詩終 73 (一)


何もゼロからじゃない
あなたの絵も
あなたの音楽も
わたしのこれも
彼が走ることも
だれかが朝を好きなのも
わたしが西日を好きなのも
あなたが何かに惹かれることも
わたしが月を見ていたいことも
影を見たいのも
光を見たいのも
わたしの愚かさも
あなたの愚かさも
わたしが川に見とれることも
あなたが海に寄りたいことも
人を求めることも
人を遠ざけることも
何かを言いたいということも
暗がりに沈みたいことも
明るみの元に立つことも
考え尽くすことも
燃え盛り求めることも
欲望も醜さも
反射する光
のきらめきに見惚れることも
何かがあふれるように湧き立つことも
よどみ滞ることも
朝と夜がある
その間もある
空と海がある
その間に山が川があることも
巡り移り変わることも
ふれあい、はなれることも
時が満ちることも
その時ではないことも
意味を探すことも
置き去りにすることも
右へ行くことも左へ行くことも
知ることも忘れることも
約束を破ることも
不自由も自由も
弱さも
揺らぎも
動かないものも

何も
分かれていない
ぼくら以前もぼくらもぼくら以後も
いま
ずっと
すべてはここにひとつ

ぼくら、分かれてはいない
わたしのものなんてないよ
誰が消えても
何も分かれていない

それは永遠の存在
唯一の生命、唯一の創造
なんで?
誰も知らないよ
答えは存在しない
存在するものに対しては

言わなくていい
言う前にそれはそこにあるから
言わなくていい
それはぼくらの言葉ではない

あなたは何もしてやいない
わたしは何もしてやいない
あなたは何もしなくていい
わたしは何もしなくていい
一だから
もしくは、一の中で


も名
忘れて
流れて

詩終 73 (一)

詩終 73 (一)

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-16

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