zoku勇者 マザー2編・6
ツーソン編・3
「糞ガキ君、永遠にお休みの時間です……」
「くっ!な、何か最近俺、この羽交い絞めされるパターンが
多くなってきたな、ううっ!」
ジャミルは……、一歩一歩近づいてくるカーペインターに……、
目を瞑って雷を覚悟する……。
……ジャミル、駄目っ!諦めたら駄目だよっ!!
テレパシーでアイシャがジャミルの心に呼びかける声が聴こえた……。
「アイシャ……、そうだ俺は……、アイシャを助けるんだ、
助けなきゃ……!!」
もう一度と何とかとふんばって目を開けると、拘束されて抑え付け
れられている筈の身体が何だか異様に軽くなっていた。
「あ、あれ……?」
周りを見ると何故か……、信者達が倒れており、カーペインターがオロオロと
慌てている……。
「へーい、ジャミルっ!チュッ!」
「お、お前は……」
突如、部屋にトンチキでファンシーな男?そう、あのトンチキさんが
雪崩込んできた……。後ろにはハンマーを隠している。これで信者達を
殴って気絶させた模様。
「このおれを呼んだな?助けが欲しいんだろう、うん、そうかそうか!」
「何で、お前が……」
「まずはあの爺さんをたおしなっ!ほれっ!」
トンチキがフランクリンバッジをジャミルに投げる。どうやら逃げた
信者から取り返して来てくれた様だった。
「何がなんだか分かんねえけど、あんたには礼を言っとく!
……糞爺!今度こそお前の負けだっ!」
「くそっ……!」
ジャミルはもう一度フランクリンバッジを身に着けるとカーペインターと
再び向き合う。
「……ええーいっ!神よーーっ!ギーグ様ーー!!この愚か共に裁き……
ぎゃあああーーっ!!」
カーペインターはヤケクソになり、ジャミル達に向かって再度バチバチ
攻撃を放った。神のご加護で必ず奇跡が起こり、バッジの威力をも
跳ね返せると思っていたのだろう。しかし、やはり無駄な事で……、
カーペインターは自ら神の裁きを喰らい、……そして倒れた。
「や、やった……、ははは、はははは!」
「良かったなあー、ジャミ公!はははっ!」
「おいおい、アンタまで……、ジャミ公って、うーん、ま、いいか!」
つい、この間まで血生臭いバトルをしていた関係の二人だが、
今日は心から喜びあいそして抱き合う。
「ほんと、ありがとな!えーと、チンチキさんだっけ?」
「お前わざと言ってんだろ、でもま、そんなとこも可愛いね、
お前はよ!ははは!」
「てっ!」
トンチキは笑いながら帽子の上からジャミルの頭を叩いた。
「ところで、何で俺を……?」
「うーん、ちょっとね、今日は下見に来たのよ……、まあそのついでって
とこだ」
「下見……?」
ジャミルにはトンチキの用事がイマイチ良く分からなかった。彼が祭壇に
置いてある金色の像をじっと眺めていたのにも気が付いていなかった。
「じゃあ、ジャミ公!おれは又広場に戻るが、お前も早く彼女を助けて
広場に来いやな!」
「……あ」
トンチキは去ってゆく。ジャミルは顔を赤くしながら、トンチキに
感謝するのだった。
「うう、わ、私は……」
「!!」
倒れていたカーペインターが起き上がる。ジャミルは警戒するが……。
「……私の後ろにある、このおかしな人形……、こいつを拾ってから
自分でも訳の分からない行動をいつの間にかとる様になってしまっていた、
唯の平凡な暮らしをしていたいだけだったのに……許せる物ならどうか
許して欲しい、早く行ってあげなさい、ジャミル君、これがアイシャ
お嬢さんを閉じ込めている山小屋の牢屋のカギだ、それから……、本当に
すまなかった……」
「爺さん……」
ジャミルは鍵を受け取るとカーペインターと握手を交わす。
又、奇妙な像にちょっと触れた様だが、ジャミルは今回も余り気にも
とめていなかった。下に戻ると、あの信者迷宮からもあっと言う間に
人が消えていた……。
「はあ、3人しか人がいなくなっちゃった、……もうお家へ帰ろう」
「皆、目が冷めた様な顔をしてさっさと帰っちゃったよ……」
