『愛の模倣で単位を取る』
いつか後悔すると貴方は言った
後悔しても構わないとアタシは言う
『愛の模倣で単位を取る』
講義を聞きながら思うのは
その声の響きの甘さは
きっと近付くほど危険だということ
耳に吹き込まれれば何でもしてしまう
深い闇に落ちてしまいそうなバリトン
アタシの夢想はいつもその中にある
忠告がいつしか命令に変わっても
抜け出そうなんて思いもしない
跪けば冷たい床を睨め付ける視線
これが罰だという事をすぐ忘れるのね
アタシだけが忠実に守る躾の意味を
貴方はもっと重く考えるべきよ
哀れなる教え子の手に額に首に太腿に
順にくちづけるその唇がもうすぐ
聞いた事のない卑猥な言葉を紡ぐ
そしてアタシは貶められ満たされる
恥を恥とも思わぬ顔で見上げれば
いっそ痛ましげに眉が歪む
苦しまなくてもいいのに
苦しみたがる貴方が愛しい
ひとりぼっちだったから
ひとりぼっちの貴方を見つけたの
それを頼りに貴方も砂粒の中から
アタシを見つけ出したんでしょう?
君は愛を知らないと言うけれど
そんなの貴方だって同じこと
アタシの中にあるこの熱情の
正体すら未だ知らない癖に
いつか教えてあげるわ
立場を入れ替えて今度はアタシが
教壇に立って姿勢を正し微笑んだまま
混じり気のないそれを貴方に突きつける
「単位の為の模倣よ、今はまだ」
『愛の模倣で単位を取る』