海底都市
都会を泳ぐ魚になってみたい。
沈みゆく東京の、廃墟のようになった家々の隙間を泳ぎ回りながら、嘗てわたしをないがしろにした人間の家を渡り歩くのだ。その断末魔と、最後の表情を胸に焼き付けながら生き続けるのだ。そうして苦しみ続けなければならない。
人を憎むとはそういうことだ。
許さないかわりに、裁くこともできない。
愛しいひとの亡骸も、憎んだひとの亡骸も、すべて等しく埋める。忘れたい記憶を忘れる代わりに、大切な思い出も消える。等しく埋める。
人を憎むとはそういうことだ。
うしなう、とはそういうことだ。
死んだら、都会を泳ぐ魚になりたい。
誰からも忘れられた、名前のない魚に。
海底都市