『秘密はまだ甘い』

ふたりだけの秘密だよと
人差し指を唇に押し当てた君


『秘密はまだ甘い』


遠い昔と思い出すようになっても
あの日の君がまだ胸を騒がせる
風に揺れる長い髪が時々頬に触れ
擽ったいと笑うと君も笑ったね

噛み合わない会話も今となっては愛しい
夕暮れが深くなる頃始まった世界は
君の気分で簡単に壊せるものだった
その事実さえ僕と君に相応しくて

何かひとつに夢中になるとそれしか見えない
そんな気質を好んでいたはずなのに
いざ自分が切り捨てられそうになると
途端に腕を掴んで引き止めたくなる

だけどまたあの裁くような目で見るんだろう
君の拒絶は冷たくも穏やかで
閉まった扉の前で立ち尽くすしかない
ただ過ぎ去った日々を懐かしんで

このまま年老いて死んでゆくのなら
なんて不幸で幸せな人生だろうか
面影がチラついて眠れもしない
どんなに優しくても別れは別れだ

引き裂かれた心臓が鮮血を吐き出しても
君はもう二度と振り返ることはない
絶対零度の眼差しだけで死ねるくらい
若いままならどれだけ良かったか

あの日唇で感じた君の体温で
僕は息を止めるべきだった
今もこんなに甘いならあの瞬間
永遠にも似た糖度で逝けたのに



「君の不在を嘆いたまま、僕は骨になり土に還る」

『秘密はまだ甘い』

『秘密はまだ甘い』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-02-02

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