zoku勇者 マザー2編・10
スリーク編・1
洞窟を抜けると外の出口には、髪がぼさぼさで
オーバーオールの様なスタイルのおじさんが僕らを
待っていた。最も、ぼさぼさという程、髪の毛は
なかったけれど。何処かのファンシーキャラ漫画の
様な顔の愛想のあるおじさんだ。
「やあやあ、わしが此処のダンジョンの製作者、
ブリック・ロードでやす、無事ダンジョン突破、
おめでとうございやす、いかがでした?わしの
作ったダンジョンの出来は……」
「え?あ、はあ、まあ面白かった……です……」
僕には何とも言えないけれど、一応はこう言って
おいた方がよさそうだ。
「…やっぱりちょっと単純すぎたかな、次に作るのは
もっと面白くしますので又此処かでわしのダンジョンを
見掛けたら是非、宜しくお願いしやす!わしはダンジョン
製作に命をかけてるんでやす!わしの技術とアンドーナッツ
博士の智恵さえ重なれば、わしは間違いなく、人類史上初の
ダンジョン男として君臨出来るんでやす!!」
「はあ……、どうか頑張ってくださいね……」
チェーン店みたいな感じで、どんどんダンジョンを
増やしていくのだろうか……。とにかくこのダンジョンは
終わりだ。……歩いて更に南への森へと進む。その先にも
更に又、別のダンジョンが待ち受けていた。こちらは
人工的に作ったものではなさそうだな。
「キャキャキャ!」
「……また、君は何してるの……」
「何だかわかんねー!只、何か異様に興奮してるんだ!
キャッ!」
全く、本当に分からない猿だ、とにかく、このダンジョンも
さっさと抜けてしまわないとね。
「あっ……」
ダンジョンの中に入ると、ピンク模様のキノコが歩いてきた。
敵かな……?多分、敵なんだろう。僕はショックガンを向け、
キノコに発射する。うん、中々良ダメージだ。と、キノコが
怒ったのか、……何だかモヤモヤした物を飛ばしてくる。
……やばい、これは胞子だ!……僕は変な気持ちになり、
頭部からにゅっとキノコを生やす……。
「キャキャ!何やってんだバーカ!」
……うるさいなあ~、バルーンモンキーが何か言ってるけど……、
僕は頭がぽわぽわで……、上手く歩けなくて……、フラフラで……、
ど、どうしたらいいんだろう……。
「キャーーーッ!!」
……突然、バルーンモンキーが僕に飛び掛かる、そして……、
僕の頭部目掛け、頭に生えているキノコを思い切りぶちんと
引き抜いた……。
……グロ描写につき、……見せられないよ!
「あああ~、ま、まだ血が……、あああ~……」
「まあ、目が覚めて良かったな!キャキャ!」
キノコはどうにか倒したけど……、二度とあんなのは
御免だ……。とにかく、歩くキノコには気を付けないと……。
僕は頭を抑えながら、再び洞窟内を歩き出した……。
道中、行き止まりの崖っぷち箇所があったが、
バルーンモンキーの力を借り、ガムで上まで
飛んで行って貰い、崖の上からロープを垂らして貰い、
上部に進める様に。
「おや?あれはなんだろう……」
洞窟の途中に、光の様な形のオブジェがある、けれど何の
反応も示さない。何なんだろう、気になるけど仕方ない。
僕はオブジェを取りあえず諦め、出口へと向かう。……後後、
このオブジェと又係る事になるのだけれど、それはまだ
先の話……。
「……キャキャキャ、キャーー!!」
また始まった、何なんだよほんとにもう。
「静かにしろって!……あれ?」
洞窟の奥から、頭にリボンを付けた猿が出てきた。
メスの猿みたいだ。……成程ね。どうりで。僕は
バルーンモンキーが急に騒ぎ出した訳がやっと分った。
発情期だ……。本当にもう。こんな処で……。何やってんだか……。
「キ、キャキャキャキャー!!」
「……キャキャキャ、ギギャギャギャーー!!」
「ギャーーーッ!!」
僕は2匹がじゃれ合う?光景を黙って見ていた。
中々面白い……。リボンのメス猿の方は興奮している
バルーンモンキーの頭を思い切り殴り飛ばした。
何だか、……以前に何処かでも見た事のある様な
光景だ。似てる、誰かさんと誰かさんに……。そう、
良く知っている……。
……その頃の、ジャミルとアイシャ……
「……びえっくしーーーっ!!」
「はっくしょんっ!!」
「……畜生……、くしゃみがどんどん酷くなりやがる、
……早く来いよな、ううう、アルベルトの野郎~……」
「はあ、私まで……、風邪をひいちゃったのかな、何だか
コンディションが乱れて……、ちゃんとテレパシーを
送れなくなっちゃってるわ、アル、あなただけが頼りなの、
お願い……」
……それでも、バルーンモンキーはメス猿を諦めない。
……そして等々、逃げて行ったメス猿の後を追って
外に飛び出し何処かに行ってしまったみたいだ。
どうやら、バルーンモンキーとは此処でお別れの様だ。
最初はあんなのどうしようかと思っていたけど、いざ
さよならとなると何だか淋しい様な気もする。それでも
いつまでも此処にいる訳にも行かない。取りあえず、
バルーンモンキーの恋の成就……、を願いつつ、僕は
洞窟を後にする。
……僕は独りになった。
やっと洞窟を抜ける。日の光が眩しいよ……。
「あんた、洞窟を抜けて来たのかね?」
外に出ると、小太りのおじさんが立っていた。僕は
おじさんに聞いてみる。
「石がいっぱい並んでますけど、此処は何の場所ですか?」
「あなたはお見受けしたところ、無知で無教養な単なる
ガキらしいので、一つお教えしておきましょうか、この石の
並び方はストーンヘンジですぞ、テレビや雑誌なんかで
お馴染みの、ユーホーも飛んでくると言う、あのストーン
ヘンジですぞ」
……おじさんの言い方にちょっとカチンときたがそれでも
教えてくれたので礼を言う。石の周りには原始人の様な……、
変な生き物が数人、グルグルと石を取り囲んでいる。
ビッグフットだ。今の僕じゃ奴らにはとても敵わないだろう。
何せ、9LV近くになって漸く、雑魚敵と余裕で戦える様に
なったんだから。……ビッグフットに気づかれない様、慎重に、
慎重に……、更に南へ歩いていく……。
……ドドドドドドド!!
「うわああああっ!!」
ビッグフットの集団から漸く遠ざかったものの、突然後ろから
何者かが僕に体当たりし、僕は跳ね飛ばされた。角の生えた
凶悪な巨大な羊、あばれゴートだ。今までは触れなかったけど、
こいつは今の僕の天敵で、LVが上がってもまだ真面に
戦えそうになかった。……でも、何とか此処を切り抜けなければ。
僕は頭を振って立ち上がる。そして、ショックガンを構えた。
負けてたまるか……。
……あばれゴートは再度僕に向かって突進してくる。…来る!
僕は祈りを込め、ゴートにショックガンを撃つ……。
「……どうかっ!当たれええーーっ!!」
SMASH!!
