の鈴木です。」
京子「よろしくお願いします。」
芥川「大田さんから、急用で参加できなくなったと連絡がありましたよ。」
牧田「班長は別件の対応に追われていまして。直前に中止しては芥川さんに申し訳ないということで、我々二人で来ることになりました。」
京子「大田は、芥川さんによろしく言っといてくれと申しておりました。」
芥川「そうですか、別にいいんですよ。大田さんとはSNSでいつもやり取りしていますしね。時々、オフ会で会う機会もありますし。」
牧田「それでは早速、見回りを開始しましょうか。」
芥川「鈴木さんには、制服の着用をお願いしてしまい、申し訳ありませんね。」
京子「スカートの制服というご指定だったので、注文通り着てきましたけど・・・逆効果ではありませんか?犯人が制服を着た警察官を見たら、警戒して逃げてしまうでしょう。」
芥川「ハハハッ。まぁ、普通の痴漢はそうでしょう。とりあえず、見回りを開始しましょうよ。」
第3章 大須商店街
三人は仁王門から大須商店街の見回りを開始した。今日は天気も良く、大須商店街は多くの人で賑っていた。三人は雑談をしながら歩いていった。
芥川「私と牧田さんは同学年なんですね。」
牧田「芥川さんは若く見えるので、年下かと思っていました。鈴木も同学年なんですよ。」
芥川「そうなんですか。鈴木さんも若く見えるので、てっきり牧田さんの部下か後輩だと思っていました。」
京子「ありがとうございます。私と牧田は同期なんですよ。」
そんな話をしていた時である。通りの向こうから女性の悲鳴が聞こえてきた。
「キャアーーーーッ!!!」
牧田「悲鳴だ!例の痴漢が出たんだ!!」
京子「行きましょう!」
三人が走っていくと、現場は騒然としていた。
京子「大丈夫ですか?」
被害者は女子高生だった。京子が被害者の女性やその友だちに話を聞いたが、混乱した彼女たちの話は支離滅裂だった。
京子「どうしよう。とりあえず、彼女たちを落ち着かせてから、どこかで事情を聴取しないと・・・」
芥川「彼女たちのことは牧田さんにまかせて、私と鈴木さんは犯人を追いましょう。」
京子「えっ?!犯人の行方が分かるんですか?でも、被害者は女性なので、彼女たちの話を聞くのは牧田よりも私の方が・・・」
芥川「犯人の霊気が残っているうちに追跡しないと。説明は後でしますから。とにかく鈴木さん、私の後をついて来てください。牧田さん、彼女たちのこと、よろしくお願いします。」
牧田「・・・?分かりました。彼女たちのことは任せてください。」
第4章 芥川の霊能力:破邪の法術
芥川は大須商店街を速足でどんどん進んでいく。犯人の霊気をたどっているのだろうか?京子は黙って芥川の後に続く。
芥川「見えました。アレですね。」
芥川が指差す方向に、確かに何か見える。不審な男性がうろうろしているようだ。しかし、うまく説明できないのだけれど、何か実体のない影のような感じだ。
芥川「こちらに気付いたようだ。鈴木さん、気を付けて。来ますよ!」
京子「えっ?!」
京子がそう言った瞬間、目の前に痴漢が現れ、彼女に抱き着いた。
京子「キャアッ!」
芥川が印を結んで叫んだ。
芥川「悪霊退散!!」
痴漢は悪霊だったのだ。聖なる光が貫通し、悪霊はそのまま煙のようになって霧散した。
芥川「鈴木さん、大丈夫ですか?」
京子「はぁ・・・心臓が止まるかと思いました。」
芥川「ハハハッ。心臓は止まっていないみたいです、よかったですね。事件は解決しましたよ。」
京子「アレは悪霊だったんですか?」
芥川「はい、この世の女性に破廉恥な未練を残して亡くなった男の怨念が、悪霊になってしまったんでしょう。どうもあの悪霊は、女性の制服姿がどうしようもなく好きだったようですね。しかし、心配なことがあります。」
京子「心配って・・・悪霊は祓われて、事件は解決したんじゃないですか?」
芥川「散り散りになったあの悪霊の霊気を偶然、吸い込んだ男たちが変態になってしまうかもしれません。風俗でアブノーマルなプレイをしたり、塾の講師が生徒にわいせつな行為をしたり、教師が学校で生徒たちの着替え盗撮したり・・・心配です。」
京子「・・・風俗でのアブノーマルなプレイはともかく、犯罪が増えるのは困ります。」
芥川「とりあえず、牧田さんのところに戻りましょう。彼も心配しながら私たちを待っているはずです。」
以上が、芥川が牧田・京子コンビと最初に解決した事件の顛末である。
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(5)【大須の痴漢騒動編】