真空の比喩 111 (ちょうちょもぼくらのように)
ちょうちょが飛んでいる。
ちょうちょは、
いまこの一瞬後をどうやって飛ぼう、
どっちへ向かおう、と
考えているだろうか。
ちょうちょは、
一瞬一瞬を飛んでいるだけではないか。
ちょうちょは、
「いま、生きている」と思うだろうか。
一瞬一瞬を飛んでいるだけではないか。
ちょうちょは終わりを思うだろうか。
一瞬一瞬を飛んでいるだけではないか。
終わりの間際も、そうでない一瞬も等しく、
一瞬を飛んでいるだけではないか。
ぼくも一瞬一瞬を飛びたい。
ちょうちょのように、
のように、
ちょうちょもぼくら
のように、ぼくらを見ているかもしれない。
ちょうちょもぼくらを思うかもしれない。
ちょうちょもぼくら
のように。
真空の比喩 111 (ちょうちょもぼくらのように)