かぞくのきもち
Ⅰ
「うー」
「な……」
唐突な。
「何ですか、ユイフォン」
「見てる」
「それは」
わかっている。
「何か顔についてます?」
ふるふる。
「じゃあ」
何なのだ。
「アリス」
「は、はい」
「アリスはなんでアリス?」
「………………」
答えようが。
「えーと」
思わず。
「なんででしょう」
「アリス、アホ」
「なんでですか!」
さすがに。
「もう、いい」
ぷいっ。
「なっ……」
どういうことだ。
「ユイフォン」
それでも。怒る気には。
元々、つかみづらいところはあるのだ。
(けど)
自分たちは。
(友だち)
なのに。
(言えない)
心の。中。
(だって)
言えるはずが。
「うー」
頭を。
「どうしよう」
弱り切り。
「ううう」
涙。
「やだ」
それは。
「嫌われたくない」
だって。
「友だち」
だから。
Ⅱ
「ジュオ」
「おう?」
じー。
「な、なんだ」
「ジュオ」
はっきり。
「似合ってない」
「おう!?」
ショック。
「そうなのか」
「そう」
きっぱり。
「ジュオ、デカい」
「お、おう」
「ぱっつんぱっつん」
学生服が。
「なんだか、セクシー」
「おう!?」
隠そうと。
「セクシー」
かえって。
「お……!」
ビリィィッ!
「……う……」
まさか。
「破れた」
指摘。
「お尻」
「おう……」
認める。
「恥ずかしい」
言われるまでもなく。
「どうするの?」
「ど……」
どう。
「情けない」
わかって。
「脱いで」
「おう!?」
なんと。
「恥ずかしい」
脱ぐほうが。
「脱いで」
じりじり。
「お、おう……」
追いつめ。
「早く」
「い、いや」
「『おう』って言った」
OKでは。
「何してるの」
にこやかに。
「お……」
さらなる。
「う、柚子(ゆこ)」
にこにこと。そこに。
「う?」
いつもと。違う。
「ジュオ君」
前に。
「座ってください」
圧。
「お……」
逆らえず。
「ジュオ、怒られてる」
指摘。
「ユイフォンちゃん」
「う?」
「ユイフォンちゃんも座ってください」
「う!?」
驚愕。
「な、なんで」
あり得ない。
「ジュオが悪い」
なのに。
「ジュオがお尻――」
「おおう!」
それは。
「二人とも」
にっこり。
「お……」
「う……」
正座。
「あ、あの」
そこへ。
「どうしたんですか」
驚きの。
「あ……」
我に。
「ううん、何でもないから」
言って。
「あ」
行って。
「……えーと」
困惑の。
「何が」
あったのか。
「ううう」
「ユイフォン!?」
目に。
「な、なんで」
「う!」
ぷいっ。駆け去る。
「あっ」
追いかけようと。
「……あ」
もう一人。
「ジュオ」
おそるおそる。
「とりあえず、立ちませんか」
「………………」
立たない。
いや、立てない。
「あの……」
腕を。
「ほら」
「お……」
見た目からは。意外と言えるほど力強い。
「ま、待て」
「でも」
ぐいぐい。
「う……お……」
体格で。はるかに勝ってはいるものの。
「いつまでも座っているわけには」
それはそう。だが。
「ジューオっ!」
ポーーン! 大きなかぶ状態。
「!?」
ビリィィィッ!!!
「え?」
完全に。
「いまのって」
「………………」
見られないよう。手で押さえつつ。
「な……何でも」
ある。
「お尻が」
「!」
もう。
「おおおおおおおおおおおおっ!」
「あっ、ジュオ! 待ってください、ジュオーーーーっ!」
Ⅲ
コンコン。
「入りますよ」
中に。
「はい、特別サイズです」
「……おう」
大きな身体を。縮こまらせ。
「すまない」
「なんでですか」
軽く。怒ったように。
「家族なんですから」
「………………」
はにかむ。よう。
(そうですよ)
自分たちは。
(だから)
放っておけない。
「あの」
「おう?」
「ユイフォンのことなんですが」
首を。けげんそうに。
「それなら」
中庭を。
「白姫(しろひめ)と一緒に」
「そうですか」
一礼。
「ありがとうございます」
「おう」
やはり。けげんそうなまま。
「な……」
あぜんと。
「ぷりゅー」
「うー」
サングラス。共に。
「なに見てんだし」
「えっ」
「なに見てんだって言ってんだしーっ!」
パカーーン!
