詩終 76 (朝)


起きてよ、起きて
…あ。おはよう
ああ
もうよかった
もう
たったひとつの朝を
同じ遠くを
目を覚まして見つめるあなたが
ここにいる、この現実が
幻ではなくここに

ぼくの綺麗事は散り散りになる
幾多の人と同じ朝を見たいのではなかった
向こう岸にたどり着いた
ら、それまでの足がかりはもう
いらない
ぼくは戻らない
渡る前の岸はもう
なくなった

いま立つかつての向こう岸
もまた
なくなるのだろう
ひとところに留まる川
ひとところに留まる風
なんて、ないように
ぼくは、あなたも
流れ

いつも おはよう
朝が過ぎても

詩終 76 (朝)

詩終 76 (朝)

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-16

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