まだ終わっていない過去を使者は語る

そして、役目を終えた使者は静かに時を超えてきた羽根を広げて帰っていった

私は使者に何て返事をすればいいのだろう

遠い昔の、過ちは繰り返しませんから・・というように言えばいいのだろうか

すぐそこにいたはずの人が語るように、使者は静かに過去を忘れぬようにと語りかけた

あなたは生きなければならない

死んではいけないのだと語りかけた

理由は、それが願いだからと

渚の鳥になった使者に、私は何て返事をすればいいのだろう

私は座標を知る事を試みるが、しかし思うようにはならない

沈黙のうちに全てを語った使者は二度と現れる事はなかった

私の脇に野次馬がいて、どうだ気分は・・と言わんばかりに私の顔を覗き見る

私は不愉快な思いを堪えつつ、また春が巡ってきたと言っては歩き出した

使者がいた場所には使者の残像が残っている

その静かな残像は今も私にまだ終わっていない過去を語りかける

未来という、くすんだ時間の訪れのヒントを知らせながら

野次馬が背中から、今日は春めいた日だったと言う

私は暖かな日差しのなかに風の冷たさを感じていた

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2026-03-09

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