「きゃあっ」
容赦なく。
「な、なんでですか!」
意味が。
「なめんじゃねーんだし」
「ええっ」
どういう。
「なめられたら終わりなんだし。アリスなんかに」
「アリスなんかに」
「だから、なんでなんですか! ユイフォンまで!」
たまらず。
「おかしいですよ!」
「アリスのほうがずっとおかしいし」
「アリス、アホ」
「そういう意味じゃないです!」
そんなことより。
「どうして、いきなり不良になっちゃってるんですか!」
「なるんだし」
「なんでですか!」
わけが。
「ユイフォンのためだし」
「えっ」
思いがけない。
が、すぐ。
「ためにならないですよ、悪いことなんて!」
「なるんだし」
ゆずらない。
「うー」
敵意に。満ちた。
「な……」
なぜ。
「お、落ちついてください、ユイフォン」
「落ちついてる」
言って。
「仲いい」
「へ?」
「なんで」
「なっ……」
何が。
「ぷりゅ!」
ピン! 耳を。
「アホだからかもしれないし」
「う!」
「アホじゃないです!」
抗議するも。
「アホだと、なんで?」
「優しい子だからだし。むしろ、アホだから放っておけないんだし」
「なるほど」
「納得しないでください!」
何がなんだかわからないながら。
「ユイフォンもアホになるんだし!」
「う!?」
「ただのワルじゃなくて。頭もワルに」
「う……うう」
さすがに。な。
「アリスみたいな……アホ」
がくっ。
「できない」
「しょーがないし。アリスのアホはレベル高すぎるし」
「高すぎる」
「高すぎません!」
なんてことを。
「大丈夫なんだし。ユイフォンもそこそこアホだから」
「ア、アホじゃない」
とことん、ひどい。
「うー」
こちらを。またも。
「調子に乗ってる」
「ええっ」
なぜ。
「う!」
「あっ」
行かれて。
「ユ、ユイフォン」
途方に。
「あの、白姫」
おそるおそる。
「ユイフォンは何を」
「知らないしー」
あきらかに。
「そんないじわるを言わないで」
「なんだし? シロヒメがいじわるしてるってゆーんだし? いじめっ子だってゆーんだし?」
「そ、それは」
これでもかと。
「とにかくやめてください、ユイフォンで遊ぶのは」
「わかったし」
わかってくれれば。
「じゃー、今度はジュオで遊ぶしー」
「ええっ!?」
そういうこと自体を。
「逆らったら、ヨウタローに言いつけるんだしー」
「やめてください!」
完全にいじめだ。
(それにしても)
気になるのは。
(どうしちゃったんですか)
いけない。このままでは。
その思いだけは。
Ⅳ
「柚子」
真剣な。
「アリスちゃん?」
「ちょっと、いいですか」
首を。
「いいけど」
「よかったー」
心から。
「どうしたの」
「あ、いえ」
それを聞きたいのは。
「ああ……」
わかったと。
「昨日のことかー」
「はい」
頭を。
「ごめんなさい」
「えっ」
「ユイフォンとジュオが迷惑をかけてしまって」
「………………」
かすかに。
「迷惑かー」
「はい」
「あのね」
口を。
「………………」
「柚子?」
「あ、ううん、なんでも」
ごまかすように。
