『夜がこっちを見ている』

東京の夜を覚えてる
あれは何だか冷たくて
だけどそれが心地よかった


『夜がこっちを見ている』


眩く煌めく夜景より
ビルとビルの狭間のような
何かが潜んでいてもおかしくない
ふと目をやった暗闇の奥

ここでしか生きられないと
精神安定剤の甘さを求めて
次の仕事に向かいながら
見上げる空には鈍い月

アタシの居場所っていつも暗い
明るい場所がひとつもないの
恋をしたって薄明かり
輝くのは違う誰かってこと

思い知ったら何だか可笑しくて
どうせ見られないから好きにする
誰も見てはくれないから
いきなり踊ったって目を引かない

可愛いと言ってくれる客も
次の指名には繋がらない
こうして繰り返される一瞬に
夢を見れるのが羨ましかった

あの暗闇から手招くのは誰
至る場所に存在する人の心みたいな
喜びも恐怖も無い暗闇
いつか吸い込まれそうな穏やかさ

それを横目に朝方帰る部屋の
寒々しい様に落胆しても
寝て起きればまた夜が来るから
いっそ優しく殺されたくなる



「あの暗闇に居たのはアタシ自身だった」

『夜がこっちを見ている』

『夜がこっちを見ている』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-01-24

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