あれやこれや251〜256

あれやこれや251〜256

251 ミア・ファロー

 初めて観たのは『フォロー・ミー』
 好きだった人と観に行った。そばかすが魅力的な女優さん。
 ジョン・バリーによる主題曲も心を揺さぶる。

 この映画は『午前十時の映画祭』で『ショーシャンクの空に』『サウンド・オブ・ミュージック』『ニュー・シネマ・パラダイス』に次いでリクエスト第4位に選出された。
 50歳以上のリクエストでは、第1位だった。

フォロー・ミー
https://youtu.be/pYZ-QBolQR8

 ミア・ファローは1978年の『ナイル殺人事件」にはジャッキー役で出演。
 クリスティの小説では1番好きだった。犯人当てられたし。小説の最後覚えてる。
「ごめんよ、ジャッキー……」
「いいのよ、サイモン……」
 
 この女優さん、フランク・シナトラの奥さんだった。
 彼女が21歳、シナトラは50歳の時に結婚。
 しかし『ローズマリーの赤ちゃん』への出演をめぐって衝突し、2年後にピリオドを打つことになった。

 その後ファローはユダヤ系ドイツ人のピアニスト、アンドレ・プレヴィンと再婚。 当時プレヴィンはクラシックの指揮者に転向して間もないころで、英国のロンドン交響楽団の音楽監督だった。
 ふたりは1979年に離婚したが、その後も良い関係を保った。

『ローズマリーの赤ちゃん』は、アイラ・レヴィンの小説を原作とした、1968年制作のアメリカのホラー映画だが、物語の内容に負けず劣らない曰くつきの映画としても知られている。

 本作の撮影はジョン・レノン夫妻が住んだことで有名なダコタ・ハウスで行われた。
 つまりこのアパートの前でジョン・レノンはファンによって射殺された。
 
 プロデューサーのウィリアム・キャッスルは、悪魔崇拝者とされる謎の人物から
「苦痛を伴う病気を発症するだろう」
という手紙を受け取った後で腎不全を起こした。

 音楽を担当したクシシュトフ・コメダは、屋外パーティの最中、脚本家だったマレク・フラスコにふざけて突き飛ばされて崖から転落し、脳血腫を起こして昏睡状態となり翌年37歳で死去。結果的にコメダを死に追いやったフラスコは、コメダの死のわずか2か月後に35歳で謎の死を遂げた。

 映画公開から1年後、ロマン・ポランスキー監督宅がカルト教団に襲われ、監督の妻、ヘア・スタイリスト、監督の親友、その恋人が惨殺される「テート・ラビアンカ殺人事件」が起きた。


【お題】 そばかす
 

252 同志

 小学校4年の時、ボクは三沢と同じクラスだった。同じ班に(こう)っていう女の子がいて、香るっていう字。香るなのに動物臭くて虐められてた。
 1年の時はあんなじゃなかったのに。いきもの係を一緒にやった。かわいい女の子だったのに。
 同じ班で香は宿題やってこないからいつも残り掃除。香は口もきかず長い髪は汚くて、前髪が目にかぶさり上履きも小さくて、あれは育児放棄? 
 臭い臭いって虐められるのを助けたのはボクだよ。三沢じゃない。

 
 ボクたちは香に宿題をやらせようと家に行った。庭の木は手入れされずお化け屋敷みたいだった。香は縁側でハムスターと遊んでいた。それはもう魅力的で三沢も目を輝かせてさわらせてもらった。
 女の子が、ダメ、交尾しちゃう、なんて喋ってんの。そこにオヤジさんが帰ってきて、増えたハムスターを怒り処分すると言うと香は抵抗した。私も死ぬからねって。そのハムスターをボクたちはもらってきて育てた。

 香のかあちゃんも男を作って出ていった。ボクたちは同志が増えたと喜んだ。母親に捨てられた三沢と香。父親に出て行かれたボク。ボクたちは同志連盟を作り、絶対親を許さない、親が死んでも泣かない、墓に唾を吐きかけてやろうって誓った。
 ボクたちは香がいじめられないよう前髪を切ってやった。うまくいかず香は泣き出した。しょうがないから三沢のおかあさんに切ってもらった。新しいおかあさんは世話好きだから、シャワーを浴びさせ服を洗濯しきれいにしてやった。父親のところへ行き話していた。忙しいと言う父親に虐待ですよって負けていなかった。おかあさんは香が自分のことは自分でできるよう教えた。毎日シャワーを浴びること。歯を磨くこと。髪の結き方。家の掃除、洗濯、簡単な調理。 
 だんだん香はきれいになり香の家もきれいになっていった。とうちゃんは長距離の運転から日帰りバスの運転手に変わって、香はひとりで夜を過ごすことはなくなった。ボクたちは香のとうちゃんのバスに乗ったよ。香は嬉しそうだった。とうちゃんはマイクを持って喋り乗客は拍手した。