「さっきはごめんね、仲良くしてね」
「……段々、みんな洗脳が解けてるみたいだな、良かった……」
そして足取り軽く、再び山小屋へと向かうのであった。
「アイシャーーっ!!今度こそ助けに来たぜーーっ!!」
「……ジャミルーーっ!!あははっ!」
ジャミルは急いで、牢屋の鍵を開ける……。こうして漸く、
本当にアイシャを救出する事が出来たのだった。
「ジャミル、酷いけが……、私の為に……、ごめんね、ごめんね……」
又泣き出しそうになったアイシャを慌ててジャミルが止めた。
「だからっ!気にすんなって!いつもの事なんだからよ!それよりも
またくれぐれも浚われねえようにな!」
「……いつもの事って……、なによお!ぶうーだ!……えへへ!」
「はははっ!」
二人は再会を喜び、心から笑いあうのだった。
「よーし!私も今日から仲間よっ!張り切っちゃうからね!」
「……ついてくんのか……?」
「私もギーグを倒す為に選ばれた少年少女の1人なのっ!何が何でも
付いていきますっ!」
アイシャはそう言うと、とてとて牢屋の奥に戻り、ぬいぐるみを持ってくる。
「はあ、やっぱり、そう来る……、おい……、何、そのぬいぐるみ……」
「誰にも優しく愛に生きるアニキくんよ!……一人ぼっちで寂しかったけど、
この子のお蔭で私、大丈夫だったのよ!!」
「あのな、女の子ならもうちょっと可愛いぬいぐるみを抱けっつー
んだよっ!おかしいだろ!?」
「いいのっ!ほらほら、こんなとこ、もうこりごりよ!早く出ましょう!」
「……お~い~……」
やはりアイシャは相変わらず玉に良く分らん処が有ると思いつつ、
……取りあえず、又新しい旅が始まる。
「一旦町に戻って、ちゃんと爺さんに顔見せろよ、お前を心配し過ぎで、
日夜町中徘徊してたみてえだったし……」
「……おじいちゃん、ぐす、おじいちゃんにも随分心配掛けちゃっ
たんだね……」
「まあ、わりいのは全部カーペンターだからな、奴も元に戻って
改心したし、何も心配するこたあねえよ」
「うん!」
アイシャはジャミルに笑顔を見せた。とびきりの可愛い笑顔を。
「さあ、行くか!ツーソンの町に戻ろう」
「……待って、元ハッピーハッピー村の中から……、ジャミル、あなたを
呼ぶ声が聴こえる……、あなただけの場所、……でも今は違う……何かが
いる場所になっているわ……」
「そうか、音の石の場所か……、村の中に……」
「村に戻りましょう、村の中に有る……、東の洞窟の方から……、
声がするの……」
「そうすっか、……お?」
「きゃあ!?」
足音が近づいて来て、アイシャは慌ててジャミルの後ろに隠れた。
「……ポーキー、何の用だ……」
ジャミルはアイシャを庇いながらポーキーを睨む。
「凄かったなあ、お前!なあ、おれもお前の仲間にいれてくれよ!又友達に
なろうぜ!……駄目か、駄目だよな……、ちっ!嘘に決まってんだろ!今日は
引き下がってやるけど又絶対邪魔してやる!今にみてろ!!」
「……ぶるっ」
「アイシャ、もう大丈夫だよ、豚は養豚所に帰った、もうこれからは
俺がついてる、心配すんな」
「……うん……」
二人はツーソンの町に戻る前に、もう少しだけ、ハッピーハッピー村に
滞在する事に。村に戻ると、もう皆宗教からの洗脳は解け、すっかり解放
された様であった。青色からのペンキ補修工事も始まっていた。
「お、牛も元に戻ってら!良かったな!」
ジャミルが呼びかけると牛も返事をした。
「やっぱり青い牛は……まずかったですよね」
無人販売所ももう店終いをした様で、監視のお兄さんが色々と
後片付けをしている。
「無人販売所もお終いだよ、見てくれこれ、ポーキーとかいう
デブがみんな食い荒らしていっちまったんだ、あ、これ余りもん
だけど良かったらどうぞ、美味しいよ」
お兄さんはジャミルとアイシャにバナナを渡した。疲れてお腹の
すいた二人はお兄さんに礼を言い、甘いバナナを頬張った。
「さて、これから二つ目の自分だけの場所に行かなきゃ
