zokuダチ エスカレート編・35
短編集・5
花粉症騒動
春の兆しも見え始めた今日この頃。……この島ではこの時期、
大変な事が起きていた。花粉の襲来である。このマンションの
住人達も例外ではなく……。
「……ぶええーーっくしっ!!ぶええーーーっ!!」
マンションの1階付近廊下から怪物の様なくしゃみが聞こえた。
ジャミルはその音を聞きながら部屋でゴロゴロと寝転がっていた。
「たく、うっせーなあ、……ちょっとだけ見に行ってみるか……」
ジャミルは野次馬状態でくしゃみの聞こえた方へ。行ってみると……、
廊下にはバーバラとホーク、心配しているゲラ=ハがいた。……相当
困っている様子。
「キャプテン……、お労しや……ですぎゃ……」
「ちょいと……、やだ、風邪じゃないの!?大丈夫かい?医者に
行った方がいいんじゃないかい?」
「いや、医者に行って治る問題じゃねえよ、……この島に
来てからなあ……、俺もこうなっちまったらしい、花粉症……、
言う奴だ、くしゃみが止らん、目も痛えんだ……、……べ、
べええーーっくしっ!!」
「ありゃまあ……」
ホークは鼻をぐしぐし擦りながら只管鼻を噛んでいる。見ている
だけでかなり大変な状態らしいが……。赤くなった鼻はもうそれは
それは赤鼻のトナカイさんの様である。
「特になあ、今、深刻なマスク不足なのが痛えよなあ……、ぶ、ぶへえ
ええーーしゅっ!!」
「……プウーーっ!!……あ……」
「其処の突貫小僧、隠れてないで出ておいで……」
「……」
廊下の隅に隠れて様子を見ていたジャミ公、ホークの凄まじい
くしゃみに吹いてあっさり見つかる……。
「この野郎!人の不幸を見て……、ぶ……へええーーしょしょっ!!」
「……ジャミルさん、キャプテンは今、非常事態なんですぎゃ!」
ホークがジャミルを一喝しようとするが、くしゃみの所為でちゃんと怒れず。
ジャミルは再び吹きそうになるが、ホークの代わりにバーバラにゲンコツを
食らった。
〔げんこつ〕
「全く!趣味の悪い子だねっ!アンタはっ!!」
「いてーなっ!妖怪オババ!それにしても、やっぱ年かねえ、俺、
花粉症なんかなった事ねえからよ……、その内オババもこうなるん
だろうなあ~……」
〔げんこつ〕
バーバラとジャミルは、野原家のみさえとしんのすけとおんなじ様な
モンである……。
「……若さとか年とか関係ねえんだよ、小学生だって花粉症になる時は
なるんだっつーの!」
「いてて!いててて!やめろーーっ!!このボテバラ糞親父いいっ!!」
ホ-クは少しだけくしゃみが治まっている間にジャミルの頭を拳で
ぐりぐりぐりぐり……。こっちは、ひろしとしんのすけ……、と、
同じ様なモン。
「ふう、こんなアホ構ってねえで、部屋でヤケ酒でも飲むか、ゲラ=ハ、
っしょ、ぐしゅ……」
「ぎゃあ……、仕方ないですね、ぎゃ……」
「それはいつもじゃないか、いいさ、ふふ、今日はあたしもお付き合い
しようかねえー!」
「ただ酒が飲みたいだけだろが……」
「何だいっ!?ジャミルっ!!」
バーバラはホークの後に付いていき、部屋まで一緒に入っていった。
ジャミルもやれやれと思いながら自室へ。健康優良児って最高だわ!