奇跡の一発だった。スマッシュ攻撃で大ダメージをキメ、
あばれゴートの角を2本とも打ち抜き、折ったのだった。
角が無くなったあばれゴートは慌てふためきながら、
そのまま何処かに走って逃げて行く……。
「ふう~、や、やった……、やっと……」
僕は強敵に漸く勝てたと言う達成感でいっぱいだった。
……そして、等々、ゴールの場所へ到着する……。
研究所だ、……この世界での僕の記憶が蘇ってくる。
アンドーナッツ研究所。僕は10年前、父親である
アンドーナッツ博士に、スノーウッド寄宿舎に
入れられた設定らしい。
……一歩一歩、不思議で複雑な思いを噛締めながら……、
僕は遂に研究所内部へと入る……。
「……誰じゃ?」
薄暗い研究室に声が響き渡る。禿げ頭のアンドーナッツ
博士だ。恐らく博士が作ったのだろう、研究所内は訳の
分からないおかしな機械が見られる。この世界での……、
僕の父親だ。僕は深呼吸すると博士の側まで近寄る。
えーと、こういう時は……、父さん、お久しぶりですね……、
で、いいのかな。とにかく……、頭の中で適当に台詞を
纏めると口を開いた。
「……と、父さ……」
「……?おお、アンタはブリックロードさんから紹介を
受けとる方かの……?」
おい、この人は息子の顔を忘れてしまっているのだろうか……。
設定上、役柄で僕は息子なんだけど。この話だけの中とはいい、
何だか腹が立ってきたし。
「僕はアルベルトですっ!……アルベルト・ドーナッツですっ!!
10年前に別れたあなたの息子ですよっ!!」
……うう、設定上とはいえ、な、何というフルネーム……、
ドーナッツだなんて……。近場に本当にあのアホ(……ジャミル)が
いなくて本当に良かった……。奴の前では何が何でも、
この異世界でのフルネームだけは絶対に出すまい、うううう~……。
「アルベルト……?おお、そうじゃったかの?何せ、もう大分
前の事なんですっかり忘れとったわい、折角だからあんドーナツ
食うか?粒あんとこしあん、どっちが好きだ?」
「……要りませんっ!!それよりも、あなたに頼みたい事が
あってわざわざ寄宿舎を脱走して来たんです!!……緊急の
用なんです!!」
「そうカリカリするな、……しかし、お前本当に儂の息子か?
眼鏡以外全然似とらんじゃないか……」
……当り前だよ、似ていてたまるか……。そう、今回の
僕は設定上、メガネを掛けている。勿論、飾りの
伊達メガネだ。本が好きだけど、僕は元々視力は悪くない。
まあ、元の世界にいた時も、夜に読書をする時は
カッコつけて多少、メガネを掛ける事もあったけど。
雰囲気だよ。
「まあ、お互い無事で生きとったんだから良かった
じゃないか、なあ」
……良くないっ。とにかく、こっちは命懸けで此処まで来たんだ。
早く用事を済ませないと。
「とにかく、……僕が此処に訪れた目的と過程を説明します……」
僕は博士に、アイシャからSOSのテレパシーを貰った事、
……自分はこの地球を悪から救う、選ばれし少年少女の一人
なのだと言う事、今、二人の仲間が遠い異国の地で危機に
あっている事、すぐに博士の力を借りて二人を救出に
向かわねばならない事……、すべて順を追って丁寧に話した。
「なるほどの、そうかそうか……、しかし、あんドーナツは
美味いのう、こんな美味いモンないわ、あんたも食えば
いいのに……」
博士は聞いているのかいないのか……、あんドーナツを
美味しそうにもぐもぐ。もしも、この爺さんが本当に
痴呆を患っているとしたら……、僕は諦めるしかないの
だろうか……。
「なるほどのう、その、アイシャという少女は無意識のうちに、
儂が此処にいる事をあてにしてお前に南に向かう様、声を
送ったのかも知れないの、……よし、儂が何とかしてやろう、
こっちに来なさい……」
博士はドーナツを漸く食べ終わるとやっと僕の方を見た。
やっとこっちの話に乗ってきてくれた様だ。……良かった、
まだボケちゃいないみたいだった……。とにかく良かった……。
「さあ、この乗り物に乗りなさい、儂が開発したスカイ
ウォーカーじゃ、儂が今研究しているのは時空間の任意の
2点を繋げるスペーストンネルなのだが……、それにはまだ
完成まで相当時間が掛かる、だからちょっと古いがこっちを
利用しなさい、相手からの声を聞いていれば、自動的に