ならんわけだが、アイシャを連れて……」
まだ、防御力の低いアイシャの事も考え、装備品を充実させようと、
ドラッグストアに寄ったのである。
「これ、……どうのうでわと、それから、リボン……、もう頭にリボン
着けてんだけど……、護身用のいい奴、つう事にしとくか、頂戴……」
「待ってジャミル!私の武器のフライパンも買ってよ!」
「いや、なるべく、お前はまだLV低いから、攻撃は無理しなくて……」
「いやっ!私も戦うんだから!」
「……駄目か、けど、あまり無理しないでくれよな……」
ジャミルが肩を落とした。やはり彼女が言う事を聞く筈もなく、
……これから先の旅でもきっとジャミルは更に振り回される事に
なるのだろう……。
ジャミルとアイシャは、2番目の自分だけの場所があるという
洞窟の中を進んで行く。今度の場所は、通称リリパットステップと
呼ばれているらしい。
「ねえねえ、今回、ジャミルは何歳なの?私は11歳設定よ」
「俺か?……俺は最初10歳だったけど、都合上、15歳まで
引き上げられたよ、んでも、背丈はあんまり変わんねえし、
身体が縮んでるから大分きつい時もある……、唯でさえ元の
年齢でも背が小さいのによ……」
「そうなんだ!私は何歳だって頑張っちゃうもん!」
ガッツポーズをとり、アイシャが張り切る。
「はは……、(元の16歳でも、何歳でも……、精神年齢は変わ……)
あいてっ!」
「なーにジャミル、何か言った……?」
アイシャは笑顔でジャミルの片頬をぐいぐい引っ張る。
「い、いひゃ、なんふぇもらいふぇす……、いふぁ、いふぁいふぁい
ふぉ、あいふゃひゃん……」
今回の彼女は、超能力が使えると言う事をついうっかり忘れて
しまっていたジャミルであった。最も、普段の彼女もジャミルの
暴言等や何やかんやに対しては感はいいのだが。
「おい、しかしその……、ムキムキのぬいぐるみ……、どうにか
なんねえのかよう……」
「何で?可愛いでしょ!……実際のムキムキのおじさんは
ちょっと怖いけど、お人形になると可愛いのよ!」
ジャミルはこれ以上何も言わず、黙ってぬいぐるみが壊れるのを
待つことにした。
……さてさて、これからが大変。まだアイシャはLVが低いのにも
係らず、かいりきベアにフライパンで突っ込むなど暴走行為をし、
わるぶるモグラに地中下からスカートの中を覘かれきゃあきゃあ
騒いだり。……その為にジャミルがフォローで余計に動き回る事になる。
アイシャのLVが暫く一定に落ち着くまで、二人は村と洞窟を行ったり
来たり。
「ねえ、私、大分強くなったと思うの!もう奥まで進んでも
大丈夫よね!」
「駄目だっ!……まーた頭に輪っかがついたらどうするっ!!」
「ぶうー!」
「とにかく、あと1LVだ、そうしたらもうちょっと進んでみようや」
「はーいっ!」
アイシャ、コロッと態度を変える。……ジャミルは頭を抱えた。
「でも、敵さん達、このぬいぐるみさんには攻撃してこないわ、
……その方がいいけど……」
「そりゃ、キモいか……、おっと!何でもねえ!さあ、行くぞ!」
「うん!」
洞窟内のプレゼントボックスに入っていた大きなおまもりを
護身用にアイシャに装備させ、二人はいよいよ最深部へと
たどり着く。最深部にはジャイアントステップの時と同じ、
オブジェが待ち構えていた。ジャミルがバットを構えると、
……アイシャもフライパンを構えだしたのを見てジャミルは
少々慌てだす。
「おい、お前はホント、無理しなくていいから、今回はなるべく
防御しててくれ……、と、余裕があればこれ、回復用の食べ物だ……」
「分ったわ……」
アイシャが何とか納得してくれたのを見て、ジャミルはほっと
胸を撫で下ろす。
……よく来たな、ここは2番目のお前だけの場所だ、しかし
今は私の場所だ、奪い返せる物なら奪い返してみるがいい……
台詞も前回の物とほぼ全く一緒だったが、遂に此処のボスである、
№3の巨大モグラが襲い掛かって来た!
