『硝子の夜に咲いた声』

偽りの愛のうたであっても
君は私の夜を終わらせた


『硝子の夜に咲いた声』


一人目の女は欲に目が眩み
二人目の女は真実の愛に去った
孤独を選んだ訳ではなく
孤独が私を気に入っただけ

有り余る富と比べれば
何と慎ましい性質の男だろうか
本質は強欲にも賞賛では飽き足らず
未だ愛を求めているというのに

倒れ込み震える小鳥を見つけたあの時
やっと手に入れられると安堵した
その感情の何と罪深く醜いことか
君はきっと想像もしたことがないだろう

美しい瞳も唇も歌声さえも
余すことなく手に入れて
その肌に許される甘美を思えば
私の手など幾ら汚れてもいい

悲しい決断をした君に贈る
エメラルドの首輪は所有の証
けれど決して心までは落ちてこない
そのことを殊更強調するとしても

愛していると口にする時
私の顔は歪んではいないだろうか
哀れな君はまるで尊いものでも見るように
何故今も真っ直ぐ見つめてくれるのか

暗闇に浮かび上がる君の姿
全て貴方のものだと歌う声
ドレスも香水も君を輝かせる為
その為だけに存在するということ

スポットライトから広がるように
灯りは私の心を染めていく
そして君の声だけがこの世で唯一
美しく希少な宝石だと思い知る



「君の幸福を願えない私をどうか許して欲しい」

『硝子の夜に咲いた声』

『硝子の夜に咲いた声』

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-11-28

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