卒園式
目のような桜の蕾のなか
卒園式は終わろうとする
まばらに拍手がわき起こり
卒園児はふたりずつ手をつなぎ
どんぐりの出口へと向かう
ひとりの児が
「いやだ いやだ」
と言って床に寝転ぶ
腕と脚は魚のようにもがく
わかるよ
たのしかったんだね
誰だっておとなだって
いまいるところから出たくない
でもきみはもう出てきたんだよ
出てきておぎゃあと言った
だからだいじょうぶ
どこか青空のかたすみで
「ヨーイ ドン」
と雲の声がして
その児は起きあがる
先生の手をふりはらい
どんぐりの出口へ走り出した
だんだん大きくなる拍手のなか
ほかの卒園児の列を追いぬかし
その児は先頭で
卒園式会場をぬけだし
まぶたのような桜の園庭で
ばんざいをする
ひとりでばんざいをする
竜巻のように拍手
卒園式