詩終 77 (水)
この水を与えたい
すくってビンに入れる
と、水はビンの形をとる
「違う、形は邪魔だよ
形は意味を思わせる
この水をこのまま
与えたいのに…」
ここに
彼の姿が
彼の見つめる水源がある
だけ
彼は何もできない
何をしても
…彼はもどかしい
しかし彼の姿があるのだ
何をしていても
彼はそこにあるものだ
そこにおとずれる者が。
かがんで口をつけ、
渇きを潤す。
彼は湛えられている
彼は水だった
…
彼はそれを知らずに
水面を見ている
彼はそれを知るだろう
そして水を忘れるだろう
詩終 77 (水)