「ねえ、ジャミル、今、2回目なのよね?どうして№3なの?」
「俺に聞くな、……それよりもっ、来るぞっ!!」
ジャミルが巨大モグラに突っ込み、アイシャは言われた通り、
フライパンでまずは自身の身を守り、ガード待機する……。
巨大モグラは鋭い爪でジャミルの身体を引っ掻き、
スマッシュまではいかないが、ジャミルに相当の
ダメージを与えた。
「……ジャミルっ!」
やはり、黙って見ていられないアイシャは……防御体制から
再び攻撃体制になり、フライパンを構えようとする……。
「……駄目だって言ったろう!俺は平気だからっ!!」
ジャミルが怒鳴ったのを見て、アイシャははっと我に返り、
慌ててジャミルにハンバーガーを渡した。
「よしっ、それでいいんだっ!」
ジャミルはハンバーガーを口に入れると、巨大モグラを
バットで殴る。負けずに巨大モグラも再び爪攻撃で
ジャミルをふっ飛ばすと巨大モグラはアイシャの方を
睨んだ。……アイシャを狙い始めた様であった。
「な、何よ、来るなら来なさ……きゃあーーっ!!」
「……アイシャっ!逃げろおおおっ!!」
ジャミルがアイシャを助けに行く前に巨大モグラがアイシャ
目掛けて猛突進する……。しかし、アイシャの持っていた
アニキくんのぬいぐるみがアイシャの身代わりに音を
たてて壊れた。
「……許さないんだからっ!!当たれえええっ!!」
アイシャの怒りがフライパンでの奇跡のスマッシュ攻撃を生み、
巨大モグラに大ダメージを与えた……。
「今だっ!PKキアイαっ!!」
同時にジャミルが放ったキアイ攻撃で、巨大モグラは跡形も
なく粉々になり此処でのボス戦も無事終了する……。
「ふう、終わったな、……アイシャ……?」
ジャミルがアイシャに近寄ると、……アイシャはぬいぐるみが
壊れてしまった事にショックを受けている様子であった。
「また……もっと可愛いの買ってやるよ……」
「このアニキくん……、私が牢屋に入れられた時に……、私が
あんまりしょげてたから、ハッピーハッピー教団の信者さんが
気を遣って持って来てくれたの……、せめて、お嬢ちゃんが
牢屋でも寂しくない様にって」
だから、どうせならもっと……可愛いの置いて行けよ……、と
ジャミルは思ったのだが。けれどアイシャが捕まる前から
彼女が所持していたのでは無い事が分かり、……何となく
安心してみる……。
「ずっと……、一緒だったのにね、もうさよならなんだね、
今まで私の事、ずっと見守っていてくれて有難う……、
アニキくん……」
アイシャは悲しんでいるのだが、可愛いぬいぐるみなら
まだ……、涙腺場面であるが、……ぬいぐるみがあれだった
為、ジャミルはどう対処していいか分からず、少し吹きそうに
なったのを汗を搔きつつも、何とか堪え……、震えながら
アイシャに声を掛けた。
「これからは又、俺が一緒だ、俺がアイシャを守るよ……」
