誰もわたしを愛さないで

  1
誰か わたしを愛してください──
  いいえ いいえ わたしなんかを愛さないで

誰か わたしを愛してください──
  それをわたしは禁じたのだ(愛されるなら仕様がないけど)

誰か わたしを愛してください──
  いらない いらない わたし(不在)は不在(すべて)を愛しえるから

誰か わたしを愛してください──
  あなたの「あなた」をどうか愛して 誰もわたしを愛さないで

  2
義母よ わたしは──
永遠のシノニム “愛する”と”信じる”を私固有の詩的言語として守り切ります

死よ わたしは──
双の月より降る“美”と”善”の織重なる天上の光と音楽が この詩と射しちがうのを()っています

シモーヌ わたしは──
対象を大切に想い身体をうごかす愛のほか 一切のそれを愛と是認しない勇気を授かりました

こんなわたしの夢を赦さないで されば愛して
貴女に赦されずに一途に透したわたしの貞節 唯それだけを──

  3
神秘の青い理念は 肉から昇る真紅の情念と綾織り、amethystの硬質な反映を燦然と炎やしながら 天へ昇るらしいです わたしの憧れは菫色──ルネ・ヴィヴィアンをご存知? みしらぬひとに綺麗な石ころをさしだす子供がする様なきがるさで わたし この睡る水晶をいつやあけわたす わたしは幾夜幾夜に詩と夢を紡ぎ孤独を磨きながら生きている──唯朝がくるだけ 波の様に幾度も、幾度もしろく褪めた朝がくるだけ
貞節──さすればいつや かの月光は降ってくださるでしょうか?

誰もわたしを愛さないで

誰もわたしを愛さないで

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-12-04

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