ケシストたち(及び若干その他)の語録集
・ヨーロッパ大陸はケシスト運動に揺れて居る。白色主義的な正統国民たちが夥しい移民系の子孫たちととても議論とは思い得ない応酬の末にそれぞれが暴徒と化し、互いの陣営の政党たちがそれを如何に堅実に諫め落ち着かせることができるかの醜い競争を繰り広げて居る。すべての者は他の者がすべて知ることはできないような背景を以て生きて居る。それぞれに言い分はあり正当性も存在する。何れの者にも同調し得る部分は必ずある。
・そして私自身もまた、誰か知らない人々からの同調をただただ求めて居た。同調を希うだけの醜く哀れな人間だ。何せ正統国民も移民系たちも、誰もこの国のための話をしない。互いが自陣の足場を固めることと対手を失墜させることに気を取られて究極的にはその闘いに勝利できれば良いと思って居る。
・正統国民は自らをこの地の歴史的事実に基いた正しい愛国心を持つ正しいナショナリストであるとして、自らをこの国の景勝の申し子だと言う。そこに他民族の入る餘地はない。
・移民系の子孫たちは然うした目論見を真っ向から否定し、この国をリチズムとメシズムを盾に公正平等なる機能的な「単なる居場所」にしようとして居る。この国を公園か商業施設にでもしようとして居るのだろう。
・何れにも讃同できない。この国は今までと同じ美しく開かれて誇り高い国であり続ければそれで良い。それで今までやって来たのではないか。なぜにそこに決着をつける必要があろうか。
・片や優れた文明大陸の優れた民族による優れた大国の国民としての優越感が危機に瀕して居ることを受け入れられない愚か者たち。
・片や自分達が移住して来た世代ではないのをいいことにこの国の個性を軽視して権威的な正統国民たちを懲らしめんとする愚か者たち。
・この混乱はすべてケシズムによって齎された時限装置の産物である。ケシズムは優位に立てる権威的立場の者や民族には丸で何の意味もない思想である。劣勢に立たされ軽蔑されて居る者だけがその恩恵を受けることができる。謂われ無くただ優位な民族に生れただけでその子は劣性リチズムの標的とされ、移民系たちの思想的養分となる。
・してやられたか。しかしまた移民という存在自体も、経済的理由を建前とした殖民地支配的優越感の産物であった。
・世界は廻る。これは我々が招いたことであり、そして我が国のケシズムもきっとこのまま黙って終りはしないことだろう。
西暦20××年
〇〇〇〇共和国元老院議員(新たな会派たる正統国民連合の結成について配信上にて問われた際の発言)
・遠からぬ幾百年もの前の日に我が祖先たる帝国を滅亡させ強姦し私物と化したイ国はヨーロッパ大陸の混乱の例に漏れず嘗てない存続の危機に瀕して居り、ヨーロッパ文明とキリスト教の伝統的権威主義に基く王制維持派と各自治景勝国家独立を目指す各自治州との間に良からぬ衝突が繰り返されよう。
・不当にも潜在的に弱者の精神性と貧者の運命を押しつけられてきた我が同胞たちよ、今その時である。同盟財団の栄えある責任ある一員として、今や我々はかのイ国の命運を握ろうとして居る。我らは数百年前の遥か昔の征服が故に同じ言語を話せるからして国際社会より人員と戦力の派遣が強く求められて居ることだろう。
・イ国の犯した罪は拭い去れない。人類の財産であり崇高を極めた祖帝国のその美しき光景が文習がどのように蹂躙され軽んじられ、どのように美しき先祖たちが辱められたのか。思い馳せるにも心苦しかろう。当の侵掠者たるイ国人たちがどのような優越感を以て祖先の地を穢し歩いたのか、想像に難くない。ケシストとして、そのような優越感は何より否定され忌み嫌われるべきものである。確かにイ国は、数百年の時を経て罰が当ったのだとでも思えよう。
・しかし、今は数百年の時を経た今である。その侵掠を今に生きるイ国民たちに問うてはならない。彼らの土地を同じように蹂躙しては決してならない。
・彼らの命を虐げてはならない。彼らの街並を破壊してはならない。彼らの文化を滅ぼしてはならないのだ。
・我々が彼らに齎すのは大文明の滅亡ではない。またとない救済である。
・救済とは何だろうか。それは病からの解放である。
・病とは何だろうか。他でもない、優越感という人類の不治の病である。
・然様の菌を抹消すること。我らは然様な使徒なのである。
・彼らに救済を齎すのだ。それはそれは、鄭重なまでの返禮品だ。彼らは今や贈り返せない。我らの番だ。心してゆけ。
西暦20××年
〇〇〇〇〇景勝共和国景勝大統領(大統領声明にて)
・ヨーロッパ大陸に奮闘?し我々の先鋒として戦って居る素晴らしき聖戦士かのように奴らを称讃する者、後を絶たず。困ったことに景勝帝までもが欧州の或る国で同胞勢力が政治的躍進を遂げる度に直接に名指しはしないがそれとなく聖戦の夜明けを仄めかしそれとなくかの地の同胞を鼓舞するような言葉を述べられる。