……と、思いながら。ところがその日の夜、んな事言ってられない
非常事態がジャミルを襲ったのである……。
「な、なんだこれ……、う……、ぶううーええーえっくしっ!!」
かなりというか、非常にオーバーなくしゃみを連発しているジャミ公。
風呂から出てまた暫くゴロゴロしていたら、急にくしゃみが止らなくなり、
困っている最中……。
「くそ、や、やべえ……、ティッシュ……ないーーっ!!」
……実は、昼間奮起しすぎた為、ティッシュ一箱分、全て使い切って
しまったのだった。
「!冗談じゃねえっての!まさか俺も……、ダウド、ダウドおおーーっ!!」
昼間のホークのかなり情けない状態を思い出し、ジャミルは顔が青くなる。
慌てて隣の部屋のダウドの処へ……。てぃっちゅ……を分けて貰おうと……。
したが、ドアの前に張り紙。
オイラ睡眠中です。また明日。特にジャミルは遠慮してね。
「……この白状ヘタレええーーっ!!」
ジャミルはすぐに自室に戻るが……、くしゃみは止らず。
「……あ、あの糞親父からまさか感染したんか?俺……、か、花粉症って
感染すんのか……、んな馬鹿な……、んうう!びいーーくっ!!」
「……あの、ジャミルいる?」
「!!あ、あの声はっ!来たっ!」
お約束。アイシャである。ジャミルは困ってこんなみっともねえ状態を
見られたくなく、オロオロする。……の、間に、アイシャは勝手に部屋に
入って来ていた。
「……おおーいっ!!」
「えへ!」
「じゃ、ねえっての!出てけっ!……ム、ムズ……、ヒク……」
「ちょっと何よっ!酷いっ!……ジャミル?」
彼女にも移ると困る為、ジャミルはアイシャの背中を押して部屋から
出そうとしたが、しかし、又鼻がむずがゆくなり……、盛大にくしゃみを
噛ました……。
「だ、大丈夫!?……風邪!?」
「いや……、花粉症なんだか分んねえ……、風呂から出たら急によ、
くしゃみが止らなくなっちまった……、昼間、ホークの糞親父を
笑ったからかな、……俺にも回ってきちまったみてえ、あは、あは、
あはは……、バチがあたったかな……」
ジャミルは力なく笑っている。……赤鼻のホークを笑った事を少しは
反省している様であり、ヤケになっているっぽかった。
「ジャミル……」
「んで、お前は何しに来たんだ?早く戻らねえと……、ぐし、
……くしゃみが移るぞ……」
「あはっ!なら、丁度良かった!今日ね、お料理教室でね、作ってきたから
お届けに来たの!今日はスタミナと元気のつくお料理よ!」
「げ……」
すっかり忘れていた。今日は魔の料理教室日であった……。しかも
今日のお品は……とにかく具が色々入ってるスタミナ餃子……。
「……今度は餃子かああーーーっ!!」
「これ、食べたら絶対元気出るから!はい、一口、あ~んっ!」
「い、いや……、ムグーーっ!!」
今回は鼻垂れジャミルが心配な為、アイシャは一口処か強引に
ぐいぐい餃子をジャミルの口に押し込んで食わせた。……結果、
くしゃみはころりと止った……。
「……マジ?う、うっそだろおおーーっ!?」
「あれっ、くしゃみ止っちゃったね、良かったねーっ!」
ジャミルはどうにかまたアイシャに助けて貰う羽目になった。次の日、
彼の部屋には悪臭が漂い、誰も部屋を訪れる人がいなかった模様。
……こんな事で花粉症?を免れられるのも悪運の強いジャミル
だけである……。
ドタバタは止まらない!
「みなさーん!(この話ではすっ飛んで)今日から3月ですよー!」
……と、何処かの村のシーズーちゃんが言いそうなこの台詞。この島でも
2度目の春がスタートしようとしていた。
「あーさみいさみい、さみい~、さみいよう……、春なのにフトコロも
さみいんだよう……」
春とは言え、雪もまだまだ油断出来ず降る事も多く、肌寒い毎日が
続いている。
「ジャミル、お客さんよー!」
「……うっ!」
部屋で一人で大福を食っていたジャミルはアイシャの声に餅を喉に
詰まらせ慌てて側にあったコーラの瓶を掴むと急いで口に入れた。
「なあに?何か食べてたの?口の周り、粉だらけよう!」
