ただのくせなんだー寓話集「針鼠じいさん4」
アライグマが畑でサツマイモを掘っていた。
通りかかったタヌキが声をかけた。
「うまそうだな」
アライグマはふり向きもしないで答えた。
「食べごろさ」
「おいらも一つ」
タヌキも畑でサツマイモを掘った。
やがて、サツマイモをかかえた二匹は、森のすみかにもどっていった。
せせらぎのところに来ると、アライグマはサツマイモを流れに浸して、ごしごし洗いだした。
「どうして洗うんだい」タヌキが聞いた。
「洗いたいんだ」
それを聞くと、タヌキは、
「そんなことしちゃ、味がおちちまうだろう」
そう言って、サツマイモを葉っぱでささっとふいた。
「こうやって食うのがうまいんだ」
ぼりぼりかじった。
それから三日たって、タヌキの腹の中で、土についていた回虫の卵がかえっちまった。回虫の子どもは大暴れをして、どんどん大きくなった。
おかげで、タヌキはにがい虫下を、いやというほど飲まなければならなかった。
「ほらごらん」
アライグマはそれを聞いて一人でうなずいた。
ある日、アライグマが森の中を散歩していると、真っ赤なキノコが一面にはえているところにでた。
そこでは、ウサギがせっせと赤いキノコを採っていた。
「たんとはえたね」
アライグマも赤いキノコを採った。
やがて、赤いキノコをどっさりかかえた二匹はせせらぎにやって来た。
二匹は岩に腰かけてキノコを食べることにした。
アライグマが言った。
「洗って食べよう」
アライグマは、キノコをもってせせらぎに降りていった。
ウサギはアライグマがキノコを洗っているのをみながら、そのままキノコをかじり始めた。
「おいしいよ、早くお食べよ」
採りたてのキノコをなかなかいい味だった。
ところが、ほんの半時もすると、ウサギは、赤い目をもっと赤くして苦しみだした。
アライグマが医者のフクロウを呼んだ。
ところがフクロウが来た時には、ウサギの目は白くなって息たえていた。
「毒キノコにあたりおった」
坊さんもかねるフクロウは、ウサギをねんごろにとむらった。
毒キノコを食べたのにもかかわらず、アライグマはぴんぴんしていた。
「キノコの毒が川の水にとけて助かったんじゃ」
フクロウが言った。
アライグマはやっぱりとうなずいた。
またある日、都会のネズミがアライグマに会いにきた。
「久しぶりだね。きれい好きのアライグマ君」
ネズミはそう言って、都会のみやげをわたした。
「これはね、森にはないとてもおいしいものさ」
アライグマは大喜びでうけとると、いっしょにせせらぎにやってきた。
ネズミはざぶんとひと泳ぎ。
「きれいな水だね、都会のプールとは大ちがい、自然の水のにおいはいいな、プールの水は薬のにおいがぷんぷんする」
「でも毒を消すのだろう、たいせつなことじゃないか」
アライグマが答えた。
ネズミは岩に上がってぶるっと水をきると言った。
「ばい菌を消す薬が毒になるのさ」
アライグマには、ネズミの言っていることがわからなかった。
アライグマはネズミのみやげを水にひたした。
「おっとっと、何をするんだい」
ネズミはそれを見て、あわてて止めようとした。
でも間に合わなかった。アライグマの手の平にのっていたネズミのみやげはあっという間にくずれて流れちまった。
「角砂糖は水にとけるんだぜ」
ネズミはがっかりした。
アライグマはなにごともなかったように言った。
「水にとけちまうのは毒さ」
ネズミは目を丸くして都会に帰っちまった。
またまたある日の朝早く、アライグマは、いつものようにサツマイモを畑から掘ってきた。
そして、せせらぎで洗って食べた。
ところが、お腹をこわし、熱をだしてねこんでしまった。
医者のフクロウは、熱さましと、ばい菌をころす薬をアライグマにわたして言ったんだ。
「きたない水もあるんだよ」
その日は、せせらぎの上流で、お腹をこわした三匹のイノシシがお尻を洗っていたそうな。
ところが、熱が下がってお腹のなおったアライグマは、また、サツマイモをせせらぎで洗っていた。
フクロウがそれを見てにが笑いをした。
「ただのくせじゃな」
ただのくせなんだー寓話集「針鼠じいさん4」
寓話集「針鼠爺さん、2015、209p 一粒書房)所収
絵:著者