 中学になると香は同志から抜けた。もう女らしくなって香を好きだという男もいた。三沢もボクとはレベルが違うから、あいつは成績は塾にもいかないのにトップだったから、そんなにくっつくこともなくなった。あいつは友達も作らず勉強とピアノに打ち込んでいた。香以外の女とは話もしない。いや、香も女っぽくなると話さなくなった。
 3年の夏休みに三沢を生んだ母親が亡くなった。それが原因だろう。2学期からあいつは変わった。ボクが話しかけても無視した。そのうちあいつは不良グループといるようになった。獣医のおかあさんのところから盗んだモルヒネやってるとか噂になって、ボクはどうにもできないでいると、香がやってきて、連れ戻しにいくわよ。我らが同志をってすごい剣幕で。香は自分ちのでかい犬を連れて不良の溜まり場に乗り込んだ。
 玄関で、
「出てきなさい。三沢君」
て大声で叫んだ。ワルがふたり出てきてボクはひるんだが、香は犬をけしかけてまた叫んだ。
「三沢君、こんな人たちと付き合っちゃダメ」
 あいつはようやく出てきた。
「三沢君、母親が死んだくらいでなにやってるの? 忘れたの? 親なんか乗り越えるんだって。墓に唾吐きかけるって。私はやるわよ。誓ったでしょ」
「静かにしろよ。今、犬が死にゆく」
 香の犬を門につないでボクたちは中に入った。部屋の中にバスタオルが敷いてあって、ワルのリーダーが犬をさすりながら泣いていた。皆初めて見た。いや、三沢は祖父母の死に立ち会っていた。元々は三沢のおかあさんが保護した犬で三沢が名前を付けた。シャーロックって。あいつはシャーロック・ホームズ好きだったから。シャーロックは小学生の時にリーダーに引き取られていた。シャーロックは苦しそうに見えたがモルヒネ与えられて苦しくはないんだ、と三沢が言った。下顎呼吸って言うんだ。死に向かうとこういう呼吸になる。
 苦しそうだよ。早く楽にしてやりたい。もうひとつモルヒネ飲ませてもいいか? シャーロックはもう飲み込めなかった。集まってた不良たちが犬の死に向き合っていた。1時間も見守ると犬が大きな声で泣き、最期がくるのがわかった。三沢はサッと抱き上げた。その瞬間犬はおしっこもうんちもした。ボクたちは犬をきれいにしてやり箱に入れた。三沢は手を洗い香を見た。香も犬の死に泣いていた。
「香、勇気あるな、同志」

 三沢はもとの優等生に戻り卒業式。あいつは女子にボタンをむしられボロボロだった。そこへ香の登場さ。きれいになった香は三沢の前まで歩いてくると、
「握手してください」
と手を出した。女子が見ている中であいつは香と握手した。
「香、おとうさん、大事にしろよ」
かっこよかったな。



【お題】 いきもの係

253 同志 続き

 母が死んだ。知らない街で。保険金が入った。

 知らない街に墓参りに行った。墓にそっと唾を吐きかけた。うまくかからなくてもう1度かけた。

 記憶に残る母は長い髪を金髪に染め、黒ずくめの服装で学校に来た。ある日母は消えた。猫と一緒に。私ではなく猫を連れて消えた。

 金は可哀想な犬と猫のために使おう。

 それから年賀状を。同志に。三沢君と治に。

 おめでとう。母が死んだわ。あの日の誓い、私は守った。泣かなかった。唾を吐きかけた。やったわよ。

  ︎

 久々に訪れた三沢邸。亜紀さんに会うのも久しぶりだ。私と父を救ってくれた恩人、私にいろいろ教えてくれた。生理のときも、女性の体のことも避妊のことも……この人の義理の息子に私は恋をしていた。初恋だ。

