詩終 77 (水)


この水を与えたい
すくってビンに入れる
と、水はビンの形をとる
「違う、形は邪魔だよ
 形は意味を思わせる
 この水をこのまま
 与えたいのに…」

ここに
彼の姿が
彼の見つめる水源がある
だけ
彼は何もできない
何をしても
…彼はもどかしい

しかし彼の姿があるのだ
何をしていても
彼はそこにあるものだ

   そこにおとずれる者が。
   かがんで口をつけ、
   渇きを潤す。

彼は湛えられている
彼は水だった

彼はそれを知らずに
水面を見ている

彼はそれを知るだろう
そして水を忘れるだろう

詩終 77 (水)

詩終 77 (水)

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-16

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