霊能探偵・芥川九郎のXファイル(3)【熱田神宮の犬編】

第1章 謎の怪獣事件

 霊能探偵・芥川九郎は事務所、と言っても中区にある古びたビルの一室に過ぎないのだが、そこで友人の牧田と話していた。最近、熱田神宮周辺で立て続けに起きた怪獣騒動についてである。
芥川「確かに不思議な事件だけど、そんなに大騒ぎするようなことかなぁ。どこかから逃げ出した大型犬か何かじゃないのかい?」
牧田「被害者や目撃者の話では、そんな生易しい獣ではないみたいだ。襲われた被害者の傷跡から推測するに、ヒグマ以上に大型で獰猛な獣のようだよ。名古屋の街中でそんな野獣が出没し、あんな負傷者が出るなんて聞いたことないよ。」
芥川「聞いたことがないような珍しい事件だから、新聞やテレビがおもしろがって報道するんだろう。確かに、名古屋の街までヒグマが下りてくるなんて、ありえないよねぇ。」
牧田「芥川君はそんなことを言って、僕をからかっているのかい?ヒグマなんて本州にいないだろう。北海道にしかいないんだから。」
芥川「ハハハッ。先入観にとらわれてはいけないよ。頭のおかしい熊好きが、ヒグマをペットとして飼っていて、それが逃げ出したのかもしれないじゃないか。いや、どこかの動物園みたいな所からかもしれないね。」
服部夫人「九郎君、クッキーを焼いたから持ってきましたよ。お口に合うかどうかわかりませんが、牧田さんも食べてくださいな。」
 服部夫人がクッキーとコーヒーを持って来てくれた。服部夫人は芥川の叔母で、隣室の服部税理士事務所の税理士先生の奥方である。服部夫人は甥っ子の芥川のために、いろいろ世話を焼いてくれる優しいご婦人なのである。

第2章 京子からの調査依頼

 クッキーを食べながら芥川が言った。
芥川「君はどう推理するんだい?」
牧田もクッキーを食べながら答えた。
牧田「まぁ、推理するだけなら、いろいろな可能性を考えることができるさ。京子からの依頼は、そんな推理ではなくて、地に足の着いた調査だよ。」
牧田は愛知県警の元刑事だ。数年前に退職し、今はフリーランスとして活躍している。京子は牧田の元同僚で、愛知県警の現職刑事である。芥川はコーヒーをすすりながら言った。
芥川「愛知県警の敏腕美人刑事様のご依頼ですか。」
牧田もコーヒーを一口飲んでから言った。
牧田「ちゃかすなよ。霊能探偵様の力の見せ所かもしれないよ。」
芥川「まぁ、確かに不思議な事件だし、おもしろそうだねぇ。よし、調査してみよう!」
牧田「件の野獣が出没するのは深夜だ。草木も眠る丑三つ時に、熱田神宮周辺を夜回りすることになるね。」
芥川「相手はヒグマ以上に凶暴な野獣だ。県警の拳銃を貸してくれとは言わないけど、猟銃でもないと危ないだろう。」
牧田「名目上はただの調査だから、銃器の使用なんて許可してくれないよ。」
芥川「護身用の武器は必要だろう。また鉄パイプでも持っていけと言うのかい?」
牧田「また僕をからかって言っているのかい?相手がヒグマ以上の野獣なら、鉄パイプではとても太刀打ちできないだろう。」
芥川「からかっているわけではないけど、君の方こそちょっと能天気だろう。襲われたら逃げればいいと思っているんだろうけど、相手がヒグマ以上の野獣なら、とても逃げ切れない。不意を突かれたら、殺されて食われてしまうよ。」
牧田「とにかく、できるだけの準備はしていこう。銃器は使えないけど、護身用の武器や装備はいろいろあるんだから。」
芥川「改造銃はダメかなぁ?」
牧田「猟銃よりヤバいだろう。」