目的地まで辿り着けるだろう、どうじゃ、かっこいいじゃろう?」
博士が見せてくれたのは、丸い輪っかが付いた、へんちくりんな
ユーホーだった。何だか、博士の頭部の形そのまんまなんだけど……。
今はそんな事言ってる場合じゃない、とにかくアイシャ達の処へ
急いで向かわないとだよ。だけど、僕はある事に気づく。
相手からの声で……と、博士が言っている。どうしたんだろう、
近頃アイシャの呼び掛けが全く聞こえなくなってしまって
いたんだ。まさか、彼女に何かあったんだろうか……。と、
そんな事を考えていると……。
……アルベルト、聞こえますか?私よ、アイシャです……
「アイシャ?……大丈夫なんだね、僕も今やっと、
アンドーナッツ博士……、父さんの研究所に着いたよ、
大丈夫だよ、もう少しだからね、父さんの乗り物を
借りてすぐにそっちに行くよ!」
アル……、うん、もう少しで会えるんだね!ジャミルも
大丈夫よ、体調が悪くて暫く唸ってたけどやっといつもの
性悪調子が戻って来たみたい、……私がテレパシーでアルを
私達が今いる場所、スリークまで誘導するね……
「うん、分ったよ、頼むよアイシャ!」
暫くぶりに聞いたアイシャの声は、以前よりも何だか元気を
取り戻していた様だ。本当にもう少しだ、待ってて、アイシャ……!!
後、おまけのジャミル君もね。
「誰と話しとったんだ、ああ、例の彼女か、んでは早く行ってやれ、
スカイウォーカーを動かしてみろ、さあ早く……」
「有難う父さん、……糖尿病だけは気を付けて、長生きして下さい……」
「お前も、何かあったらいつでも研究所を尋ねなさい……、では、
10年以内にまたあおう!!」
僕は博士にそれだけ挨拶するとスカイウォーカーに乗り込む。
いよいよ、この地から飛び立つ時が来たんだ。……目標、
イーグルランド、スリークに向け……、発進っ!!
「やっと行きおったか、しかし……研究所の天井屋根を
開けてやる前に……、屋根をぶち抜いて飛んで行きおった……、
たく、あのそそっかしさは誰に似たのやら……」
「キャキャ!変な乗り物が飛んでいくな!あれ、その内
絶対落ちるぞ!チーン!」
……そして、舞台はフォギーランドから再びイーグル
ランドへ戻る……。
アルベルトはアイシャの送るテレパシーに従い、スカイ
ウォーカーを目的地、スリークへと徐々に近づけて行く。
……フォーサイド、ドコドコ砂漠……、そして、スリークまでの
距離はどんどん近くなっていく。
「はあ、何かいい加減此処に閉じ込められてんのも
飽きたっつーの!早く来いっての!おせーんだよ、
アルの野郎!!」
「ジャミルったら……、もうー!ちょっと身体の調子が
良くなったと思ったら、すーぐこうなんだから!……あっ!?」
アイシャが目を閉じて胸の前で手を組んで静かに祈り始めた。
「ど、どうしたい……」
「もうすぐよ、アルが……、スリークの近くまで
来てくれてるのよ!」
アイシャが更に祈りを込める……。すると……。
「……来るわ!」
「ええええ!?」
奇妙な物体が……、ジャミル達の閉じ込められている
墓地下、上部まで近づき、急降下する。そして、二人の
反応を強く感じ取ったところで……、爆発した……。
スカイウォーカーも墓地下へと墜落する……。
「な、ななななな!?なんなんだよっ!?」
爆発してボロボロになった変な機械……、スカイ
ウォーカーの中から……、顔中真っ黒けの何者かが
ヨロヨロと出て来た……。
「……ゲ、ゲホッ!……スカイウォーカーの奴……」
「アル、アルなのね……!」
「マ、マジ…?マジで来たのかい……?」
アイシャが急いでアルベルトに近づく。確かに顔は
爆発で煤だらけだが、間違いなく、アルベルトであった。
「うん、そうだよ、アイシャ……、この世界では僕も
初めまして……だね、遅くなっちゃったけど、やっと
助けに来れたよ、君の声、ちゃんと受け取ったよ、
アイシャ……」
「……ああ、アル、アルーーっ!!」
アイシャがアルベルトに漸く会えた喜びと嬉しさで、
歓喜の声を上げた。
「プ……、何て顔してんだよっ!おめえは!!まるで志○け○の
爆発コント並みだな!!あーっはっはっはっ!!……ひゃははははは!!」
「ちょっとっ!ジャミルったらっ!!」
「其処のうるさいバカ、やっぱり相変わらず……」
……パンッ!!
