映画『ほどなく、お別れです』レビュー
泣かせにくる映画かと思ったら、思わず泣いてしまう映画だったのがとても良かった。
本作では「共に生きていた」という事実が故人の遺された想いによって照らし出され、死ぬまで生きる人間同士の縁ないし絆が映し出されるのですが、その過程を描くドラマが向こう側とこちら側の狭間を行き来する中で淡々、粛々と行われる《葬式》という場所の有難さ、決められた《儀式》の救いを丁寧に捉えます。
そこで明確に打ち出されるのは本作の主役があくまで故人と遺族であるということ。
その間、主演のお二人も後景に退き、ただただそれを見守るのですが、その在り方が遺族の内で荒れ狂う感情の奔流を受け止める防波堤のように見えて、その仕事の大切さをしっかりと表している。そのバランス感覚の良さは、死を扱うストーリーにありがちな力みを極力抑えようとする意識に直結します。平熱を心がける姿勢は誠実そのものです。
映像の面でも天気のいい日に撮られた街並みなどの俯瞰ショットが要所で差し込まれており、それを観ると自然にふわぁっと広がる気持ちに移行できて、その感覚がまた《旅立ち》というターニングポイントに捉え直すことができるのが好印象でした。
葬祭会社側の中心に立つ漆原を演じられた目黒蓮さんはとにかく所作が綺麗で美しくて、笑顔なんてほとんど見せないのにそのキャラクターに終始引き込まれる存在感。抑揚のない台詞を響かせる声は硬質で、なのにひたすら温かいという矛盾を孕んでいて、そこがまた実に人間らしい表現となっているのは特筆に値する。削ぎ落としてこそ活きる目黒さんの演技力の真髄を観れた気がして、とても嬉しかった。拍手喝采。マーベラスです。
エンドロールに流れる曲に関しては最初「出来すぎ」だし「強すぎる」と思い眉を顰めていたのですが、しばらくすると何もかもが綺麗さっぱり洗い流された感覚に満たされて、すっきりしました。テーマが重い分、抱えてながら劇場をあとにする人も少なくないと予想される所であの選曲をしたのなら素晴らしい配慮だと考えます。
何から何まで心の機微に富んだ一作。興味がある方は是非。厚いハンカチを持参して劇場へ足を運んで下さい。
映画『ほどなく、お別れです』レビュー