霊能探偵・芥川九郎のXファイル(1)【ボインボインドッピュンシール編】
第1章 芥川霊能探偵事務所
芥川九郎は霊能探偵である。名古屋市中区にある古びたビルの一室に事務所を構えている。不思議な霊能力を駆使し、妖怪事件を華麗に解決・・・と言いたいところだが、怪奇事件など滅多に起こるものではない。
芥川「あぁ、暇だねぇ、牧田君。どこかで何か、おもしろい事件でも起こらないかなぁ。」
牧田は芥川の古い友人である。愛知県警の敏腕刑事だったらしいが、数年前に退職し、今はしがないフリーランスである。
牧田「おもしろいかどうかは知らないけど、京子からまた、変な依頼が来ているよ。」
京子は牧田の元同僚で、今も美人刑事として愛知県警で活躍している。
芥川「変な依頼?おもしろそうじゃないか!」
牧田「君はボインボインドッピュンシールを知っているかい?」
芥川「あぁ、名前だけは知っているよ。今、若い女性の間で大流行しているそうじゃないか?」
牧田「ただのシールなんだけどね・・・ただのシールがなぜ、若い女性の間で大流行しているんだろう?」
芥川「・・・何か裏があるのかい?牧田君、もったいぶらずに教えてくれないか。」
第2章 ボインボインドッピュンシールの謎
牧田「君はこんな話を知っているかい?刑務所の中で囚人同士が物資を融通し合う時に、タバコみたいなものが貨幣の代わりになるという・・・」
芥川「なんだい、昔の映画みたいな話を始めて・・・ははぁ、君はボインボインドッピュンシールが、売春とか薬物とか、何か違法な取引の媒介物として利用されていると考えているのか。」
牧田「僕じゃなくて、京子がそう考えているんだ。」
芥川「愛知県警の敏腕刑事のご推察か・・・で、彼女は僕らに何を依頼しようと目論んでいるんだい?」
牧田「栄の繁華街を巡回して、この謎を解いてほしいそうだ。」
芥川「繁華街をうろついて、解けるような謎なんだろうか?」
牧田「売春とか薬物とか、違法な取引でそのシールが流通しているなら、取引の現場を確認することさえできれば目的達成だろう。僕たちはもう警察官じゃないんだから、犯罪の摘発が目的じゃないんだよ。」
芥川「もう警察官じゃないのは、君だけだろう。僕は君と知り合うまでは、警察とは無縁の人生だったんだから。」
第3章 夜の繁華街でシールを探す妖魔
それから芥川と牧田は毎晩、栄の繁華街をうろうろ散歩することになった。名古屋の夜の街は、夜のお店の看板がきらびやかに光り、妖しい雰囲気を醸し出している。時折、能天気な酔っ払いが威勢よく話している大声が聞こえてくる。
芥川「あぁ、楽しそうだなぁ。焼き肉とか手羽先とか食べながら、お酒を飲みたいよ。美しい女性が相手をしてくれればもう、楽しくて仕方ないだろうねぇ。」
牧田「芥川君、遊びに来たんじゃないんだよ。僕たちは・・・」
芥川「・・・どうしたんだい?」
牧田の視線の先には、シール帳を抱えた妖しい女性が立っていた。
牧田「彼女を尾行しよう。」
芥川「元刑事の勘かい?確かに、ちょっと怪しい感じはするけれど・・・」
牧田と芥川は妖しい女の尾行を開始した。女はうつむきながら、ふらふら歩いている。酔っ払っているのだろうか?ぶつぶつつぶやきながら、何かを探しているようにも見える。
女が突然、立ち止まった。牧田と芥川も急いで立ち止まったが、完全に不意を突かれた形だ。人通りのない裏通りである。女が何か、ぶつぶつつぶやいている。
女「995枚・・・996枚・・・997枚・・・998枚・・・999枚・・・・・・」
女が振り向き、ものすごい形相で絶叫した。
女「1枚・・・1枚!1枚!!1枚、足りなぁあーーーいっ!!!」
女は人間ではなかった。ボインボインドッピュンシールに執着する恐ろしい妖魔だったのだ。
第4章 芥川の霊能力(退魔の法術)
妖魔が牧田に襲いかかった。
妖魔「シールを・・・私のシールを返せぇえええ!!」
牧田「うわぁあーーー!!」
芥川「牧田君!下がるんだ!!悪霊退散!!!」
芥川はとっさに退魔の法術を繰り出した。
妖魔「ギャアァーーー!!!」
妖魔は煙のように消えてしまった。青い顔をした牧田が芥川に聞いた。
牧田「やっつけたのかい?」
芥川「いや、逃げられたみたいだ。」
芥川と牧田は近くのコンビニに立ち寄り、ホットコーヒーを買った。コーヒーを飲みながら牧田が芥川に聞いた。さっきまで青い顔のまま考え込んでいたが、ようやく落ち着いたようだ。
牧田「あの化け物は一体、何だったんだろう?」
芥川「ボインボインドッピュンシールに執着していた女性が事件か事故で亡くなり、その未練が原因で悪霊になってしまった。そして、そのすさまじい執着が、ただの悪霊を恐ろしい妖魔にしてしまったんだろう。」
牧田「あの妖魔は今もどこかで、失くしたボインボインドッピュンシールを探しているんだろうか?」
芥川は肩をすくめて答えた。
芥川「さぁ・・・いずれにせよ、妖魔の件も、ボインボインドッピュンシールの謎も未解決のままだよ。」
牧田はため息をついて言った。
牧田「京子に連絡して、ボインボインドッピュンシールの件は断るよ。あんな恐ろしい目に遭うのは、もうごめんだよ。」
霊能探偵・芥川九郎のXファイル(1)【ボインボインドッピュンシール編】