 三沢君がいた。中学を卒業したあとも何度か会っていた。三沢君の家の庭で。卒業式に大勢の前で握手を求めた私の気持ちは、いつも素っ気なくはぐらかされた。
「また捨て猫か。去勢されるのか、かわいそうにな」
 動物好きな私たちは慣れていた。飼っていたハムスターの下腹部が腫れて大きくなり、心配して亜紀さんに見せたときは
「睾丸よ」
と言われて安心した。
「ハムスターのタマタマは立派なの」
 睾丸、去勢、交尾、生理、……小学校4年だった私と三沢君と治は、そういう言葉を恥ずかしいとも思わず使っていた。
 私が亜紀さんに会いに行くのは里親探し……三沢君は会うたび背が伸びていた。
「香に彼氏ができたって?」
「え、ええ。三沢君は?」
「失恋した」
「男に?」
 懐かしい舌打ち。
「失恋? あなたが? 女に?」
「ああ、治に負けた。あいつはいい奴だからな。僕よりずっと」
「治ちゃん……」
「納得だろ?」
「そうね。あの子と比べられたらかなわない」
「おまえはなぜ治を好きにならなかった?」
「そうよね。治ちゃんにすればよかった」
「……負けた。負けた」
「ま、恋愛ほど苦痛と努力のいるものはありません。それに耐えれるだけの人間におなりなさい」
「青春論かよ……おまえは強いよな」

 中学3年の夏、三沢君を捨てた母親が亡くなった。ずっと優等生でいたこの家の長男は、不良グループと付き合うようになった。亜紀さんの動物病院からモルヒネ盗んで……とか噂になり、私は治と飼っていた大型犬を連れて、取り戻しにいった。同志を。
「そうよね。あなたのために不良の巣窟に乗り込んだ」
 三沢君は、かつて亜紀さんが保護した犬の最期を看取っていた。三沢君が名付けたシャーロックは、まだ無邪気だった同級生に貰われていたのだ。
「恐れ入った。付き合わないか? 僕たち、いいコンビだ」
「女だと思ってないくせに」
「好きだったよ。髪がボサボサで汚くて動物臭くて……」
「言わないでっ! 私はひとりで暮らしてたのよ」
 思い出したくない。父は長距離の運転手。手入れされなくなったお化け屋敷のような家に、ほとんどひとりで暮らしていた。まだ10歳だった。
「お菓子の袋をナイフで切って、手も切った。血が襖に飛び散った。誰もきてくれない。私はそのまま泣き疲れて眠った。あんたとは違う」
 感情の失禁。私はおかしい。三沢君は私を抱き寄せた。憐んで。
「いい匂いだ。ずっとあのままでいればよかったのに。おまえが男だったらよかった」
「あんたは色が白くて女みたいだった。泣き虫だった。雷を怖がってたくせに」
「おまえと治に助けられた。おまえは父親にも歯向かって強かった。羨ましかったよ」
「私は……あなたが羨ましかった。亜紀さんがおかあさんで羨ましかった」
「じゃあ、結婚しようぜ。好きなだけ犬も猫も飼ってやる」
「この家で? 亜紀さんとおとうさんと?」
「おまえの家に住んでもいい。オヤジさんとはうまくやれるよ」
「彼もそう言ってくれるの。父に気に入られてる」
「クソッ。また振られた」
 私たちは声を出して笑った。
「血が、怖くない? 母の血。結婚するの怖い。私も母みたいになるかも」
「……結婚か。恋愛の終結。恋の惰性もある。移り気もある。しかし、そのために一々離婚していたら、人の一生は離婚の一生となるだろう……」
「青春論か。亜紀さんがくれた本」
 亜紀さんが勉強の遅れをみてくれた。読書の楽しみも教えてくれた。
「ピアノ弾いてよ。小さな木の実」
「絶対いやだ。いやな女」

 私は口ずさんだ。歌は過去を蘇らせる。『小さな木の実』は小学校6年のときに音楽会で歌った。三沢君は伴奏しながら歌った。まだ高音のきれいなボーイソプラノだった。三沢君は初めての練習のときに途中で泣き出した。父親を思い泣き出した。私は父との仲が修復できていたが、三沢君は妹も生まれたが寂しかっただろう。治は天使だ。治は他人の悲しみには敏感だ。すぐに気づき大声で歌い、わざと音を外して皆を笑わせて誤魔化した。私も大声で歌った。私たちは同志だった……

254 弱肉強食

 いつも思っていた。
 地球は悪夢の星。
 弱肉強食の星なんて。
 神がこんな残酷な星を作ったのなら、なんてひどい奴。なんてひどいことを……試練を与えて見ているだけ。
 神はなにもしないのだ。
 弱肉強食の星なんて。神も仏もありゃしない。

 なんて、罰当たりなことを言っても平気。信じてないし。
 偶然できただけの話。

 でもね、強けりゃいいってもんじゃない。
 皮肉なことに、ユニークなことに(?)、ありがたいことに、生物史においては強者が滅び、弱者が生き残ってきた。

 地球に生命が生まれたころ、直径数百キロメートルの小惑星が地球に衝突した。
 そのエネルギーで、すべての海の水が蒸発し、地表は気温4000度の灼熱と化した。そして、地球に繁栄していた生命は滅んでしまった。

 海洋全蒸発は何度か起こった。このときに生命をつないだのが、地中奥深くに追いやられていた原始的な生命だ。

 命をつないだ生命に訪れた次の危機が、地球の表面全体が凍結してしまうような大氷河期だ。この時期には、地球の気温がマイナス50度にまで下がった。
 全球凍結によって、地球上の生命の多くは滅びてしまった。しかし、このとき生命のリレーをつないだのが、深海や地中深くに追いやられていた生命だったのである。

 そして、古生代カンブリア紀にはカンブリア爆発と呼ばれる生物種の爆発的な増加が起こる。カンブリア爆発によって、さまざまな生物が生まれると、そこには強い生き物や弱い生き物が現れた。
 強い生き物は、弱い生き物をバリバリと食べていった。強い防御力を持つものは、固い殻や鋭いトゲで身を守った。

 その一方で、身を守る術もなく、逃げ回ることしかできなかった弱い生物がある。その弱い生き物は、体の中に脊索と呼ばれる筋を発達させて、天敵から逃れるために泳ぐ方法を身につけた。これが魚類の祖先となるのである。

 やがて、脊索を発達させた魚類の中にも、強い種類が現れる。すると弱い魚たちは、汽水域に追いやられていった。そしてより弱い者は川へと追いやられ、さらに弱い者は、川上流へと追いやられていく。
 こうして小さな川や水たまりに追いやられたものが、やがて両生類の祖先となるのである。

 巨大な恐竜が闊歩していた時代、人類の祖先はネズミのような小さな哺乳類だった。私たちの祖先は、恐竜の目を逃れるために、夜になって恐竜が寝静まると、餌を探しに動き回る夜行性の生活をしていた。
 常に恐竜の捕食の脅威にさらされていた小さな哺乳類は、聴覚や嗅覚などの感覚器官と、それを司る脳を発達させて、敏速な運動能力を手に入れた。

 敵に追いやられながら、私たちの祖先は生き延びた。
 大地の敵を逃れて樹上に逃れた哺乳類は、やがてサルへと進化を遂げた。そして、豊かな森が乾燥化し草原となっていく中で、森を奪われたサルは、天敵から身を守るために、二足歩行をするようになり、身を守るために道具や火を手にするようになった。

ーーーー

 過去5回の大量絶滅で生き延びたのは弱者だった。
 弱者こそが生命史を育んできたのだ。
 そして地球最大規模の大量絶滅が、今まさに進行中。現在、6回目の大量絶滅の危機に迫っている。

 過去の大量絶滅は、火山の噴火や隕石の衝突など物理的な現象によって引き起こされてきた。しかし6回目の大量絶滅は、生物によって引き起こされている。
 その原因となる生物こそが、人類である。

 過去に大量絶滅の憂き目にあったのは、地球を支配した強者たちだった。そして敗者たちが新しい時代を築いてきたのだ。
「地球を守ろう」と人は言う。「生物たちを守ろう」と人は言う。しかし、滅びるのは地球の支配者である人間の方ではないだろうか。

 人類が滅んだとしても、地球はまったく影響を受けない。生物たちは人類の巻き添えを食うかも知れないが、やがて新たな生物たちが出現し、新たな生態系を築き上げることだろう。

 38億年の生命の歴史の大激変に比べれば、人間が出現し、人間が滅びたとしても、何の影響もないのだ。



 では、地球が『弱肉強食』の星でなかったら?

 自然界における「食う・食われる」の関係は、種の数を適切に保つ調整機能を果たしている。
 捕食者がいなくなると、草食動物などが際限なく増え続け、食物 (植物)を食い尽くしてしまう。
 食物がなくなれば、結果としてその種自体も飢餓で絶滅し、緑のない荒野が広がることになる。

 人間社会における「弱肉強食 (競争)」がなくなると、平和になる一方で、発展の原動力も失われる可能性がある。
「他社より良い製品を作りたい」「より豊かな生活を送りたい」という競争心がなくなるため、科学やテクノロジーの進歩が極端に遅くなる。

 努力しても結果が変わらない (差がつかない)世界では、新しいことに挑戦するインセンティブが働かなくなる。

 弱肉強食がない世界は、「奪い合い」ではなく「分かち合い」だけで成り立つ。
 争いにエネルギーを使う必要がないため、全ての生命が最小限のエネルギーで共存する、極めて静かな世界になると予想される。
 弱い者が切り捨てられないため、個体としての生存率は上がるが、種としての強靭さは失われるかもしれない。

 弱肉強食という言葉は残酷に聞こえるが、実際には「生命の循環」と「進化のエンジン」としての役割を担っている。
 もしこの仕組みがなければ、世界は争いのない平和な場所になるかもしれないが、同時に変化も進歩もない、停滞した世界になる可能性が高いといえる。


追記

 小惑星が地球に衝突するのを防ぐ方法

 小惑星が地球に衝突しようとしているとき、核爆弾は土壇場での選択になる可能性があり、他のオプションを展開する時間は残っていない。
 小惑星から適切な距離 (表面ではなく)で核爆発物を爆破して、現在の経路から小惑星を押し出す。 
 長所は、既存の技術を使用してミッションを比較的迅速に実施できること。
 ロケットに核弾頭を搭載し発射することができる。 短所は、小惑星が粉々に砕ける可能性があり、さらに大きな損傷を引き起こす可能性がある。


https://president.jp/articles/-/28557?page=3
https://shuchi.php.co.jp/amp/article/6257?p=3
https://president.jp/articles/-/28557?page=2
https://starwalk.space/ja/news/should-you-worry-about-an-asteroid-hitting-earth

255 舞踏会

【お題】 パーティのあとで


 はだか電球 舞踏会

 踊りし日々は 走馬灯
(赤色エレジー あがた森魚)


 漫画家を目指す駆け出しのアニメーター、一郎と、トレーサーの幸子。
 先の見えない貧しい暮らしの中、二人は愛だけを頼りに同棲を始める。
 若い二人のつつましくも幸せな生活。
 しかし、冷酷な現実によっていつしか無力な愛は崩れ去る……

https://www.toei-anim.co.jp/sp/ganime/sekishoku/index.html
 
 あがた森魚(もりお)さんの『赤色(せきしょく)エレジー』
 レコードを買ったわけでもないのに、何故か覚えている、メロディーと歌詞、歌手の変わった名前。調べてみたらまた発見が……

 ︎
作詞・作曲 あがた森魚、八洲(やしま)秀章

愛は愛とて何になる
男一郎 まこととて

『赤色エレジー』は、林静一が漫画雑誌『ガロ』に1970年1月号から1971年1月号まで連載した劇画。
 また、同劇画をモチーフとして1972年4月25日に発売されたあがた森魚のシングル曲。

 漫画があるなんて知らなかった。赤色は赤貧のこと。
 主人公は幸子と一郎。ふたりはアニメ業界の底辺で仕事をしている。小さなアパートの一室でいっしょに暮らしているが、お金も将来の展望もない。
 一郎は漫画家になりたいのだが、道は開けない。幸子は親に普通の結婚を迫られている。
 特別な事件はなく、傷つけ合ったり、仲直りしたり……出口が見えない情況の中でふたりのせつない生活が続く。
 このマンガに惚れ込んだあがた森魚が同名の唄を作り大ヒットした。当時の大学生には幸子と一郎の世界に憧れて同棲するカップルもあった。

 林静一の同名劇画に、あがたが感銘を受けたことにより作られた。そのため、林がシングル盤のジャケットイラストを描いている。

 曲が八洲の作曲した『あざみの歌』に似ていることからレコード会社側の判断で八洲の作曲と表記したが、実際は作曲もあがたが手掛けている。
 あがたは直接八洲と会っており、その際に八洲から譜面を出されて「一緒じゃないか」と指摘されるも、「別にあなたの曲を聴いてこの曲を作ったわけじゃない」と反論、押し問答をしてそのままになった。
 後日「作曲者は八洲先生になりました」と報告を受け、解せないまま終わりになったという。
(wikipediaより)

 たまたま車の中で『あざみの歌』を聴き、そのときに似てると思ったから『赤色エレジー』を思い出したのでしょう。
 オマージュだのパクリだの、よくわからないけど……

 メロディーはたった12音階を組み合わせて出来ている。
たった12音階のパズルでも『良いメロディー』と人間が感じられる組み合わせはごく僅か。
 自分が『良いメロディー』だと思って考えだしたメロディーが、既に既存曲で存在していた! なんて事も珍しくない……
 自分の知らない楽曲をパクってた……なんて、防ぎ用がありませんよね。

『無意識な盗作』を防ぐ為に使用するツールがある。
『弾いちゃお検索」はYAMAHAが制作しているツールで、メロディーの音階を打ち込むと、そのメロディーに似ている楽曲を表示してくれるというもの……

(お気に入りの音楽3話から)

256 悪女

【お題】 冬の大三角関係



 2月の寒い夜、女が門の前に立っていた。
 はかなげな後ろ姿、白いコート。風が吹いて木々がざわめく。長い髪がなびく。

 亡霊! ママの亡霊!

