愛
愛することはたやすい
しかし、愛しつづけることは困難である
希望を持つことはたやすい
しかし、希望を持ちつづけることは困難である
・ ・ ・
対象は変化する
変化するものを愛しつづけることは困難である
これはジョークではない
真実である
また、もし対象が変化しないものであったならば、どうなのであろうか
仮に対象が変化しないものであったとしても、やはり、愛しつづけることは困難である
なぜならば、愛する自らが変化してしまう可能性があるからである
このようにして愛は変わりやすく、愛しつづけることは困難である
あなたを永遠に愛します、という時、それはその時の私とあなたが愛し合ったという事実が確かだった事を指しているのであって、その言葉通りに愛が永遠であるとは限らないのである
永遠の愛
何という美しい言葉だろう
人は別れてはじめて失くした愛を思い出す
過去という時間がそこで止まっているのならば、愛は永遠である
悲しみを少しだけ添えて、愛は変わらずにそこにある
「 詩集 愛 」より
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現在の時刻は〇〇時〇〇分
あと〇〇分後に到着します
予定に変更はありません
了解した
君は〇〇分に一度はこちらへ報告をする事になっている
しかし、これは会話ではない
報告という事実確認の記録と、それに基づいた予定の進捗の度合いを再度確認するためのものだ
それは君にとっても、私たちにとってもミッションを遂行するために必要な事なのだ
承知しています
次の報告は到着前の〇〇分後に行います
現在の状況ですが
写真を一枚見ています
・ ・
何の写真だね?
美しい地球の写真です
嘘を言うな
地球が笑っている写真か
窓から見えるだろう
ふ ふ ・・
お見通しのようですね
・ ・
君の一番の敵は孤独だ
心のエアポケットも危ない
危険性が自己管理の範囲を超えた時には・・それだ
まあ、写真もいいが、人の声を聞くことだ
君は一人じゃない
写真をポケットに入れて、到着に備えて作業の確認をしてくれないか
了解です
不安があります
でも前に進みます
それでいい
・ ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
彼の処遇はその後、どうなったのかね
ミッション遂行に対する条件の通りになりました
・ ・
私が許可を出したわけではないのです
情報管理室長の〇〇〇〇〇の裁量によって当初より特別に決められていた事です
また、彼が強くそれを望んだ結果でもあるのです
そうか
室長の〇〇〇〇〇の人事管理の方法には批判が多い
私もどちらかというと批判を唱える方かもしれないな
理由は結果を先読みして人を動かすという冷たさがそこにはある
人の能力を見切って可能性を求めないという、人に対する温かみが感じられない
彼は長年に亘って特殊な情報の管理を扱ってきた人間なのだ
そのせいもあってか、人の心理を読むことには長けている
なんといえばいいのか・・
彼と接していると、どことなく暗い感じを受けてしまう事が多いように思う
数多くの絶望と接してきたからだろうか
そんな事を考えてしまうのだ
・ ・ ・
余計な事を言ってしまったか・・
いいえ
でも、組織には必要な人間かもしれませんよ
彼は人には愛されない
また、彼自身も人を愛さない
常に客観性を重んじて、感情にはとらわれない性格の持ち主です
私の個人的な考えになりますが、彼は徹底した守秘義務を守っては貫いています
その事が影響しているようにも思えるのですが
所内ではもっぱらそんな話ですよ
・ ・ ・
君はミッションに対して、こんな事を考えた事はないか・・
ミッションの光と影
副長官
私は自らの立場において発言できる事を、多少なりともわきまえているつもりです
組織の在り方に直接かかわる事を発言できる立場にはありません
ご容赦ください
そうか
私の聞き方が悪かった
・ ・
愛