「けど、二人っていつも一緒だよねー」
「えっ」
「ほら、ジュオ君とユイフォンちゃん」
「ああ」
それは。
「できれば」
言いづらそうに。
「クラスの他のみんなとも仲良くしてほしいんですけど」
どうしてもというか。
まだまだ、周りの『普通の』生徒にとけこめないところがあって。
「自分が」
もっと。力に。
「ううん」
察したように。
「アリスちゃんはがんばってるよ」
「そうでしょうか」
「そうだよ」
優しく。
「そうですよね」
力をもらい。
「自分、がんばらないとですよね。家族のことなんですから」
「………………」
またも。複雑な。
「うー」
「きゃっ」
じーっと。いつの間にか。
「仲良くしてる」
「えっ」
「柚子と」
「それは」
友だちだから。
「仲間外れ」
ううう。
涙。
「ユイフォン、仲間外れ」
「ええっ!」
そんな。
「何を言ってるんですか、ユイフォン!」
「やっぱり」
しょぼん。
「ユイフォンがユイフォンだから」
「え……」
どういう。
「う!」
またも。
「いっ、行かないでくださぁい!」
行かないで。ちゃんと。
話してほしい。
家族として。
「あ、あの、柚子」
「うん」
わかってる。そう。
「すみません」
頭を下げ。後を追う。
「………………」
そんな姿に。
「家族かぁ」
つぶやき。
「ふぅ」
こつん。頭を。
「う」
「おぉう!?」
刃。
「ジュオが悪い」
「おう?」
「ジュオのせいで」
ううう。
「嫌われた」
「……!」
「柚子に」
それは。
「昨日の」
「う」
うなずき。
「ユイフォンまで嫌われちゃったらどうするの」
「っ」
「思ってたら」
ふるえる。
「やっぱり……」
「待ってください!」
そこへ。
「そんなことありません!」
大きな。声で。
「うー」
信じられないと。
「じゃあ、なんで」
迫る。
「怒られたの」
「えっ」
「ユイフォンまで」
「そ、それは」
言葉に。
「ユイフォン、悪くない」
「は、はあ」
「悪いの?」
聞いた。限りでは。
「悪くないと」
思う。
「ジュオが悪い」
「そんな」
言い切るのは。
「家族じゃないですか」
「う」
うなずくも。
「柚子、家族じゃない」
「えっ」
けれど。
「友だちですよ」
そのことは。
「友だちは、怒るの?」
「それは」
ない。とは。
「媽媽(マーマ)、ユイフォンが悪いことしたら怒る」
「は、はい」
自分のほうが年下でも。
「やっぱり」
沈む。
「悪いことしたから」
「い、いえ」
何と。
「じゃあ、柚子が悪い?」
「ええっ」
思いがけない。
「柚子、悪くない」
「そ、そうです」
あわてて。
「だから」
ますます。
「ユイフォンが」
そのとき。
「違う」
はっきりと。
「俺だ」
「ジュオ!」
何を。
「俺のせいで」
「ち、違いますよ!」
こうなると。もう。
「やっぱり、ジュオのせい」
「ユイフォン!」
どうしようも。
「いいかげんにしてください!」
強引に。
「家族なんですよ!」
「うー」
不満げな。
「知らない」
「あっ」
またも。
「待ってください、ちゃんと話を」
ずるぅっ!
「きゃあっ」
バナナの皮? トラップ!?