「ジャミル……、うん、有難う……」
ジャミルが差し伸べた手をアイシャがしっかりと握り、二人は
顔を見合わせ微笑む。
そして……、二人は洞窟の外に出る。今度は広い草原に
小さな足跡が幾つも点々と続いていた。
「わあ、さっきまで洞窟の中だったのが嘘みたいね……」
アイシャが思い切り、リリパットステップの爽やかな草原の
風を吸い込む。
「1番目の場所もこんな感じだったんだ、あ……」
「ジャミル?」
ジャミルは赤い帽子を被った赤ちゃんの幻を見る。……何やら、
タバ……、……何かに手を出そうとし、誰かに頭を引っ叩かれて
いる光景だった。
音の石が……リリパットステップでの音の記録をしみ込ませた……。
「さあ、今度こそ、お前の爺さんの処に戻ろう、帰りも
大変だけどな……、後、トンチキの処にも顔を出さなきゃな、
俺とお前に用があるんだと、なーに、教団本部の時も助けに
来てくれたし、市場のおばさんが言ってた様に本心は悪い奴
じゃないんだよ、きっと……」
「うん、大丈夫だよ!二人なら!これからも一緒に頑張ろうね、
えへへ!」
ジャミルとアイシャは、再びツーソンの町までの道を
歩き出すのであった。
「おじいちゃん!!」
「……アイシャ、おお、アイシャ……!!」
ジャミルは漸く、アイシャを爺さんのいるツーソンの
幼稚園まで送り届ける。孫と祖父は再会を喜び合い
抱き合うのであった。
「おお、おお、本当に無事で良かった……、ジャミルさん、
本当に有難うございます……」
「俺は別に……、へへ……」
「アイシャー!」
「おねえちゃまー!」
「……あいちゃー!」
「みんなも……、ただいまっ!」
幼稚園の子供達も皆、アイシャの側に寄ってくる。アイシャは
心から喜んで子供達をハグするのであった。
「あいちゃ、もうどこにもいかないでね……」
「アイシャはおれにとって……、おっかさんのような
そんざいなんだ……、アイシャがいないあいだ、いままで
がまんしてたんだ、またいなくなったら……おれ、おとこ
だけどないちゃうぞ……」
「おねえちゃま~……」
子供達の声を聞いて、アイシャの心が痛みだす、……しかし自分は
ギーグを倒すべき選ばれし少年少女、……その事を、ちゃんと
祖父にも、子供達にも、今伝えねばならなかった。
「おじいちゃん、みんな……、ごめんなさい、聞いてほしいの、
私は……、この人と一緒に旅に出ます……」
「何と……!?」
「ええええーーっ!?」
アイシャの発言に、爺さんも子供達も声を張り上げる。
そして……、園児の1人がジャミルの方を見た……。
「わかった、アイシャは……、こいつとかけおちするんだ……」
「……ハア?」
ジャミルが目を点にする。そして、他の子供達も皆一斉に
ジャミルの方に視線を向けた。
「まあ!いいひとだとおもっていたのに!さいしょから
アイシャおねえちゃまをつれていってしまうつもりだったのね!