・キリスト教文明に我々の景勝たる正しい教えを叩き込んでやらんとする暴力心の受け皿として希望として移民の子孫を過大評価し妄信しそして過剰に信頼し、あわよくばその全員を我が国の景勝工作員にでき得るとすら思って居る。
・それなら奴らが我が地に帰還(移住)してきて同じ信心深き立派な国民の一人かのように振舞ってきた時にはどうするのだろうか?その一つ一つの所作や言動の有様にヨーロッパ文明のしがらみを見ることだろう。もはや神の下から離れて長くもはや自分達の民族的優位性のみを信じて已まないような蛮教徒と化した西方の文明のただの一人の市民に過ぎない。蛮教徒たちの景勝に対抗するためだけの宙に浮いた劣性リチストとして一見すると大きく見えるだけの、ただの居場所なき若者たちである。
・残念ながらかの地を侵掠すべしというなら我が国軍を景勝軍を派遣する他に打つ手なし。そして侵掠の必要すらないのであった。蛮教徒たちは自ずと崩れ、これから更に分断し堕落してゆくこととなる。彼らのケシズムはケシズムではない。ただの古めかしい民族主義であり人種差別主義である。我々は違う。我々は神に忠実なるケシストである。神の齎せる使命にのみ基いたケシストである。ただ我々のことにのみ注力せよ。集中せよ。さもなくば我々の心は神の下から離れることだ。神は然るべきことをなされよう。ここを動くな。我々は実に素朴である。神に純粋な兵卒である。それ以上でも以下でもないのだ!
教暦14××年
〇〇〇・アラブ公議国最高指導者(国家景勝諮問会議にて)
・理智主義者は私たちの邪魔ばかりする!私たちが私たちであろうとする度にそこを勝負どきとみて丸で命を懸けてくるのだ。その姿は神に誓って見苦しい。
・彼らは、遠くにあるからこそ思い出は懐かしく、夢は望ましく、星が美しいということを知らない。いや、知って居るからこそそれに抗おうとして居る。つまり真理に叛旗を翻して居る。それはつまり、神の導への挑戦状である!
・民族は文明は、ひとつひとつの国民体たる景勝は先ず独立して存在しなければならない。私たちは第一に決して一つになってはいけない。人類が一つとなることはないことだろう!よって我が国は侵掠者の未だ色濃くのこる残存文化と旧宗主国との人的つながりの一切を取締り、対外債務の一切の返済を拒否し、遂には相手側からの一方的な国交断絶を誘い出した。
・これは実に、悲しいことである。見よ!敬虔なるケシズムたちはこの惨状を嘆いて居る。相手が嘗ての侵掠者であれ誰であれ、対立し決裂し争わんとすることは餘りにも悲しいことである!彼らが古めかしく自国主義だの排外主義だのと貶めて居るこのケシスト達は、どのリチスト達よりも世界の分断を惜しんで居る。なぜそなた達は、私たちが景勝を形成せんとするときに手を差し伸べないのか!彼らこそ、自分達のことしか考えて居ない。私たちは、地球上のすべての「国」が先ず自らの景勝を確保し磐石とし増強しようとするその道のりを支持し応援し、協力する。世界は先ず別々に存在し、いつまでも別々に存在し、いつまでも互いが別々であることを尊重し合って初めて手を携え合えるのである。
・彼らはリチストとしては、永遠にくたばるがいい!そしてその国のケシストとして、もっと立派であってほしい。私たちはそれを応援する。相変らずに邪魔をするなら、私たちはリチストとしての彼らたちを拒み続けることであろう。勝つも何も、私たちが既に真実である!真実にのみ、直ちにくだばれ!敬意を表し。全世界中のリチスト達へ。
〇〇公議国 景暦××年
〇〇公議国景勝大統領(アフリカ景勝機構会合にて)
・貴国の平和的意慾と何かを成し遂げんとする志には最大限の敬意を表するとともに、決して等閑にされてはならない我々からの期待を申し上げます。
・その期待には応えてもらわなければなりません。応えてもらえないということは即ち、我々や世界が残念に思うということに他ならない。貴国の謳われるところの景勝や理智や人命とは、専ら東アジアの特に貴国を発端とする世界革命の原動力かも知れないが、思うに世界で最もそれらの志を全くの慢心も驕りもなく推し進めることができるのは寧ろ我々や我が国であると実は自負するところがあるのです。
・世界の中で我々ほど歴史の中心から除外されてきた存在もない。あらゆる地位や価値が低く見積られ、いかなる分野に於ても同胞の活躍を見ることは珍しく、世界で最も潜在的に蔑まれて居る地域であろう。否定できない。我々は我々のためにこれを否定してはならない。さらに未だに民族間の分裂がある。貴国のように国が民が一体たるその前提に基く限り、我が国は常に不利である。