「きゃっ」
キャッチ。
「あ、ありがとうございます、ジュオ」
「おう」
当然と。
「ふーん」
「あっ」
そこに。
「柚子」
あせあせ。
「ごめんなさい、柚子にも心配を」
「………………」
「柚子?」
何か。
「お姫様だっこかー」
「えっ」
確かに。そんな。
「けど、ジュオは弟ですし」
「ふーん」
「あ、いえ、弟にこんなことしてもらうなんて変ではありますけど」
「変かー」
どこか。それは。
「あの……」
「何?」
「え……っと……」
こちらが。
「何もないなら、行くね」
「あっ」
あっさり。
「柚子……」
やはり。
「怒って……るんでしょうか」
「おう……」
わからなかった。
Ⅴ
「家族会議です」
考えた末。
「お……」
当惑の。
「会議か」
「会議です」
くり返し。
「会議なんですよ」
ふんす、と。
「………………」
ますます。
「何を」
当然の。
「それは」
言葉に。
「と、とにかく、困ったときは家族会議なんです」
「そうなのか」
「そうなんです」
引かない。
「さあ!」
言われても。
「ジュオに意見はないんですか」
「い、意見」
唐突すぎる。
「俺は」
胸を。自然と。
「花房(はなぶさ)……樹央(ジュオ)だ」
「そうです!」
力強く。
「だから」
拳を。
「家族だ」
「はい」
「………………」
「……えっ」
あぜんと。
「終わりですか?」
「……おう」
すまなそうに。
「い、いえ、いいんです。気持ちは伝わりましたから」
フォローするも。
(会議……)
さすがに。
(じゃないですよね)
いや。自分が。
「提案します」
手を。
「えーと」
言っては。みたが。
「姉貴……」
「ご、ごめんなさい」
正直に。
「あっ」
そうだ。そもそもは。
「ユイフォンです」
「おう」
それは。
「ユイフォンのことを」
何とか。するには。
「その……」
どうすれば。
「俺が」
すると。
「悪いから」
「ち、違いますよ」
また。
「ジュオもユイフォンも悪くありません」
だから。
「話し合いましょう」
それしか。
「ユイフォーン」
声を。
「降りてきてくださーい」
返事は。
「ユイフォン……」
何も。
「俺が」
「えっ」
木に。
「だ、大丈夫なんですか」
「おう」
「得意なんですか、木登り」
「………………」
やはり。
「あの」
気を使いつつ。
「折れたら危ないですから」
「……おう」
おとなしく。
(となると)
自分が。
「行きますよ」
手を。
「姉貴」
大丈夫かと。
「任せてください」
家族のことなのだ。
「ユイフォーン」
ゆっくり。そばに。
「あのぉ……」
「ちゅんちゅん」
「………………」
目が。
「あ、あの」
「ちゅん」
「いや、その」
どういう。
「鳥」
「へ?」
「ユイフォンじゃなくて、鳥」
「……と……」
完全に。
「ユイフォン、鳥になる」
「……い、いえ」
ようやく。
「ユイフォンは鳥じゃないですよ」
「なる」
無理が。
「鳥なら嫌われない」
はっと。
「鳥だから」
「ユイフォン……」
こじらせて。
「あ、あのですね」
それでも。
「自分たち、会議を」
「しない」
すぐ。
「鳥だから」
「それは」
そうなのかもしれないが。
「って、だから、ユイフォンは鳥じゃないですよ!」
「なる」
「そんな……」
何と。
「ぷりゅーっ」
スパカーーン!
「あうっ」
飛来物が。
「ユイフォン!」
落下。それを。
「おうっ」
キャッチ。
「よくやりましたよ、ジュオ!」
そこへ。
「鳥、なめんじゃねーんだし」
「えっ!」
やってきたのは。
「何をするんですか、白姫!」
「蹄鉄投げたんだし」
「やめてください!」
どうやって? と、いまはそれより。
「どうして、そんな危ないことをするんですか!」
「ユイフォンが悪いし」
「えっ」
名指しされ。
「い、痛い……」
顔に。ヒヅメ痕の。
「やっぱり、ユイフォンが悪い……」
「ちょっ」
ややこしいことに。
「変なことを言わないでください、白姫!」
「何が変なことだし」
ぷりゅ。鼻を。
「アリスの変さにはぜんぜんかなわないし」
「う。アリス、変」
「って、なんでですか! ユイフォンまで!」
やはり、おかしなことに。
「ユイフォン!」
ぷりゅびしっ!