「……うるせーな、おめーは!だから用がある時はノックぐらい
しろっての!」
「何よ、そんな事言いだしたの最近じゃないの!それよりお客さん
だったらあ!早く来てよ!入居してくれるのって凄く有り難いん
だからね!神様よ!」
「あ!」
どさくさに紛れてアイシャが一つ大福を摘んだ……。
「えへへー!おいしー!私もシーフの才能あるかなあ!」
「太るぞ~……、アンタ痩せたいんじゃないんですかあー?」
「い、いいのよっ!たまにはっ!我慢ばっかりは良くないのっ!それより
早く早く、玄関行くのーっ!」
「ううう~……」
アイシャに背中を押されてジャミルは玄関まで連行されていった。その後……。
「ジャミルいる?……いないみたいだね、じゃあこれ貰ってくね!」
部屋に勝手に入り、ダウドが大福を一つ盗んで行った……。代りにお礼として
ゴリラの巨大鼻糞(賞味期限切れ)を置いていく。
……
「シャッキーン!」
玄関に行くと、何故かサメの様な姿の亜人が……。
「おい、あれが客か?入るのかよ……、人外だろ!」
「ちゃんとしたお客さんよ!ウチのマンションにはゲラ=ハだって
いるんだから!いいじゃないの!」
「いや、そう言う問題じゃなくてだな……」
「あっ、きみきみ!ねえ、カンフーやろうよ!」
「……アイシャ、ちょっとどいてろ!」
「え?あっ!」
言うが早いかジャミルはサメに蹴りを入れて蹴飛ばし、速攻で玄関から
叩き出す。サメは入り口から地面をスーパーマン状態で滑ってスライ
ディングしていった……。
「怪しい勧誘お断り!」
「ちょっと、何て事するのっ!サメさんがのびちゃったわっ!あの、
大丈夫!?」
「シャッキーン!」
「うおう!?」
しかし、サメは懲りずにぴょこんと起き上がり、ジャミルの肩を掴むと
目を輝かせた。
「君、いい脚してるねえ~、ますます興味があるなあ!どう?カンフー
やらないかい!?」
「やらねえってんだよっ!客じゃねえなら帰れ!」
「いや、ボクは帰らないよ!此処に住み込むんだ!そしてカンフーの
素晴らしさを皆に広めるんだ!」
「……おーいっ!」
サメ男は勝手にずかすとマンションの中に入って行った。そして
さっそく騒動に……。
「ぎゃあああーーーっ!!」
中からけたたましい悲鳴がした。……バーバラの声らしかった……。
「ジャミルっ!サメさんを止めないと!後、バーバラにもちゃんと
説明しなくちゃ!」
「おい、俺はまだ入居を許可した覚えはねえぞ、……仕方ねえな」
中に入るとバーバラとサメ男が揉めているのが目に留まり、ジャミルと
アイシャは慌ててサメ男を止めようとするのだが……。
「何なんだいっ!アンタはっ!……近寄ると容赦しないよっ!!」
「シャッキーン!ボクはシャッキー・チェンと言います、カンフーの
素晴らしさを広める為に世界を回る事にしました、お姉さんどうですか?
カンフーやりませんか!?」
「うっ、……ぬるぬるっ!生臭っ!魚臭いねっ、アンタっ!!」
「バーバラっ!」
「ジャミル、それにアイシャも……、分ったっ!……ジャミル、
またアンタの仕業だねっ!?」
「違うってーのっ!こいつが勝手に此処に来たんだよっ!!」
「バーバラ、本当なの、この人……、じゃなくて、サメさん、マンションに
入りたいんですって……」
「シャッキーン!」
「ハア!?冗談言うんじゃないよっ!喰われたら一体誰が責任
取るんだいっ!ジャミルっ、アンタ管理人として責任持って
コイツを叩き出しな!」
「んな事言われたってよう……」
「……」
と、ギャーギャー騒いでいる処に、又誰かが部屋から出てきた。
クローディアである。クローディアはじーっとサメ男を見上げた……。
「お嬢さん、カンフーやりませんか?」
「……カンフーはやらないわ、……でも……、あなたいい子ね、ふふ……」
……流石、獣、動物好きの森の乙女クローディアである。クローディアは
サメ男の大きな口を優しくなでなでした。
「平気よ、バーバラ、この子とってもいい子だわ、私には分るもの……」
「あのねえ、クローディアあああ……」
「……シャッキーン!どうしよう!ボクのあそこも何だかシャッキーン!