・そして然うであるが故、我々は訝しむ。内外から認められる地位や価値に既に恵まれて居る貴国は自らを劣性に立たされる存在であると謳いながら実際は更に劣性に立たされ続けて居る我々のことを優越感の担保としながら精力を得て、また都合の良いように利用するのではないか?本当に景勝を牽引すべきなのは最底辺に在る我々なのではないのだろうか?にも関らずやはり我々にはまだまだ力がないのをいいことに、貴国は結局は西洋のように上から物を言うのではないか。それはどこか、殖民地支配からの解放と称し進軍しておきながら単に支配権を引き継いだに過ぎなかった貴国の嘗ての姿に見間違えよう。
・しかし我々は信じて居ます。貴国の核廃絶の志には、信用に値するだけの誠意を感じ決意を感じ、人類への信頼を感じて已みません。
・信じてみましょう。経済生産力が常に強靭でありますように。旧侵掠者の支配によって失われた我々の文化を蘇らせて恵まれるように。同盟材財団下の貴重且つ強靭な国際人材の育成場として貴国や財団諸国へ国中を開放せんとする覚悟がある。信じてみましょう。貴国の誠意を裏切ることなく。なので支援を、できる限りの協力を我が国にも齎して頂きたい。貴国は英雄だ。英雄を今に、信じて居る
景明紀××年
〇〇〇〇〇〇連邦共和国大統領(首都に於ける外交会談にて)
・愛国ケシストどもめ!ひどく世俗的で気分的で大法螺吹きの差別主義者であり極めて狭小な自称知識人は、この国を騙し導いた末に家なき子へと陥れることだろう。
*劣性メシストどもめ!ケシストの無難そうな部分だけ頂戴して無難そうに旧時代的な人権意識を振り撒きながら結局のところ嘗ての左翼思想の劣化版だ。
・ケシストは見栄や何となくの男どものロマンの為にこの国の将来や人々の名も無き犠牲も多少は仕方がないと思えるような至極立派な少年である。
*メシストは人々に富を齎さず平等を齎さずただ旧左翼を懐古するようなお人好し闘争ごっこを繰り広げるかなり穏やかな活動家である。
・右派の残像!世間の負け犬。形だけの紙ペラ野郎。愛国弁慶。戦争ごっこ大好き人間!
*左派の残滓!訪問ペテン師。叛国家分子。百年愛想、万年餓死。薄紅色の綿ぼこり!
・お前らにこの国は任せない。
・お前らにこの国は任せられない!
+まあ、まあまあ、落ち着きなさい。一番に大切なのは、一番はじめに犠牲となる国民なのです。
・あ、優性リチストだ!取っ捕まえろ!!!
*あ、優性リチストだ!取っ捕まえろ!!!
西暦20××年
旧〇〇〇〇〇共和国内戦下、同国通信社による諷刺投稿
・アラブ諸国を訪れれば必ず「あなたは景勝主義者か?理智者か?人命主義者か?」と訊かれることでしょう。アフリカを訪れれば「崇高なケシストがおいでなさった!」と喜ばれることでしょう。ヨーロッパの小国に顔を見せれば「我々をリチストと見做しますか?我々は人命主義者より福祉的で、景勝主義者よりも国を愛して居ます」と半ば挑戦的に胸を張られることでしょう。東南アジアでは「なぜあなた達は然うも素晴らしいケシスト国民なのですか?」と熱心に問われ、アメリカでは「東洋の新時代的な右翼の英傑」と揶揄されましょう。
・返事には困るわけですね。今まで考えたこともない。いや諸外国ではそのように何々主義だの何々シストだの型に嵌めて言われるというのは百も承知で行ってるわけですけども、それにしてもそこまで肩肘張って景勝だ理智だ人命だなんて言わなくても良いのになぁと、まあ思うわけですよ。
・こちらと違って世界中の国という国というのは、潜在的にもとから分断されて居るような、そんな印象を受けてしまいます。それは日本が寧ろ比較的そうではないからなのかは分りません。ただどんなに建前的には単一の国民や文化風潮に纏められたように見える伝統的な国に於ても深いところでは皆バラバラだから自ずとそのような「イデオロギー戦争」になってしまうのでしょう。悪気はなく、単純に隣の人が猫なのか犬なのか鳥なのか熊なのか疑って居る節があるんじゃないんですかね。
・景勝か理智か人命か云々を言ってそれらをイデオロギーに再定義した結果、結局は人類は似たような思想闘争と内部分裂を繰り返し、また似たような対立へと回帰してしまいました。
・誤解されるかも知れませんが、私達はもっと臆病で内向きでそれで居て心強い仲間か窓口か助け舟を心のどこかに乞い求めてるような感じがしますから、よくも悪くも自然で穏やかな社会だと思います。景勝も理智も人命も、一度決められてしまえばそれはもう大人として社会の人として従うべき決り事でしかありません。そこに諸外国ほどの深刻な壁や隔たりは見受けられない。いや、それは決して国民の心が一つだとかみんな相手のことを考えてるだなんてこと言ってるわけじゃないんです。
・良い悪いではなく、柔らかい。私達は至極、柔らかいのです。
景明紀××年
〇〇〇〇景勝本議員(〇〇県理智論評大臣との合議配信にて)
ケシストたち(及び若干その他)の語録集