日向葵が咲いている。
1
――剣。何してるの?――
……?
――ほら、こっちに来たよ! うちのおばあが作ってくれたスイカがあるんだから!――
……日向……子?
――なに? いきなり名前なんか呼んで! スイカ、いらないの?――
……
――……あなたも、いなくなっちゃうの?――
……?
――早く来て。私がこの世界から消える前に――
「日向……子……」
ふと、目が開いた。
「……ねぇ、日向ちゃん。剣くん、困ってるよ、もうやめよ? ほらっ! あっちでみんなバーベキューやってるよ! 行こ?」
誰か――白純 百合が心配そうな声でもう一人に喋っている。
「百合! いいのよ、こいつは! 夢の中で人の名前呼ぶくらいだから! しかも! 普段からこういうこと、やられ慣れてるしね! ……ねっ、つるぎくん?」
もう一人――三ツ島 日向子は、人の悪い、しかしどこか憎めない、小悪魔のような笑みを僕、柄鞘 剣に向ける。
何を、見ていたんだろう。ぼんやりと夢のことを覚えている。
だが思い出そうとすればするほど、その記憶は遠のいて行くようだった。
「……日向子、大丈夫か」
「……えっ……?」
少しだけ残る気憶を頼りに、僕は、彼女に向かってそう呼びかける。
……日向子は心底意外そうな顔をして目を丸くしている。……無理もない。
「……大丈夫? 急にどうしたの?」
彼女に代わって、 今度は百合が呼びかけてくる。
「……ああ。 大丈夫、 でも少し頭が重いな……」
「ほらっ、日向ちゃん、剣くん、クタクタそうだよ。もうみんなでお肉、食べに行こうよ?」
そう百合から呼びかけられた日向子は、ハッと我を取り戻したようだった。
「いっつもおバカキャラの剣くんにそんなこと言われるなんて、調子狂っちゃうなぁ! じゃ、このままで食べに行こかー! 行こ、百合!」
「……おい。お前に言われたくないし、あとこれ、何とかしろ」
……どうやら、浜辺で昼寝していたら、砂で埋められていたらしい……。
「まっ! 普段の行いそのものよねっ!」
2
「……今日の海水浴、楽しかった人~!」
よく日に焼けた日向手の父が、右手を上げながら叫ぶ。
「は~い!」
百合が元気よく右手を上げる。
「はーい!」
続いて日向于が左手を上げる。
「……三ツ島さん、今日はありがとうございました。うちの分の食材費も賄ってもらってしまって……」
日向葵が咲いている。