みて!こんなに尖っちゃったよ!////ボク、こんなの生まれて始めてだよ!」
「やだ……」
アイシャが顔を赤くし、バーバラはもはや怒るのを忘れて呆れ、
ジャミルは激怒。どうやら話がどんどんずれて来てしまった模様……。
「コ、コラ、ケモノっ!……オメー生意気に発情してんじゃねえよっ!!」
其処へ……、また誰かが現れた。グレイであった。……グレイは慌てて無言で
クローディアを軽々と持ち上げ小脇に抱えるとそそくさとその場を離れた。
「……あら~?……グレイ?」
「……駄目じゃないか!……危ないだろう!?」
「平気よ、私、あの子とお友達になりたいわ……」
「ジャミル……、貴様……、あのケダモノをどうにか始末しておけよ……」
グレイがジャミルを横目で睨みながら退場し、クロ-ディアを部屋まで
送り届けた後、そのままグレイはクローディアの部屋から出て来ず。
サメ男から暫くの間、クローディアを護衛する為らしかった……。
「あたしゃ頭痛くなってきたからもう部屋に戻るわ、ま、入居させるか
させないかはアンタ次第だけどさ……、良く考えときな……」
バーバラも部屋に戻って行く。玄関先に残されたのはジャミルとアイシャと
サメ男、シャッキー・チェンの3人だけとなり……。
「実はボクが此処に来たのも偶然じゃないんですよ、何だかこの辺で
とてつもない悪の芽が動き出している様なんです、正義の血がこのボクを
新たな戦いの地へと駆り出したんです!」
「ほお?」
「ボクも何かお力になりたくて、シャッキンキーンの中に
修行ありですから!」
「まーた、言ってる事がイマイチ分かんねえんだけど……、ま、いいさ、
好きにしな……」
「有難うっ!ボク、今日から此処でバリバリ皆さんにカンフーを勧めますよ!」
「それはいいっての!……勧誘はよせっ!」
「良かったね、サメさん!」
「はいっ、あのー、ボクはシャッキーと呼んで貰えると有難い
でしょうか……」
「分ったわ!じゃあ、ジャミル、私がシャッキーをお部屋まで
案内するわね!」
「ん、頼む……、もうヤケクソだよ、好きにしろっての……」
結局、ジャミルが責任を負う形となり、こうしてマンションにはまた変な
入居者が増えたのであった。
ひまわりのひな祭り
3月3日。桃の節句。今日は女の子の成長を祝う日。お雛祭りの日。
ジャミルとアイシャはこの間、しんのすけ達の面倒を見て貰ったお礼にと、
今日は野原家の雛祭りパーティに招待されていた。だが、図太い主婦、
ケツも大きいみさえは、ただ招待するだけで無く、きちんとする事も
させるのである。
「んじゃあ、私、ご馳走の準備のお買い物をしますのでーっ、お飾りの
お手伝いと、子供達のお世話、宜しくお願いしまーすっ!」
「へえ、行ってらっしゃい……」
「はあーいっ!お世話は任せて下さーいっ!」
「あはは、アイシャちゃん、頼もしいわねーっ!さっすがお姉さんねーっ!」
「けど、精神年齢は一緒……、あいてっ!」
ジャミルはアイシャに殴られながら、マスクをして張り切って出かけて行く
みさえに力なく手を振る。子供らを家に残していく際、自分はどうせ何処かの
喫茶店でお茶でも飲んでのんびりしてくるんだろうと思う。
「ん~、やれやれですなあ、インフルインフルでオラ達も当分幼稚園
お休みになっちゃったから……、つまんないゾ……」
「……そういう細かい社会情勢描写はタブー!ガキはガキなりに何も考えず
休みを楽しんどくんだよ!」
「でもお……、今はあまりお外にも出ないようにって、言われてるゾ……」
「な、んて、ながい……、はる、やす、み……、ボオ」
「たいっ!たいっ!」
「ん?あ、ああ、そうか……、分ったよ……」
吠えるひまわり。早くお雛様を飾ってと言っている。ジャミルとアイシャは
箱から人形達を出し、早速飾り付けに取りかかる。ちなみに、壇の数は
シンプルで3壇。
「うふふ、かわいいーっ!」
「そうかなあ……、どうもこの手の顔ってさあ……、夜、勝手に動き出して
気がついたらいつの間にか枕元にいそうな……」