「ぜんぜんなってねーんだし!」
「う!」
ショックの。
「そんなことでユコに優しくしてもらえると思ってんだし?」
「う……」
自信なく。
「じゃあ、やっぱり不良に」
「あー……」
昨日のは。
「アホは無理……」
「確かに、アリスのアホにはかなわないし」
「アホじゃないです!」
やはり、ひどい。
「とにかく、鳥なめんじゃねんだし」
あらためて。
「自然の生き物には飾らない美しさがあるし。シロヒメを見てもわかるように」
「は、はあ」
「だから、かわいがってもらえるんだし。たかがユイフォンが簡単に鳥になんてなれないんだし」
「う!」
ショック。さらなる。
「い、いや」
最初から。
「じゃあ、どうするの」
「まかせるし」
「あの……」
嫌な予感しか。
「ぷーりゅもいないうみ~♪ はくばのあいをたしかめたくーて~♪」
(な……)
何を。
Ⅵ
「ぷりゅー❤」
「えっ」
放課後。道の真ん中。
「白姫ちゃん?」
「ぷりゅ」
うなずく。
「それに」
隠れるよう。
「ユイフォンちゃんも」
「う……」
おずおず。と。
「何してるの」
問いかけに。
「かわいがってる」
「えっ」
「白姫を」
言って。たてがみを。
「ぷりゅぅー❤」
うれしそうに。
「………………」
当惑の。
「……う」
反応のなさに。
「だ、だめ?」
「えっ」
「かわいがってる」
なでなで。
「……うん」
やはり。鈍い。
「ううっ」
耐えられない。
「うーーっ」
駆け出す。
「あっ、コラ、なに逃げてんだし! シロヒメ、置いてくんじゃねーし!」
ぷりゅーっ! いななく。
「ぷりゅはっ」
見られている。
「ぷりゅ❤」
愛らしく。
「……えーと」
戸惑いは。隠せないながら。
「………………」
心配そうに。
「だめじゃないですか!」
「ユイフォンが悪いんだし」
ぷりゅつーん。
「ふつーなら好感もたれるんだし。かわいいシロヒメをかわいがってたら」
「それは」
そうかもしれないが。
「ユイフォン……」
またも。木の上に。
「こうなったら、ホントに鳥になっちゃえばいんだし。ユイフォンの巣、作るし」
「なんてことを言ってるんですか」
無責任な。
「俺が」
そこに。
「話をつける」
「えっ」
それは。でも。
「いまは落ちこんでますから」
「違う」
頭を。
「話をつける」
「だから」
はっと。
「ひょっとして、柚子とですか」
「おう」
「え、えーと」
それは。
「だめ!」
木の上から。
「うー」
噛みつきそうな。
「ジュオ、嫌われてる」
「お、おう」
否定は。
「許さない」
うー。うなる。
「柚子のいやがること」
「ユイフォン……」
じんと。
「そんなに柚子のことを」
「う」
当然だと。
「友だち……だから」
かすかに。自信なさそうに。
「ユイフォンに優しくしてくれた」
「ですね」
「仲良く……して……」
ううう。ますます。
「もう……」
「そんなことありません」
強く。
「柚子はいい子なんです」
「う」
うなずく。
「だから」
嫌いになんて。きっと。
「……わかりました」
ここは。
「自分が行きます」
「う?」
「おう?」
二人に。
「自分が」
決意の。
「今度こそ何とかします!」
「勝負です!」
必勝。ハチマキに。
「……えーと」
完全に。
「何の?」
「柚子とです」
「じゃなくて」
ぱたぱた。手を。
「何の勝負をするのかなーって」
「それは」
言われて。
「そ、それは」
気合十分。なだけに。
というより「だけ」でこんな。
「アリスちゃん」
優しく。
「ユイフォンちゃんのことでしょ」
「はい」
素直に。というより情けなく。
「お願いです」
頭を。
「またユイフォンと仲良くしてあげてください」
「……うん」
どこか。煮え切らない。
「あの」
おそるおそる。
「本当にユイフォンのことを嫌いになっちゃったんですか」
「………………」
すると。
「嫌いなのは」
「えっ」
