『ふたり』

拙いピアノ
すらっとした指
微かな胸の膨らみ

ああ
君が広がる


『ふたり』


二人の世界は幼稚で
幼稚であることに意味があった
楽しさを分け合うことばかりで
悲しみなんて知らんぷり

土曜日の午後
繋いだ手を見つめながら
ここに愛は在るだろうかと考える

幾ら考えても何も無い
何も無いから
二人は長く手を繋げた

この世界に
アタシと君しか存在しないなら
どんなにか安心できただろう

だって何時か違う人を愛すのでしょう?
その唇で誰かの名を呼ぶのでしょう?
アタシを置いてけぼりにして
誰かと笑い合うのでしょう?

二人の世界に
他の誰だって入れやしないのに
それでもこの世界を壊すのね

君のピアノは嫌い
余りにも濁っているから
どうして他人の目を気にするの
君は君でよかったのに

誰に批判されようが
君だけの可愛らしさがあったはず
例えばその甘えた声で告げる冷たい言葉

それに気付かない人なんて
切り捨ててしまえばいい
そうしてアタシと二人きり
この世界に居てよ

単調で幼い愛しさを
本物の愛だと勘違いしたアタシを
その指で赦してよ

ああ
君が遠くなる

もう会えないところまで来て
何故後ろを振り返ったのか
アタシは何を後悔したのか



「終わってしまえば、それもまた」

『ふたり』

『ふたり』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-03-30

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted