詩終 43


 捉えられないくらい素早く、色々なことが浮かんできたり考えたりしながら生きている。ぼくだけではないだろう。
 例えば日記を書くとして、すべてをいちいち書いていたら多分歩くこともままならない。しかし、一日が終わる頃にまとめて書いたところで、実に多くのものが思い出せない彼方へと消えている。
 もちろん、書き残されるものもある。自分にとって大きな関心事だったり、その日周辺で起こったことなど。でもきっと、後で読めたら素敵なことは、示唆を与えてくれるものは、そうして書かれなどしない些細な(もしかしたら重要な)ことの中にあると思われる。
 詩は余白の中にこそある、とか言われたりする。としたら、この書かれないこと、思い出されないその風のような何かこそ、まるで詩のようだ。

詩終 43

詩終 43

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-16

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