詩終 86 (自由)


自由なら
ゆるすだろう
自由なら
疑いはしない
自由なら
今を選ぶだろう
自由なら
自分がいるように
人々がいるとわかっているだろう
自由なら
困っても困っていないだろう
自由なら
しがみつかないだろう
自由なら
明日なんていらないだろう
自由なら
自由も不自由も
忘れているだろう
自由なら
あなたにもわたしにも
違いはないだろう
自由なら
どこに行ってもどこにも行きはしないだろう
自由なら
どこに行かなくてもいいだろう
自由なら
消えるものは消えるにまかせ
残るものはそっとしておくだろう
そのどちらをも
胸に抱くだろう
自由なら
いつも違うことをしていても
同じことをしているだろう
自由なら
誰や何と共にあっても
独りだろう
自由なら
波のように満ち引き
いつも同じではないだろう
風のように撫で、揺らし、動かすだろう
森のように栄え枯れ、栄え枯れるだろう
川のように流れているだろう
空のように雲を静観して
その上にいつもあるだろう
永遠に繰り返されないだろう
自由なら
何を知っても
何も知ってはいないだろう
自由なら
過去にはかえらないだろう
それでいて何も、無きものにはしない
自由なら
何もかも
何のためでもないだろう
自由なら
何を言っていなくても
言う人が言いたくても言えないことを
言っているだろう
自由なら
何もかもが消え去っても
消え去らないものがあることを知っている
そのものを生きるだろう
この命の舟に乗って

詩終 86 (自由)

詩終 86 (自由)

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-16

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