 ああ、飲みすぎた。

 亡霊が振り向いた。

三角(みすみ)瑤子……さん?」

 瑤子は義母の亜紀の8歳下の従妹。獣医の大先生の姪。
 亜紀が父と結婚し、瑤子が東京で働くようになると毎週のように我が家に訪れていた。

「あの坊や?」
「どうしたの? こんなに遅く?」
「……出入り禁止」
 
 ああ、確か、父の部下との婚約を破棄した。結婚式間際で破談になり亜紀も父も大変だった。それ以来、瑤子は来なくなった。
 
 瑤子の父親が入院し彼女は仕事を辞め故郷に帰るという。
 愚図る瑤子を僕は連れて家に入った。
 しかし……瑤子を見た両親の異様な雰囲気。
 亜紀も父も最初言葉が出なかった。亜紀はすぐに平静に戻ったが、父の態度は異常だった。立ち上がり出て行った。なにも言わずに。

 亜紀は1晩だけよ、と言い父のところへいった。僕は茶と菓子を出した。冷淡な扱いをされた瑤子に同情した。
「大きくなったわね。いくつになった? まだ小学生だったのに」
「もう、21歳だよ。瑤子さんは?」
「23。女は7掛けよ」
「通るね」
「あなたの彼女でも通るわ」
 沈んでいた女がお喋りになった。
 亜紀が戻り部屋に通す。客間でなにか話していた。瑤子は泣いているようだった……?
 
 夜中、瑤子のことが気になり目が覚めた。父の態度はひどすぎた。当時、両親は父の部下と瑤子とよくゴルフに行った。父は、気に入っていた部下と亜紀の従妹を一緒にさせようとしていた。部下は瑤子に夢中だった。破談になったときは酔って大変だった。父も亜紀も謝っていた。

 瑤子には当時付き合っている相手がいた。不倫だ。それを精算しようとし結婚に逃げ、逃げられず壊した。

 かすかに音楽が聞こえ僕は廊下に出た。書斎から明かりが漏れていた。ノックすると、どうぞ、と瑤子が答えた。
 瑤子は椅子に座り曲を聴いていた。23歳に見える女は僕にも座らせた。化粧を落とした瑤子は変わらずきれいだった。
「素顔もみられるね」
 瑤子はむくれる。 
「素顔のがいいって言われたわ」
 不倫相手にか? ナチュラルなロングヘアも。
「どれだけ努力してると思う? お金も。亜紀は手入れしなさすぎ。亜紀は子供の頃から本ばかり読んでた。私はおしゃれにしか興味なかった。皮肉ね。亜紀はステキな旦那と息子を手に入れた」
 勝手に喋り目を閉じ曲を聴く。
「この曲好きだわ。死ぬときに聴いていたい」
「父の好きな曲だよ。エルガーのチェロ協奏曲。エルガーは愛妻家だ。妻になるアリスに『愛の挨拶』を作曲した」
「黙って!」
 怒った……? ああ、『妻』は禁句か?
「……亜紀はどう?」
「……いいおかあさんだよ」
「英輔さんは、愛してるのかしら?」
「決まってるだろ」
「あなたは愛してる人はいないの?」
「ふられてばかりだ」
「じゃあ、私と一緒ね」
「……明日帰るの?」
「そうよ。送ってくれる?」

 翌朝父は早くに出かけた。急な出張が入ったらしい。瑤子は早くに起きて朝食を作ったが、父は食べずに出かけたらしい。それを僕に出した。亜紀よりうまい。盛り付けもセンスがいい。
「今日帰るんでしょ?」
「英輔さん、いつまで?」
「あさってよ」
「おみやげ買いに行くから、英幸(えいこう)クン、付き合って」