「……いっ、てえええええーーっ!!何しやがるっ!!こんの
アホベルトっ!!」
「変わってないね、……暫くはスリッパが火を吹くよ、
まあ宜しくね、今日からこの話でも僕も又仲間だから……」
「……この野郎!よくもやりやがったなあ!……よおーし、
久々にやるかよ!?」
「いいよ?受けて立つよ!」
と、しょっぱなから……、この二人のアホ喧嘩が始まりそうで
あった。が……、それを制する者がいた。アイシャであった。
アイシャはふわりと飛んで、ジャミルとアルベルト、二人の
首っ玉に飛びついてハグすると涙を流し始める……。
「おいおい、アイシャ、ど、どうしたんだよっ!?」
「く、苦しいよ、アイシャ……」
「だって……、恐かったけど、アルにも会えたし……、
凄く嬉しいの……、また3人で冒険出来るね!えへへ、
ジャミル、アル!これからも一緒に頑張ろうね!」
アイシャは喜び半分涙目で二人を見つめる。こんな
表情を見ると、ジャミルもアルベルトも何も言えなく
なり黙ってしまうのであった。
「はあ、仕方ねえな~、ま、今はとっとと此処を出る
方が先だな、こんなとこ、もううんざりだぜ!」
「そうだね、早く此処から出よう!」
「よーしっ!がんばろーー!!」
こうして、漸くこの世界での年少組3馬鹿トリオが
顔を揃え、再び出会った。此処からまた、新しい冒険と
すべてが始まるのである。
「でさあ、結局オメーまで此処に落ちちまって、どうすんだよっ
つー話だっての!」
「心配しなくていいよ、これがある、ちょっと鍵マシンだよ、
これでどんな鍵の掛った扉も開けられるから、……よいしょ、
ほら開いた!」
「わあー!アルって凄ーい!やっぱりこういう時頼りになるね!」
「いや、……これは寮の先輩に作って貰った物だし、別にそんな……、
あはは……」
「……」
(んだよ、俺だって元の世界じゃ……、こんなモンちゃちゃっと
開けられらあ……)
アイシャとアルベルトのやり取りを見ていたジャミル、早速、
嫉妬心からか、ブスくれて不貞腐れた表情をする。面白くない様子。
「ほらほらっ!早くジャミルも外出ましょっ!」
「……わ、分かってるよ!背中押すなっての!」
アイシャとジャミルは数日ぶりで漸く地下から外に出る事が
出来たのだった。それでも外は相変わらず薄暗い。
「何かおかしいな、……町の方から騒ぎ声がするぞ?」
「行ってみましょ!」
「それにしても……、何だか臭うなあ~、あ、別に君達の事じゃ
ないよ……、この町って何だか……、う~ん……」
「ど、どうしよう……、ジャミル、私達……、数日、地下に
閉じ込められてたから…」
「あああっ!な、泣かないでアイシャ!全然大丈夫だから、ね!」
思い出した様に泣きそうになるアイシャをアルベルトが
必死に慰める……。アホかという表情をし、ジャミルが先に
町まで走り出した。
「あっ、待ってジャミル!」
「一人で行ったら危ないったら!……全くっ!」
ジャミルを追い、アイシャとアルベルトも走り出す。
確かに、町の南の広場に人だかりが出来ていた。
トリオは人の山をかき分け、騒動の原因を見に行く。
「な、何だいありゃ……」
「テント……かしら、でも、顔が有るわ、何だか怖い顔……」
ジャミルは野次馬に試しに聞いてみる。
「なあ、あんなテント……、あったっけ?」
「さあ~、私は知りません、ゾンビ対策本部のテントなら
今まで立ってましたけどね、あの変なテントも急に立って
いたんですよ、しかも、襲い掛かってきて困ってるんです!
