妻はグラドル 第三話
おはようございます。第三話のお届けです。グアムに撮影旅行するあいん。涼介の孤独が加速します。お楽しみに。
第三話
「妻はグラドル」
第三話
堀川士朗
涼介とあいん。
ソファに座ってカットした梨をフォークで食べている。
梨はもう出回るようになってきた。
「イギリスの喜劇王チャッペーリさんが亡くなった時に僕はまだ六才だったけど悲しくてわんわん泣いたんだ」
「そうなんだ」
「お母さんを困らせてしまったよ。お母さんはまだその頃生きていたからね」
「そう。涼介。今は私がいるわ。だから泣かないでね」
「うん……あいん、ありがと」
「これからも、ずっとそばにいるわ」
◆◆◆◆◆◆※※※※※◆◆◆◆◆◆
僕は本当に、あいんの事が好きなんだ。
こんなにも。
大事にしたい。
大事にしたいんだ。
切なくて、たまらないよ。
寂しさの海に投げ出されて、溺れてしまいそうだ。
◆◆◆◆◆◆※※※※※◆◆◆◆◆◆
篠咲あいんの七本目となるイメージグラビアDVDが出る。
その撮影として、四泊五日のグアム旅行に行ってくるあいん。
「涼介、お土産何が良い?」
「え。椰子の実ジュース」
「椰子の実重いからやだ。ムームーとか買ってきてあげるよ」
「スタッフ全員男なんでしょ?入れ墨入ったヤクザなスタッフとかいるんじゃないの?」
「いないし。何心配してるの?私だけじゃないんだよ。霧島エネちゃんとか下村さちかちゃんとか河本栄子さんとかと一緒に合同でグラビア撮影してくるんだよ?四人女子だよ。監督はいつもの佐藤タルヒコさん。出戻りの私にも優しいよ」
「そうなの?」
「うん」
「夜は乱交パーティーとかに……」
「なんないよ馬鹿!もうー。心配しないで、ダーリン」
「うん。グアム旅行僕も一緒に行く!」
「ダメだよ!」
「今夜はギンギライチャイチャパラダイスは?」
「ギンギライチャイチャパラダイスはお預けだよ。ボディラインが乱れちゃうから」
「ちぇー。ねえ。ムームー日本だと着る機会まれだよ」
翌翌日。
今夜からあいんはいない。
グアムだ。
くそー。無理矢理にでもついていけば良かったと涼介は思った。
今日はあいんがいないので、換気扇の下でタバコを吸わなくても済む。
涼介は魚肉ソーセージで瓶ビールをあおった。
「う。う。う……」
両の目からは大粒の涙がこぼれ落ちそうだった。
独りっきりのベッドに横になる。
お腹の上で腕を組む。
薄く冷房はかけているのに、なぜか背中が熱く感じられた。
それは、涼介にとって奇妙な感覚だった。
何かの不吉な予兆を孕んでいた。
背中は
あつい
お腹は
涼しい
あつしい
涼介は五行歌を詠んだ。
グアム。
撮影現場。
ここでもあいんは、両腕を上げて脇の下を強調するポーズを取っていた。
グアムのまばゆい陽光が射し込む。
涼介のパスポートが切れていなかったら、きっと涼介もグアムに無理矢理ついて行っただろう。
結局、涼介へのお土産はパーム油のパヒュームだった。
続く
妻はグラドル 第三話
ご覧頂きありがとうございました。来週はいよいよ最終話!どうか最後までお付き合い下さい。