 買い物に付き合わされた。
 両親に服を買っていた。下着売り場では、僕は離れて待っていた。
 たくさんの荷物を車にのせ家に戻った。瑤子は買った下着の包みを亜紀に渡した。プレゼントよ、と。
 亜紀が開ける。瑤子を見て、僕を見た。
「たまに、そういうの付けなさいよ。亜紀もおしゃれしなさいよ。今に英輔さんに愛想尽かされるわよ」
 亜紀の自信たっぷりの笑い。瑤子は気にさわったようだ。出ていった。
「幸せそうだね? パパに愛されてる自信あるんだ?」
「男は女の最初の男になりたがり、女は男の最後の女になりたがる。オスカー ワイルド」
 僕は思わず亜紀をみつめた。亜紀はパパの最後の女だ。そうでなきゃ困る。
 黒の下着を亜紀がつけるところを想像する。子供の頃抱きしめてくれた重量感のある胸の感触、スポーツで鍛えていた身体。まだ余分な脂肪は付いていない、はずだ……
 
 瑤子は書斎で音楽を聴いていた。ベートーベンのテンペスト。
「楽譜ない?」
 階下に降りピアノを弾いた。
「これだけは弾けたんだけどな。弾いてよ、ボク。うまいんでしょ?」
 僕は弾いた。瑤子は目を閉じている。
「終わったよ。拍手はないの? 寝てるの?」
「聴いてるわよ」
 次はスクリャービンのエチュード悲愴。
「明日ゴルフしない?」
「今日帰るんだろ?」
「明日ゴルフして夜帰る」
 亜紀はダメだとは言わなかった。

 ゴルフも久しぶりらしい。亜紀のウェアを着た瑤子は人目を引く。うまくはない。下手だ。空振りもする。僕が笑うと彼女はむくれ、目を閉じ集中した。僕たちは恋人同士に見られた。きれいでいることが瑤子の仕事。性格の違う亜紀のことは好きではないらしい。

 帰りの車の中、
「音楽はいらない。なにか喋って」
 瑤子は目を閉じている。
「もう、戻ってこないの?」
「そうよ。田舎で埋もれる。朽ち果てる……」
 恋人は? とは聞けない……
「喋ってよ」
「不倫……」
「知ってたの? 坊や」
「大騒ぎだったからね」
 瑤子は窓を開けた。出してはいけない話題。僕も窓を開けた。風が気持ちいい。瑤子の長い髪がなびく。
「……亜紀をどう思う? 魅力ある?」
「亜紀はちょっと面白い女だよ、って父は言うけど、ちょっとどころじゃないよ」
「面白いわね。確かに。亜紀は一生独身だと思った」
「亜紀はいなかったの? 結婚しようと思った男?」
「いいわよね。社長夫人」
「亜紀は……物欲はない」
「豚に真珠」
「ひどいな」
 瑤子の胸元に赤いサンゴのネックレスが見える。亜紀はほとんどアクセサリーを付けない。
 瑤子は目を閉じている。眠ったのか?
「話してよ。なんでも。音楽の話、映画の話、本の話。初体験でも……」
「……」
「亜紀と……想像しなかった?」
「え?」
「よくあるじゃない? 義母とやっちゃうの」
「よせよ。恐ろしい」
「去勢されるわね」
 瑤子は声を出して笑った。
「あなたのおかあさんは幸せね。死んでも忘れられない」
「……僕の母は亜紀だよ」
「〜〜死んだおんなより〜〜もっと哀れなのは〜〜忘れられたおんなです〜〜」
「なんだよ? その歌?」
「鎮静剤」

 瑤子が帰る日は伸びていく。その夜は疲れたからと眠ってしまった。
 翌日の昼過ぎ、僕は瑤子を送った。駅までのつもりが実家まで。途中植物園に寄り、寒い庭を散策した。瑤子は腕を組んできた。紅茶を飲みアップルパイを食べた。瑤子は目を閉じ思い出に浸る。不倫相手と来たことがあるのか? もう精算してきたのだろうか? 

 実家に着いた。母親は帰りが遅くなるという。広い家に瑤子とふたり。瑤子は荷物を片付けシャワーを浴びに行った。

⭐︎

 期待していた。
 誘惑したのは彼女のほうだ。
 指の逍遥。瑤子は目を閉じている。
「ペチャパイだと思ってた。結構あるんだな」
「もっと褒めなさい。きれいだって言って。名前を呼んで。愛してるって言って」
 ベッドの上ではいくらでも言える。いや、本気になりかけている。23歳に見えるひと回り年上の女に。
「瑤子、きれいだよ。愛してる」
「大丈夫よ。今日は安全日だから」
「……」
「ドクター亜紀に教育された? 年上の女に騙されるなって」

 思考停止。瑤子は誘惑した。彼女は全身全霊で僕を誘惑した。瑤子は目を開けない。珊瑚のペンダントだけを身につけた瑤子。血赤(ちあか)の珊瑚……血赤……
 瑤子は上になる。長い髪が揺れる。血赤の珊瑚が揺れる。

 思い出す。亜紀の胸にも下がっていたことがある。
 なぜ? 
 目を閉じ喘ぐ瑤子が亜紀に見えた。亜紀、この世で1番尊敬する女……亜紀の下にいるのは?
 
