霊能探偵・芥川九郎のXファイル(2)【呪いのDVD編】

第1章 呪いのDVD

 霊能探偵・芥川九郎は友人の牧田と共に、事務所で客人・古谷と話していた。古谷は牧田の知人で、名古屋市内の大学等で講師をしている文学研究者の男性である。
芥川「古谷さんのお話は理解できたんですが・・・古谷さんは本当に、その呪いのDVDの噂を信じているんですか?」
芥川は古谷を問い質した。牧田は神妙な面持ちで考え込んでいる。
古谷「芥川さん、信じてください!ただの噂話ではないんです。このDVDを見た学生が、本当に死んでしまったんです。」
芥川「しかし、DVDを見た学生がたまたま、心筋梗塞で亡くなったという可能性もあります。むしろ、そう考えるのが普通でしょう。」
牧田は相変わらず黙ったままで、真剣に考え込んでいる表情だ。
服部夫人「みなさん、コーヒーをお持ちしましたよ。」
 服部夫人がコーヒーを持って来てくれた。服部夫人は芥川の叔母さんだ。芥川の事務所の隣は服部税理士事務所で、服部夫人はその税理士先生の奥方である。服部夫人は、暇な時に芥川事務所の清掃やら来客対応やら電話番やら、いろいろ世話を焼いてくれるお人好しなご婦人なのである。芥川が外出する時には、留守番をしてくれることもある。
 コーヒーを飲みながら、牧田がようやく口を開いた。
牧田「古谷さんのお話が本当なら、昔の映画みたいですね。『リング』の貞子がテレビ画面から出てきて、人を呪い殺す・・・」
芥川「あぁ、知っているよ。有名な映画だからねぇ。ホラー映画の金字塔とも言うべき名作だよ。じゃあ、そのDVDをダビングして誰かに見せれば・・・」
古谷が思い詰めた表情で言った。
「ダメです!私のために他人を犠牲にするなんて。このDVDが私のところに来たのは運命だと思うんです。私のところで、この呪いの連鎖を止めなければ・・・」

第2章 作戦会議

 芥川は感心して言った。
芥川「いや、失礼しました。ただの学者先生だと思ってお話を聞いていましたが、まさかそこまで思い詰めて、覚悟をしていたとは。」
牧田も真剣な表情で言った。
牧田「芥川君、君の霊能力でこの事件を解決できないかな。君は霊能探偵なんだから。」
芥川は笑って言った。
芥川「ハハハッ!そんなに大袈裟に考える必要はないと思うよ。相手は1人で、こちらは3人だ。テレビ画面から出てくると分かっているんだから、出てきたところを袋叩きにすればいいんじゃないかな。」
牧田が目を白黒させて言った。
牧田「袋叩きって・・・悪霊をかい?」
芥川「牧田君は元警察官で、元同僚である現職の刑事・京子と親しいんだから、拳銃を用意できないかな?」
牧田「無茶を言うなよ。そんな理由で拳銃を用意できるわけないだろう。そんなことで拳銃を持ち出した上に、発砲なんかしたら大問題になるよ。大体、拳銃で悪霊を退治できるのかい?」
古谷「悪霊を退治できる武器みたいなものはないんでしょうか?神聖な霊剣とか。」
芥川はしばらくの間、腕を組んで考え込んでいたが、何か思い付いたようだった。
芥川「よし、武器は僕が用意しよう。3人分。とりあえず、時間と場所を決めてしまおう。」
古谷「時間は決まっています。私がDVDを見てから1週間後ですから、今度の土曜日の午後9時です。」
牧田「場所はどうしようか?テレビがある部屋じゃないといけないね。」
古谷「私の部屋でよければ、準備しておきます。」
芥川「よし、決まりだね。各自、お酒とか食べ物とか持ち寄って、楽しくやろうじゃないか!」

第3章 土曜日の晩酌会

 土曜日の午後6時過ぎ、芥川と牧田は古谷のマンションを訪れた。古谷の部屋は男の一人暮らしにしては、きれいに片付けられていた。三人はリビングで早速、宴会を始めた。持ち寄った総菜やお菓子を食べながらの晩酌だ。ビールを飲みながら古谷が芥川に聞いた。
古谷「ところで、芥川さん。武器は用意できたんですか。」
芥川は酎ハイを飲みながら答えた。
芥川「えぇ、見てください。鉄パイプを3人分、用意してきましたよ。」
牧田は日本酒を飲みながら言った。
牧田「鉄パイプなんかで悪霊を退治できるのかい?まぁ、僕たちは霊能探偵がいるから、大船に乗った気持ちなんだけど。」
芥川「信じる者は救われる・・・か。ハハハッ!」
 そんな話をしながら晩酌をしていたら、あっと言う間に時間が過ぎて、もうすぐ午後9時である。9時になると古谷のスマホが鳴り響いた。古谷は一気に酔いが醒めたようで、青い顔で芥川に聞いた。
古谷「芥川さん、電話です!きっと悪霊からです・・・どうしたらいいんですか!?」
芥川「そんなの・・・ほっときゃいいんですよ!」
芥川は完全にできあがっていた。

第4章 芥川の霊能力(必殺の鉄パイプ)

 その時である。テレビの電源が突然オンになり、画面の中の恐ろしい形相の女が、ゆっくりこちらへ近付いてくる。
牧田「芥川君、悪霊だよ!」
芥川は牧田と古谷に鉄パイプを手渡して言った。
「来るぞっ!みんな、油断するな!!牧田君、テレビの横でスタンバって、出てきたところを打ちのめせ!!!」
やがて、テレビ画面から悪霊が出てきた。
牧田「ううぅっ・・・」
古谷「ヒェエーー!!」
牧田は金縛りで動けないようだ。古谷は恐怖で固まっている。芥川は鉄パイプを構えると、悪霊に向かって跳び込んだ。
芥川「キィェエエーーーーーイッ!!!」
芥川は悪霊の頭めがけて、フルスイングで鉄パイプを打ち込んだ。
 ブゥウウーーーーーンッ!!バキッ!!!
 悪霊の頭蓋骨が砕ける音が響き渡った。
悪霊「ギャァアアーーーー!!!」
悪霊はその場に倒れてしまった。
悪霊「おぉ・・・のぉ・・・れぇ・・・・・・」
悪霊は力尽き、その体はどす黒い液体になってしまった。
牧田「退治・・・したのかい?その鉄パイプで・・・」
芥川「うん。この鉄パイプは事前に、除霊のために特殊な処理をしてきたんだよ。いずれにせよ、最後は必殺の覚悟が物を言うんだと思うよ。」
古谷「あ・・・ありがとうございました。」
呪いのDVDの恐怖から解放された古谷は、ようやく安堵した表情で芥川に礼を言った。
芥川「さぁ、まだ食べ物とお酒が残っているから、この汚い液体を片付けてから、宴会を再開しようじゃないか!」
芥川はまだ、酔いから醒めていないようだった。

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(2)【呪いのDVD編】

霊能探偵・芥川九郎のXファイル(2)【呪いのDVD編】

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-03-29

CC BY
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  1. 第1章 呪いのDVD
  2. 第2章 作戦会議
  3. 第3章 土曜日の晩酌会
  4. 第4章 芥川の霊能力(必殺の鉄パイプ)