映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』レビュー

①盛大なネタバレを含んでいます。事前情報なしに観たい方は十分にご注意下さい。

 前作から続くレーン・エイムのやられっぷりを見ていると、ガンダムシリーズの鉄板ともいえる「大人が作り上げた矛盾だらけの世界に飛び込んだ子供=理想が、汚れながらもその意志を貫く物語」という骨子をバッキバキに踏みにじることでしか描けないものを徹底的に描くという本作のコンセプトを存分に感じる。
 しかも今回はレーン・エイムと同じように理想に滾る子供だったハサウェイが瓦礫の山のように堆く積もった『逆襲のシャア』の頃の記憶やトラウマを乗り越えることで、真に「マフティー」と化すハイライトまで設けていた。ヘルメットのフェイスガードの向こう側が一切見えなくなって、人には成し遂げられないものを成し遂げんとする《何か》が生まれようとしていた。
 経済活動に支えられたシステムから生じる格差に喘ぐ人々の苦しみを、来世で救われるための試練として耐え忍ぶことを良しとする宗教上の救世主とも違う、あの佇まいに覚える戦慄は、まさにギギ・アンダルシアが予言した通りの存在に彼が至ってしまった証拠。その彼女が気まぐれに傾ける勝利の天秤の行方まで考慮すれば、その先で待っているラストをアニメファンとして一切想像できないのがもう興奮の極み。
 各論的に読み解いても、人殺しの機械であり、戦争の道具として状況を変え得る力を持つモビルスーツ関連の描写は前作以上の出来だし、人間ドラマの部分もハサウェイを支え続けたケリア・デースを中心に見れば、彼岸と此岸の境目で揺れ動く彼の煩悶が持つ重大さをしかと理解することができる。「ハサウェイはハードにマフティーをし過ぎてる」というジュリア・スガの台詞も、重かった。
 少しは読んだ方がいいのかなぁ、と何となく思っていた原作の方にはもうここまでくる手を出す気が全く起きない。ラストまで走り切ってから読むのが私のアンサー。もう一回、必ず観に行くので豪華版のパンフレットもその時に購入する所存。すごく、すっごく良かった。お勧めです。

映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』レビュー

映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』レビュー

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-01-31

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