「もうーっ!ホラーにしないのよっ!!小さい子のお祭りなんだから!」
「よいしょ、ここ、カンタムロボも飾ろう……」
「いし、も……」
「たいやいっ!やいやー!」
「こ、こらっ!お前らんなもん飾るんでないっ!ひまが怒っとろうが!」
ふざけだしたお兄ちゃん達にひまわりは激怒。ジャミルは慌てて
バカガキ2人を止めた。
「ん~、折角もっとお派手に飾り付けしてあげようとしたのにィ~!」
「ボオ」
「たいやいやいー!」
ジャミルとアイシャは手際よく3人官女達を壇に並べていく。
ひまわりは段々と完成していく雛壇を目を輝かせ見つめていた。
「おおー……、にへえ~……」
「ひまちゃん、もうすぐだからね!楽しみにしていてね!」
「きゃーい!」
しかし、しんのすけ達は男の子。段々と飾り付けを見ているのにも
飽きてくる。じっとしている筈がなく……、等々暴れ始めた。そして、
事件は起こるのである。
「行くぞっ!怪獣ショーチンジャミ公!アクション仮面が
お相手いたすぞ!」
「ボオオー!く、らえ!ポークビッツ……、ミサイル!」
「うるせえなあ!静かにして……、ってか、てめーらなに人を出汁に
怪獣にしとるっ!!」
「ジャミルもいちいちムキにならないのっ!……も、もう、
しんちゃんたら……」
もう少しで、後は主役のお内裏様、お雛様を上の壇に飾り付ければ完了。
だが、暴け過ぎたしんのすけが奮起して壇にぶつかり、漸く飾り付けて
貰ったお雛様が下へと落下……。
「あ、ああーっ!?」
「ひ、ひま、……ごめんだゾ……」
「う……、びえええーーっ!!」
「大丈夫だ、身体は壊れてねえよ、心配ねえ、しかし運のいい
姫さんだなあ~」
「ひまちゃん、泣かないで、大丈夫だよ、ほらほら~」
「びええ……、っく……」
ジャミルは急いで落ちたお雛様の安否を確認。本当に傷も破損箇所も
何も無し。急いで無事な姿をひまわりに見せた。
「へへ、どうだっ!」
「おおー!きゃーい!」
どうにかひまわりは泣き止み、再びお雛様は雛壇へ無事飾られる。
ジャミルは悪ガキ2人にする事はきちんとしておこうと思い、
自分の拳に思い切り息を吹き掛けた。
「よし、2人とも頭をだしな……」
「ほ、ほい……」
「ボオ……」
〔げんこつ×2〕
「みんなー、お留守番ありがとね~!」
「母ちゃん、ただいま~!」
「ボオ」
成敗も終わった丁度其処に、買い物袋を下げたみさえが帰って来る。
もっと遅くなるかと思われたが、案外今日は早かった。
「おかえりでしょ、しんちゃん!ジャミル君もアイシャちゃんも
どうもありがとう~!わ、もうお飾り終わったのねえ~、さっすがあー!
凄いわあー!」
「あはは、はあ……」
「ふふふ!」
みさえは2人をベタ褒め。そして、アイシャは台所でみさえの手伝い。
……ジャミ公は悪ガキ共の怪獣ごっこに巻き込まれ……、あっという間に
日は暮れ、夕方に……。そして、亭主でもあるひろし氏も帰宅。
「ただいまあ~!帰ったぞおー!」
「父ちゃん、ただいまあー!」
「おい、お帰りだろ、しんのすけ……、はは……」
「こ、こんちは、ども……」
「こんにちは、お仕事お疲れ様でした、お邪魔してます」
「おう、お2人さんも来てくれたな!いやあ~、今日はありがとな!」
「たいいー!」
「おう、ひまも出迎えてくれたかあ!よしよし!」
ひろしは愛おしそうに娘の頭を撫でた。今日は大事な愛娘の節句。
残業にならない様、本日は猛スピードで仕事を終わらせ帰って来た。
働くお父さんは大変なんである。そして、野原家の食卓テーブルには
ご馳走が並んだ。飾り付けて貰ったお雛様を見ながらの豪華夕食タイム。
ちらし寿司、鯛の塩焼き、桜餅など、盛り沢山。
「ささ、2人とも、遠慮しないでね!今日は色々とお世話になった分、
沢山食べてね!」
「すげえ、けど、アイシャも手伝った筈なのにな……、やっぱプロが
いるだけでこうも……」
「何よっ!ジャミルっ!!」
「ンモ~、今日は随分無理したのね、母ちゃん……、昨日は特価30円の
納豆と野菜炒めと漬物と魚のおにものだったのに……」