まさか。
「や、やっぱり嫌いなんですか!」
驚きあわて。
「きゃっ」
肩を。
「ちょっ、お、落ちついて、アリスちゃ――」
「う!」
風のように。
「きゃあっ」
尻もちを。
「え……!?」
現れたのは。
「うー」
仮面越し。
「シャドウセイバー」
名乗り。
凛々しく。
「レディ、助ける」
Ⅶ
「な……」
なぜ。言いたいところに。
「きゃあっ」
刃。
「や、やめてください! 危ないですよ!」
「危なくしてる」
それはそうなのだが。
「なんで、危なくするんですか!」
「いじめるから」
「えっ」
「レディを」
「ええっ!?」
とんでもない。
「柚子を!? いじめませんよ!」
「勝負って言ってた」
「あっ」
言った。
「そういう勝負ではなくて」
「どういう勝負?」
「えーと」
「あやしい」
「ええぇっ!?」
「斬る」
「えーーーーーーっ!」
そこに。
「ありがとう」
割って入る。
「もう大丈夫だから」
「うー」
本当? 言いたそうに。
「うん」
笑顔で。
「う」
鞘に。
「行って」
「えっ」
「見逃す。レディに免じて」
「って、自分が行くってことですか」
「行かないと」
柄に。
「わ、わかりましたよ」
あわてて。
「あの」
去り際。
「まかせて」
笑って。
「じゃあ……」
気がかりそうに。
「………………」
二人。
「えーと」
「シャドウセイバー」
「そうだね」
うなずいて。
「じゃあ」
「う?」
「聞いてもらおうかな」
「聞く?」
何を。
「友だちがね」
はっと。
「と、友だちが?」
ドキドキ。
「そのね」
言葉に。迷うように。
「わたし、怒っちゃったんだよね」
「う……!」
やはり。
「その子は何も悪くないのに」
「う?」
首を。
「悪くない?」
「うん」
「じゃあ」
なんで。
「それは」
困ったように。
「なんでなんだろうねー」
ごまかす。というより。
自分でも。
本当に。
「うー」
わからない。
「ごめんなさい」
あやまる。
「ううん、だから、そうしなきゃいけないのは」
と。はっと。
「う」
こちらも。
「ふーん」
笑っていない。笑顔で。
「何してるのかなー」
近づいていく。
「ジュオ君」
「お……」
「アリスちゃんも」
「えっ、いえ、あの」
あたふた。
「ジュオがここに隠れてのぞいていたので、自分も」
「のぞいてたんだー」
「ち、違……」
こちらも。
「その、やはり俺が」
「俺が?」
「………………」
蛇ににらまれた。そんな。
「情けない」
前に。
「斬る」
「え……」
隣で。一転。
「それはちょっと」
「う?」
なんで。
「だって……」
目線が。
「きゃっ」
動揺のためか。
足が。もつれ。
「――!」
誰より。
「っ」
抱きかかえられる。
「あ……」
お姫様だっこ。
「平気か」
「う、うん」
頬が。
「あっ」
そっと。あくまで紳士に。
直後。
「う」
「おう!?」
喉に。
「カッコつけてる」
「お、おう?」
「ヒーローがいるのに」
うー。悔しげに。
「そうだね」
「お……」
同意。
「ちょっと……カッコつけすぎかな」
しかし。それは。
「す、すまない」
縮こまる。
「ちゃんとあやまって」
ぎろり。
「ジュオのせいで」
じわり。
「また柚子に嫌われて……」
「えっ」
その言葉に。
「違うよ」
「う?」
「嫌いじゃないよ」
優しく。
「う……」
喜び。かけるも。
「そ、それはそう」
はっとして。
「シャドウセイバーだから」
言うと。
「う!」
消える。
「あ……」
驚く。間もなく。
「柚子」
素顔の。
「シャドウセイバーに聞いた」
もじもじ。
「嫌いじゃないって」
ちらり。
「それって……ユイフォンのこと?」
「うん」
うなずく。
「柚子ー❤」
うれしさに。
「ユイフォン、嫌いじゃない? 本当に?」
「友だちだもん」
「柚子~❤」
ますます。
「こ、これは」
あぜんと。
「解決……したんでしょうか」