 ダメだ。
 瑤子はなにも言わなかった。気づかれたことに気づいても。
 言葉より先に手が出ていた。女に暴力をふるった。
 平手だ。たいしたことはない。


⭐︎

 途中ホテルで1泊した。体を洗い流す。なにもなかったことにする。亜紀の目が怖い。見破られる。

「実家まで送って観光してきた」
 亜紀は怪しむ。
 血赤の珊瑚。気持ち悪いから覚えていた。でも確かではない。思い違いか? 思い違いかも……? 思い違いであってほしい……

 亜紀の留守のときに僕は探した。瑤子のネックレスと同じもの。亜紀の胸にかかっているのを見たのは確かなのか?
 夫婦の寝室をそっと開ける。片付けの下手な女の部屋。僕は亜紀の宝石箱を開けた。探しているものは見当たらない。感のいい女はとっくに隠していた。なぜか手に取るようにわかる。この乱雑な部屋はひとつでも動かせばわかるだろう。亜紀は僕がやることをわかっている。

 思わぬところからそれは露見した。僕にも亜紀のやることはわかるようになっていた。妹のおもちゃ箱にそれはあった。

 亜紀は僕に見せまいとして手の中に隠した。
 僕は亜紀の指を力ずくで開かせようとした。互いの目には憎しみがこもる。
「私はおまえの母親よ」
 なおも続けると、足を蹴られた。
「見なくたってわかるよ。珊瑚だろ? 瑤子のおとうさんにもらった?」
「そうよ。叔父は私と瑤子に同じものを買ってきた」
 僕は亜紀の顔をじっとみつめた。眉ひとつ動かさない。とても太刀打ちできない。
「瑤子はあなたにもらったって」
「まったく……そうよ。パパのプレゼントよ。妻と妻の従妹に同じもの。面倒くさいから同じもの。瑤子は喜んだでしょ。妻と同等の扱いをされたと思ったかも」
「パパは寝たの? 瑤子と。おかあさんは妊娠してた」
「パパを侮辱しないで」
 殴られると思ったが亜紀は我慢した。
「私の息子を誘惑するなんて。瑤子の耳を薬でつぶしてやるわ。自慢の手足を切り落とし、両目をえぐり、薬で喉もつぶしてやる。それから……」
 さすがにあとは言わなかった。
「この家にやっと穏やかな暮らしが戻ったのよ。それを壊さないでくれって、パパは瑤子に土下座して頼んだのよ。瑤子は諦めるしかなかった。父親が危篤になったとき、なんて言ったと思う? パパに会えるのはもう不幸があるときだけだって。家に来たとき追い返していればよかった」
「なにもないよ。僕たちはなにもない。瑤子はそんなにバカじゃない」
 亜紀がまくしたてたおかげで僕は冷静になれた。亜紀はもう僕の様子から真実を見抜くことはできなくなっていた。
「おかあさんはどうしてパパと結婚したの? あんな弱くて情けない男。僕のため?」
「弱くて情けない男が好きな女もいるのよ」
「パパとは……うまくいってるの? 忙しすぎて………………」
「疲れたなんて言わせないわ」
「……負けた」
「勝ったわ。ハハハ」
 顔色ひとつ変えない。何百ものオスを去勢してきた女だ。
 見透かされなかったか? 瑤子とあなたを重ねたこと? 知られたら生きていけない。あなたは、
「光栄だわ、エイコウクン」
 なんて言うだろうな……

 電話して怒りをぶちまけようと思ったがやめた。2度とこの声を聞かせてやるものか。亜紀でさえ父と間違えるという、パパそっくりの声を。
 パパに会えるのは不幸があったときだけ……
 哀れな女だ。
 
 家を出てアパートを借りると言ったとき、亜紀はもう瑤子のことは聞かなかった。
「いつまでも家にいるほうがおかしいわね。勝手にしなさい。そのかわり、全部自分でやるのよ」
「そっちこそ。ちゃんと掃除しろよ」
 涙が出そうになって急いで家を出た。
 殴ってくれ。2度と妄想するなと叩きのめしてくれ。
 もうこの家には戻れない。

あれやこれや251〜256

あれやこれや251〜256

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-15

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