なんてこと!」
「アイシャはおれのおっかさんだ、ゆるさねえぞ……」
「あいちゃはわたさないわよっ!!」
「……おいおいおい、何でそうなるんだあ~……」
「……違うのよー!みんな、落ち着い……」
「みんな、かかれええーーっ!!」
「じばくしろーーっ!!」
「……うわぎゃああああーーっ!!」
アイシャが子供達を止める前に……、子供達がジャミルに
飛び掛かって行き、ジャミルをフルボッコにする……。
「……みんなやめなさああーーーいっ!!」
「……」
アイシャが子供達を大声で怒鳴ると、子供達もジャミルを
殴るのをやめ、アイシャの方を見た……。
「なんでとめるんだよ、アイシャ……、こいつはアイシャを
さらおうとしたわるいやつじゃないか……」
「……だからっ!何でそうなるっ!!」
「本当に違うのよ、……皆、おじいちゃん……、話を聞いて
ほしいの……」
「アイシャ……」
アイシャは祖父の元に行き、……ちゃんと真実を話し始めた。
……自分は悪のギーグを倒す為、選ばれし少年少女の1人と
いう事、この地球にはもうすでにギーグの魔の手が迫って
いる事、地球の危機を救うため、ジャミルと力を併せ、
共に戦うのだという事を……。
「アイシャ、何という事じゃ、……お前のその力は、やはり……、
すべてはこの日の為に……授かった力だったのかもしれぬな……」
「うん、……おじいちゃん……」
しかし、まだ状況が良く掴めていない子供達は……、アイシャに
抗議し始めるのだった。そして、その怒りの矛先はジャミルへと、
とばっちりが行く。
「なんでアイシャがいっちまうんだよー!おれはぜったい
いやだ!アイシャがいなくなるのは!やっぱりわるいのは
こいつだよ!!やっつけるぞ!!」
「そうよ!あたちだっていやよっ!」
「……うえええーん!あいちゃー!!いやだよーー!!」
「だから……、勘弁して下さい……」
悪者にされ……、ジャミルはバツが悪くなり、その場からもう
逃走したい気分であった……。
「みんな……、本当にごめんね……、でもね、このままだと、
地球が悪い奴に乗っ取られてしまうのよ……、お外で遊べなく
なってしまうの、そんな怖い世界……、みんなだって嫌でしょう……?
だから、私はみんなの笑顔を守るために、ジャミルと戦いに
行くのよ……」
「……」
子供達が再び全員でジャミルの方を見る。
「おまえ、ほんとうになにもたくらんでないんだな……?
あ、あんなこととか、こんなこととか……」
「まー!はれんちねえっ!!」
「えっち!!」
「……だからっ!何でそう言う方向に行くんだっ!!その考えは
捨てんかい!!たくもう~、最近のガキは……」
「本当よ、何もないわよ……、これだけは約束するわ、
全部終わったら、私、絶対みんなの処に帰ってくるわ、
ね?だから、ジャミルと私を信じて……」
アイシャが子供達を再びハグする。アイシャの身体から
漂う、ふんわりと甘い優しい香りが子供達を包み込み、
……子供達も涙する。
「わかったよ、おれ……、しんじてちゃんといいこでまってる……、
ううう、おっかさん……」
「……おねえちゃまーー!!」
「あいちゃーー!!」
「みんな……、有難う、ごめんねごめんね……」
その日、幼稚園では……暫くの間、近所に聞こえるぐらい
園児達の大号泣が響き渡った……。
「……みんな、やっとちゃんと寝てくれたわ……、泣き疲れ
ちゃったみたい……」
「な、何か……、マジで俺、悪かったみてえだな……」
「ううん、元々いつもはお昼寝の時間だもの、いいのよ……」
「ジャミルさん、先程はどうも……、子供達が……、
本当に失礼な事をしまして、申し訳ない……」
爺さんが謝りながらジャミルに近づいてきた。……ジャミルは
子供達に襲撃された頭の数発のコブを摩りながらも、笑顔で
爺さんに返事を返す。
「いいよ、別に……、慣れてっからよ……」
「……しかし、実を申しますと……、儂も最初……、あなたの事を
本当は信頼しておりませんでした……」
「おじいちゃん!!」
「……」
「今まで、テレビ局等……、沢山の輩がこの子の力をネタと