「お、おう」
急な。展開に。
「ジュオ君」
「お……」
こちらに。
「わたしは」
言葉を。選ぶよう。
「クラスメイトです」
「お、おう」
「だから」
指を。
「何かあったらちゃんと言ってください」
「お……」
赤面。先日の醜態を。
「……う……」
それでも。
「すまない」
「じゃなくて」
そう。
「ありがとう」
頭を。
「どういたしまして」
微笑みの。
「お……」
頬を。再び。
「あ、あの」
さらなる。
「ジュオのことも……許してくれたと」
「んー」
にっこり。
「わたし、怒ってた?」
「えっ」
それは。
「怒ってたかなぁ」
「いえ、あの」
そう。
「えーと……」
言われて。しまうと。
「行こうか、ユイフォンちゃん」
「うー!」
大はしゃぎで。
「あ……」
行かれて。
「……これって」
途方に。
「よかったんですよね」
隣を。
「………………」
「ジュオ?」
「お……!」
あたふた。
「お、おう」
「……いや」
どう。
Ⅷ
「だから」
得意げに。
「ユイフォンと柚子、友だち」
胸を。
「ぷりゅー」
気に入らないと。
「ちょーし乗ってんじゃねーし」
「う?」
「ぜんぜん違うんだし!」
ぷりゅびしっ!
「ユコは友だちで『いてあげてる』だけなんだし!」
「う!?」
「ユイフォンががわいそうな子だからー。見てられないからー」
「そ、そうなの?」
がっくり。
「なんてことを言うんですか」
あわてて。
「ユイフォンをいじめるのはやめてください」
「いじめてないしー。ホントのことなんだしー」
「白姫!」
と。
「同じなんだし」
「えっ」
「ユイフォンがいまのままのユイフォンだったら」
ぷりゅびしっ!
「また同じことが起こってもおかしくないんだし!」
「う……!」
ショック。
「ま、また?」
「そーだし」
「どうしよう」
おろおろ。
「シロヒメにまかせるし」
「え……」
また。
「どうするの」
素直に。
「変わるんだし」
「変わる?」
「そーだし。もっとゆるぎなく」
ぷりゅり~ん❤
「シロヒメをかわいがんだし~❤」
「だあっ」
たまらず。
「なんでですか!」
「シロヒメをかわいがるのに理由がいんだし?」
「理由って」
「かわいいからなんだし~❤」
ぷりゅり~ん❤
「王道なんだし」
「王道?」
「雨の路地裏でふるえている馬に不良が傘をさしてあげんだし。好感度アップの黄金パターンなんだし」
「い、いや」
聞いたことはあるが。
「ぷりゅーわけで、ユイフォン」
「う」
「まずは不良になんだし」
「う?」
(また……)
こんなことに。
「どうやって?」
「ぷりゅあえず、軽くアリスしめんだし」
「う」
「って、なんでですか!」
チャキン。
「かっ、刀はやめてください! いじめとか超えちゃってますからーーーっ!」
「いい天気だねー」
「……おう」
二人。並んで。
「………………」
会話が。
「ジュオ君」
「お、おう」
あたふた。
「ふふっ」
笑う。
「変なの」
「おう?」
「いつもは違うのに」
「いつも?」
「うん」
空を。
「アリスちゃんやユイフォンちゃんといるときは」
「お……」
それは。
「家族……」
ぽつり。
「だから」
はにかむ。よう。
「ふーん」
こちらを。
「じゃあ、わたしは」
「お……?」
楽しむような。期待の。
「………………」
またも。
「ク、クラスメイト」
ようやく。
「そう……言っただろう」
「ふーん」
どことなく。
「ま、いっか」
それでも。
「ともかく、今日は」
にこっ。
「わたしだけのジュオ君だもんね」
「お……!」
「いつも、二人とばっかり一緒だからー」
言って。
「ほーら、こっちこっちー」
「お、おう?」
戸惑いの。
「待て……」
「待たないよー」
「おう!?」
完全に。
「な、なぜ」
わからない。それでも。
「おい」
追って。
それが。
「………………」
悪く。なかった。
かぞくのきもち