真空の比喩 111 (ちょうちょもぼくらのように)

ちょうちょが飛んでいる。

ちょうちょは、
いまこの一瞬後をどうやって飛ぼう、
どっちへ向かおう、と
考えているだろうか。
ちょうちょは、
一瞬一瞬を飛んでいるだけではないか。

ちょうちょは、
「いま、生きている」と思うだろうか。
一瞬一瞬を飛んでいるだけではないか。
ちょうちょは終わりを思うだろうか。
一瞬一瞬を飛んでいるだけではないか。
終わりの間際も、そうでない一瞬も等しく、
一瞬を飛んでいるだけではないか。

ぼくも一瞬一瞬を飛びたい。
ちょうちょのように、
のように、
ちょうちょもぼくら
のように、ぼくらを見ているかもしれない。
ちょうちょもぼくらを思うかもしれない。

ちょうちょもぼくら
のように。

真空の比喩 111 (ちょうちょもぼくらのように)

真空の比喩 111 (ちょうちょもぼくらのように)

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-11

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