予期せぬ出来事 03

座らせていただきます

 赤羽駅4番線。
 高崎線下り、21時27分の電車に乗った。
 車両連結部分の三人席の前、ボクはドアに一番近い所に立った。
 鞄を棚の上に乗せ、文庫本を開く。
 正面には、相撲取りのように太ったサラリーマンのおっさんが寝ていた。
 右横の2席には二人の女性が座っている。
 立っているボクの右側は、真ん中をひとつ空けて女性がスマホをいじっている。
 やがて電車は、次の駅である浦和駅に到着した。
 そして真ん中の席の女性が降りていった。
 普通なら、ボクが知らん顔をしていれば、スマホをいじっている女性が座るはずだ。
 が……その女性も動かなかった。
 何故ならその女性は、ボクの前で船を漕いでいるサラリーマンに負けず劣らす太っていたからだ。
 そのスペースには、スマホ女性の身体は納まりそうになのである。
 心の中で……
 じゃあ、座らせていただきます。
 ボクは棚の上に置いてあった鞄を取った。

 おしまい

予期せぬ出来事 03

予期せぬ出来事 03

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-22

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