『火の点かない煙草』
乱れた髪を撫でつけて
さっき迄の空気を消す貴方
『火の点かない煙草』
もうすぐ夜が明ける
この先もアタシはひとりで
夜明けを見続けるんだろう
貴方の気配もない部屋で
それでも一筋の光に縋り
他は何も見ようとはしなかった
片方の罪にするには遅すぎて
ただ目を伏せるばかり
貴方が与えてくれるなら
きっと毒でも飲み干すでしょう
心からそう思いながら
片方で殺意に似た激情を飼い慣らす
だって悪いのは貴方だから
香りくらい残してくれてもいいのに
そんなささやかな願いすら叶わないなら
残された手段は数少ないわ
だけど怖がりなアタシは
部屋に残された煙草を
コレクションに加えるしかない
また火を点けられなかったそれ
まるでアタシみたいに白いまま
何れ捨てられる運命でも一度くらい
火を点けられてみたかった
燃やされてみたかった
空っぽな夢を見続ければ
後に残るは愛に似た抜け殻
実態のないそれに今夜も
温もりを求めて手を伸ばす
「似ているならこれでいい筈なのに」
『火の点かない煙草』