バスケットゴールの方へ

冬か春かを
空はまだ決めかね
夕暮れの田圃のへりで
孤独がバスケットボールに
足踏み 空気を入れている
ボールは太陽のように腫れ
倒れかけた自転車に跨がれば
空はかろうじて正気を保つ
(夕焼けは遠さのなかに)
農村公園の隅に置かれた
ひとつだけのバスケットゴールは
魚の骨がひっかかっていて
まだ名前を知らない孤独は
スリーポイントシュートの練習
つきまとう軌跡は明るい建築学
きっと今日はひとつの道を失い
ひとつのさざんかが砕かれた
           のだ
バスケットボールは
(吾無身吾有何患)
迫る夕闇へ 融け
農村のすみずみへ
さらにすみずみの外れの海の
顔へ
星屑を 降らすのだろう

バスケットゴールの方へ

バスケットゴールの方へ

静岡新聞2026年1月27日読者文芸欄野村喜和夫選

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-01-27

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