第3章 深夜の熱田神宮

 牧田と芥川はしばらく、深夜に熱田神宮周辺を夜回りすることになった。深夜の熱田神宮は、暗く静まりかえっていた。漆黒の闇夜、時々、どこからか犬の遠吠えが聞こえてくる。
芥川「今夜は暖かい夜だねぇ。しかし、少し湿気が多いような気がするよ。」
牧田「今夜も特に収穫なしだったね。さぁ、もう帰ろうか。」
芥川「・・・牧田君、あれ・・・」
芥川はそう言って指差した。怪しい人影が歩いていた。
牧田「誰だろう?こんな深夜に・・・」
芥川「あれは普通の人間じゃないなぁ。霊気を感じるよ。尾行しよう。」
牧田「えっ!霊気?」
怪しい人物はどうやら男性のようだ。男は熱田神宮の森の中に入っていった。芥川と牧田は気付かれないよう注意しながら、男を尾行した。
 男は暗く妖しい森の中をどんどん進んでいく。二人はいつの間にか、男を見失ってしまった。
牧田「気付かれてしまったのかな?見失ってしまったね。」
芥川「おかしい・・・確かに熱田神宮は広いけど、こんなに歩けば・・・」
牧田「・・・芥川君、あれ・・・」
牧田が絶句して指差した方向には、恐ろしい獣がいた。
芥川「あれは・・・地獄の番犬・ケルベロスだ。まずいぞ、牧田君。逃げるぞ!」
二人は来た道を全速力で引き返した。
牧田「芥川君、ケルベロスって・・・」
芥川「牧田君、しゃべっている余裕はないぞ!後ろを振り向かないで、とにかく走り続けるんだ!!」
後ろから獣の気配を感じる。二人に気が付いて、追いかけてきたのかもしれない。
 ようやく、二人は森の入り口に出ることができた。芥川が振り返って叫んだ。
芥川「僕たちはいつの間にか、魔界へ通じるトンネルを抜けて、魔界に迷い込んでしまったんだ。」
牧田「魔界!?」
振り向くと、そこには魔獣・ケルベロスがいた。魔界から二人を追いかけて、ここまで付いて来てしまったのだ。

第4章 芥川の霊能力(サイキック波動砲:デザートイーグル改)

 恐ろしい魔獣・ケルベロスは、凶悪な唸り声を上げている。今にも襲いかかってきそうな様子だ。
ケルベロス「ガルルルッ・・・」
牧田「ヒィエエッ!!」
芥川は懐からデザートイーグルを取り出すと、ケルベロスに向かって容赦なくぶっ放した。
 ズドォオオーーーンッ!!!ズドォオオーーーンッ!!!ズドォオオーーーンッ!!!
 ケルベロスの3つの頭が吹き飛んだ。頭を全て失ったケルベロスの胴体は、その場に倒れてしまった。
 ズッシーーーーンッ!!
牧田「なっ!拳銃!?・・・改造銃か?」
芥川「自分で改造したんだ。計算上、通常の3倍の威力のはずだ。」
 森の中から怪しい男が出てきた。
男「まさか、ケルベロスが倒されるとは!」
牧田「あなたは!?・・・」
男「私は怪しい者ではありませんよ。魔獣研究者の榊原と申します。魔界に潜入し、魔獣を研究していたのです。」
芥川「魔獣の研究・・・こんな危険なことをして、ただで済むと思っているんですか!?」
榊原「誤解ですよ。私、法律に反することはしておりません。私を逮捕して、警察にどう説明されるおつもりですか?魔界に通じるトンネルとか、魔界から魔獣が来たとか・・・それを聞いて、警察の方々はどう解釈されますかねぇ。」
牧田「それは卑怯な言い分です。あなたは・・・」
牧田がそう言いかけた時、芥川のデザートイーグルが火を噴いた。
 ズドォオオーーーーンッ!!!
 榊原の頭が吹き飛んだ。
牧田「えっ!?芥川君、君は何を・・・」
芥川は冷静に言った。
芥川「警察の方々が理解できるように、事実を整理しよう。榊原は、正体不明の野獣に頭を食いちぎられて死んだんだ。そして、その正体不明の野獣は、僕が霊能力で退治した・・・サイキックバズーカでね。牧田君、異論はあるかい?」
牧田「・・・そうだなぁ。サイキックバズーカよりも、サイキック波動砲の方がかっこいいんじゃないかな?」
芥川「うん、そっちの方がかっこいいや。そうしよう!」
牧田はおもむろに、ポケットからスマホを取り出した。愛知県警の刑事・京子に連絡するために。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(3)【熱田神宮の犬編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(3)【熱田神宮の犬編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-03-31

CC BY
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  1. 第1章 謎の怪獣事件
  2. 第2章 京子からの調査依頼
  3. 第3章 深夜の熱田神宮
  4. 第4章 芥川の霊能力(サイキック波動砲:デザートイーグル改)