「うるっさいっ!アンタは黙ってなさいっ!お客さんの前で人ん家の
経済事情をばらすんじゃないっ!!」
「ボオ~……」
「たや!たいい!」
ひまわりは秋田のお爺ちゃんに送って貰ったお着物を着せて貰ってご機嫌。
「あは、ひまちゃん、可愛いーっ!」
「ホントだな、……ひまも、い、いつかは……、俺の手を離れて……、
ど、どこの馬の骨か分らん奴の所に……」
急に泣き出したひろしに困るジャミ公。ちょっと出来上がってしまって
いるのだろうか。
「畜生っ!ジャミル君、君も結構いける口なんだろっ!?さあ今日は
付き合え!とことん飲め飲めっ!……ひ、ひく……」
「はあ……」
泣き上戸ひろしはジャミルのコップにビールをどんどん注いでくる。
仕方なしにジャミルはビールに口をつけた。
「そうだ、ね、アイシャちゃん、ちょっとこっちへ来て……」
「あ、はい?」
みさえは笑いながらアイシャに手招き。おいでおいでする。アイシャは寝室に
連れて行かれる。そして、数分後……。
「じゃあーんっ、どうーっ!?」
「おー!アイシャちゃん!いやあー!可愛いなあーー!」
再びみさえに連れて来られ、茶の間に戻って来たアイシャは可愛い
お着物姿に大変身。
「あの、みさえさん、これは……」
「私のね、若い時のなんだけど、今日の為に探しておいたの、本当、
似合ってるわね、可愛いわあーーっ!ささ、座って座って!ひまの隣に!
一緒に並んで並んで!」
「たいや!(ふんっ、まだまだね!少しはいい線いってるけど!)
アイシャは困りつつも着物姿でちょこちょこ歩き、ひまわりの隣に並び、
正座した。ジャミルは……、いきなり変身してきたアイシャの姿にどう
反応していいか分らず。コップを握り締めたまま、ぼ~っと……。
「……ジャミルお兄さん、お顔あかいゾ~?」
「ボオ~?」
「!!バ、バカ!これは違……、さ、酒の所為だっての!」
ジャミルは慌てて誤魔化そうとビールを飲み干す。困るジャミルを見て、
ひろしは反応を面白がり、どんどんコップにビールを注いだ……。
「みさえさん、大切なお着物を……、汚したら悪いわ……」
「アイシャちゃん、今日は3月3日、桃の節句、女の子の健やかな成長と
幸せを願う日よ、私はね、あなたの幸せも一緒に願いたいのよ……」
「みさえさん……」
「あなたもいつかは……、お嫁さんにいくんだもの、ね……?」
「みさえさん、有り難うございます……、私、嬉しい……、ふぇ……」
「……う、うぐううっ!!」
お嫁さん……、に、反応したのか、ジャミルが食っていたちらし寿司を
喉に詰まらせた。
「おいおい、大丈夫かよ、水、飲めよ……」
ひろしはジャミルに慌てて水を差しだし、ジャミルは急いで水を一気飲み。
「や~っぱりいい、相当慌ててるゾ……」
「るさいっ!違うったら違うっ!!」
「ふふ、さあさあ、締めはお写真とりましょーか、お雛様の隣には、ささ、
お内裏様がいないとねーっ!ささ、2人とも、ひな壇の前に並んでーっ!」
「……え、えええっ!?」
「な、なんで俺までっ!ああああーっ!!」
ジャミルとアイシャは無理矢理雛壇の前に並ばされた……。アイシャは
ひまわりを抱かされている。リアルお雛様とお内裏様で写メ撮影するらしい。
「いいわよーっ!2人ともーっ!ほらこっち向けーっ!ジャミル君、
照れちゃ駄目よーっ!」
「今日の思い出に是非いい写真撮らせてくれよなーっ!」
「や、やめてくれっての、もう……」
「……恥ずかしいよううーーっ!」
「たいやい!(ケ!)」
「ジャミルお兄さん、お内裏さまのお帽子は、それじゃ駄目だぞ、ほい、
うんちハット……」
「……お前が被れええーーっ!!」
「いやああ~ん♡」
「ボ!ぼくも、はい、る!」
「お、いいね、いいね!うし、シャッターチャンス!」
パシャ!
こうして、しんのすけ、ボーちゃんも乱入。凄まじいリアル
お雛様写真が出来上がる。普段、何かとトラブルに巻き込まれ、
忙しいジャミルとアイシャも取りあえず、今日は久々にのんびり
出来た一日かも知れなかった。
zokuダチ エスカレート編・35