金にしようと……毎日の様に幼稚園に押しかけて来ては……、
見世物の様に……、儂もこの子ももう、疲れ果てておりましてな……、
うんざりしとったんです……」
爺さんが重い口を開くと、アイシャもそれきり黙って
下を向き、口を開かなくなってしまった……。
「……しかし、あなたは危険を顧みず、命懸けでアイシャを
助けに悪者達の巣に飛び込んでくれた……、こんなに傷だらけに
なってまで……、こんな方に感謝せずにはおらんでしょうて……、
やはりあなたは地球を救うため、選ばれた大切な方なのだと……、
理解致しました……」
爺さんがジャミルの顔に残った薬でも完全に消えにくく
なってしまった生々しい傷跡を見て理解したのだろう。
そして、頭を下げ、ジャミルに頼み込む……。
「ジャジャ馬でお転婆で我儘で……、どうしようもない
孫ですが……、アイシャをどうか宜しくお願い致します……」
「爺さん……、止めてくれよ、俺の方こそ……」
「おじいちゃんっ!あははっ!ありがとうっ!!」
「但し……」
爺さんが急に血相を変え、又ジャミルの方をじっと見た……。
「……アイシャはまだ子供です、……これに関しては……、
別の話ですので、儂はまだ認めた訳ではないです……、
どうかくれぐれも、孫には手を出さん様に……、宜しい
ですかな……?無事に旅を終え、孫が戻ってきたら……、
なんと儂にひ孫がいた……、ああ、びっくリ!!
……なんていう事のない様にして下されよ……」
「おじいちゃんたらっ!……ンモーーッ!!」
やや、痴呆気味かとジャミルは心配していた物の……、
やはり子供達同じく、可愛い孫が狼に汚されぬか、
ご心配なようで……、其処だけは非常に……とても
しっかりしていた。
「……勘弁しておくれやす、……とほほのほお~……」
……そして、夜……。
ジャミル達は明日、ツーソンでの最後の用事と買い物を
済ませる為、幼稚園に泊まる事に。……ジャミルは
疲れこけてもうすっかり部屋で眠ってしまっていた。
「お休みになられたかの?」
「うん、もうぐっすり……、ジャミル、本当に頑張ってくれたの、
私の為に……」
「分っておるよ、但し、それとこれとは……」
「おじいちゃんたらっ!その話はもういいのっ!座ってて、
ほらお茶淹れるから!!」
「むうう~……」
アイシャが祖父を無理矢理椅子に押しこくり、自分はお湯を
沸かしに台所へ入って行った。
「さあ、どうぞ、熱いから気を付けて……」
「すまんのう、……アイシャ、これは……お茶の中に
虫が入っておる、これは糞ムシじゃ」
「!!やだ、いつの間に!!もう~!!お茶っ葉、古いの
全部捨てた筈なのに!!」
「相変わらず……、そそっかしいのう、お前は……、
誰に似たのやら……」
「間違いなくおじいちゃんです!はいっ、淹れなおしたわよ!」
「……むうう~」
祖父は複雑そうな顔をしつつも、孫が淹れてくれたお茶を
美味しそうに飲み干した。
「ああ、美味かった……、実はの、アイシャ……、儂もお前に
話がある」
「えっ……」
「お前もこれからの旅の間……、子供達の事が心配じゃろう、
だから、儂も園で保母さんのバイトをとる事にしたんじゃよ、
明日面接に来てくれる予定じゃ」
「それって……」
「儂は以前から、自分の合間を縫っていつも子供達の面倒を
見てくれたお前に感謝しつつも心は申し訳ないと思っておった、
しかし、この様な日が来るとはの……、いつまでもお前の
力を借りていては駄目だと言う事じゃ、行っておいで、アイシャ……、
園の事は何も心配せんでええよ……」
「うん、……おじいちゃん、有難う……、おチビちゃん達にも
言った様に……、私、すべてが終わったら絶対戻って来るよ……、
絶対に……」
「うむ、しかしのう……、やはり心配ではあるが……」
「……何がよっ!いつまでも同じ事ほじくり返してると
本当に痴呆になるわよっ!ほら、お茶のおかわりっ!!」
「むうう~……」
その日の夜、孫と祖父は園での最後の夜の一時を
過ごしたのであった……。
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