ああー!あんな物一体誰が立てたんだか!……誰か何とかして
くださいー!」
おじさんは慌てふためいて逃げて行く。自分達が拉致られて
いる間に、町はまた大変な事になっていた様子である。
「敵ならとにかく倒してしまった方が良い、二人とも、
暫らくぶりで地上に出た訳だけど、大丈夫?戦えるかい?」
「私なら大丈夫っ!準備万端っ!」
アルベルトがショックガンを取り出して準備をする。アイシャは
はりきって返答を返した。
「どう見ても、余興用のテントじゃねえな、しゃーねえ、
いっちょやりますか!」
ジャミルの言葉にアイシャとアルベルトが頷いた。この世界で
トリオが揃っての初の本格的な戦闘モード突入である。
……トリオはそのままダッシュで化けテントに突っ込んで行った。
様子を見ていた野次馬達が心配して騒ぎ出す……。
「坊や達っ!危ないよっ!怪我したらどうするんだっ!
早く戻りなさい!!」
「怪我なんかしょっちゅうだよっ!大丈夫だっての!」
余裕のジャミルに化けテントが突如、汚い液の様な物を
口から発射し、それはジャミルの全身にモロ降り掛かるので
あった……。臭いに錯乱したジャミルはそのまま動けなく
なってしまう……。
「うわ!何だこりゃ!!……くっ、くせえーーー!!」
「ジャミルっ!……えいっ!PKファイアーαーっ!!」
ジャミルに代わり、アイシャが攻撃面をサポートする。
化けテントは炎に弱いらしく大分ダメージを与えている様だ。
隙を逃さずアルベルトも攻撃援護をする。アイシャは只管
PKファイアーでばけテントを追い詰めて行くが、
……化けテントはアイシャに襲い掛かり、力を込めて
噛み付いて来た。
「……いやっ!きゃああーーっ!!」
「……こんにゃろっ!喰らえっ!!」
復活したジャミル、化けテントに向かい、渾身の一撃を放ち、
漸くテントに大きな穴を開ける。
「大丈夫か、アイシャ!!」
「うん、少し肩を噛み付かれただけ、……大丈夫っ!」
アイシャが立ち上がるが、痛みを堪えて無理しているアイシャを
アルベルトが気遣う。
「駄目だよ、無理しちゃ!……最初にアイシャがPK
ファイアーでダメージを与えて減らしてくれたから
大丈夫だよ、後は僕らで何とかしよう、ジャミル!」
「ああ、言われなくても分かってる!アイシャ、オラ、
後ろで休んでろ!」
「うん、二人も無茶しちゃ駄目だよ!……気を付けて!」
アイシャを下がらせるとジャミルとアルベルトが
化けテントの方を睨んだ。
「しかし、ジャミル……、君、凄いにおい……、げ……」
「うるせーなっ!分かってらあ!!テメエでもくせーんだよっ!!
……はあ、もうイヤら、こんな生活……、うぐううーーっ!!」
アルベルトが顔をしかめる。恐らくさっき化けテントに
喰らった液の所為であろう……。喰らったジャミル本人が
臭がっているので……、相当な臭いなのは間違いなかった。
とにもかくにも、暫く地下に閉じ込められていて何せ風呂にも
入っていない状態なので、一刻も早く、さっさとコイツを倒して
風呂に飛び込みたい衝動に駆られるジャミル……。
「行くぞ、アルっ!」
「……ぶ、ぶん……」
鼻を摘みながらアルベルトがうんと言えず、ぶんと
返事を返した。ジャミルは怒りながら尚も化けテントを
攻撃しつづける。そして、等々、特大の穴を開け止めを
刺す。……破けてしまったテントは跡形もなく消えた……。
「う、うえ……、終わった……、おげえええ~……」
疲れておげおげのジャミルがしゃがみ込む。心配した
アイシャが側に駆け寄り、ジャミルにすっきりハーブを
飲ませる。
「大丈夫?これ飲んで!ほら、沢山あるから……、さっき
休ませて貰ってる間にドラッグストアまでひとっ走り行って
買って来たの!アルも、はいっ!!」
「ふう、有難う、アイシャ……」
迅速なアイシャの行動に心から感謝するジャミルとアルベルト。
ジャミルもヒーリングを使えるが、気を遣い、わざわざ買って
来てくれたのである。
「……にしても、アイシャ、俺くせえだろ?……どうせ
くせえんだろ……、近づかない方がいいぞ……、俺あっち
行くからさ……」
「そんなのお風呂に入ればいいでしょっ!もうっ!それより、
怪我とかは平気なの!?」
アイシャは全然気にしていない様子。……毛嫌いする事も無く、
何処までも優しいアイシャに、ジャミルは心の中でさっきの
気遣いと合わせ、こっそりと、2重に感謝する……。普段の
ジャミルの悪意ある悪ふざけのおならにはギャーギャー騒ぐが、
こういった突発的な事故の様な事態に対してはアイシャは
本当に気にしないのだった。
「……あんたら、あのバケモノを倒してしまったんだ、凄いね……」
どこぞの乞食がジャミル達に声を掛けてくる。こちらも何か
月風呂に入っていないのか分からないそれこそ悪臭状態であった。
「お前はよそ者みたいだから教えてやるけど……、実はおれ、
悪者の手先なんだ、ゲップーって奴のさ、人間なんか所詮、
無力だろ?強い方についた方が良いんだよ……ゲップーは強いぞ、
何せ、大好物のはえみつをなめてるからな、蜂が集めるのは
ハチミツ、蝿が集めるのは、はえみつだ」
ジャミルは聞いていて気分が悪くなり、アイシャとアルベルトを
突いてその場を離れようとする。
「ん?もう行っちまうんだ、……おれ、ゾンビに手伝わせて
はえみつを集めさせてんだ、化けテントの中に沢山隠して
おいたからな、後でゲップー様へ届けさせるんだ、まだまだ
テントの中に腐るほどあるからな、じゃ!」
乞食は去って行く。化けテントは倒してしまった所為か、
影も形ももう無い。しかし、何やらぽつんと残された
ゴミ箱が異臭を放っている。ジャミルが思い切ってゴミ箱を
開けてみると、中には瓶に詰まったドロドロした、まるで
ゲロの様な液体が入っている……。
「……この臭い……、さっき俺が喰らった臭いと同じじゃ
ねえか……、び、瓶に入ってても、すんげー臭いが洩れてる、
そうか、これがはえみつなんだな、俺は……はえみつ液を
糞テントにぶっ掛けられたのか……」
力なくジャミルが溜息をついた。その横でアルベルトが
臭くてたまらないと言う様に困った表情をする……。
「そんな物どうするの……?それよりも、早く此処の場所から
離れようよ、ホテルに行こう、身体も休めないと……、二人も
久々にお風呂に入りたいだろ……?」
「持っていく……」
「!!!」
「いや、バケモンの親分の……、ゲップーって奴はこいつが
好物なんだよな、……これをどうにか利用出来ないモンかと
思ってさ、一応、貰っとく……」
アルベルトは嫌な顔をするが、ジャミルはアイシャに
手伝って貰い、悪臭対策で、瓶に入ったはえみつを何重も
厳重にビニール袋で包み、自分のリュックに入れた……。
……暫くは、げろげろ、ぷ~ん……な展開が続きそうである。
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