Monologue garden
あおみどり。
クラゲになりたい。
生きたいとか、死にたいとか
そういうの無しに、ただ漂いたい。
あおみどり。
うん、とてもきれいな色だね。
僕の隣で、君が、あおみどりの光に優しく包まれているのが見えるよ。
このまま、二人で、漂っていよう。
感情は、波だなんていうけれど
それは残酷なほど激しくて
一瞬でも、生きていることを疑うなら
死んだほうがましとさえ思う。
ピンクのシャツとオーバーオール。
君は「子供みたい」だなんて言ったんだ。
日傘を差して、歩いていった。
ひとりごとの庭。安息の小道。
ドアベルが鳴り、珈琲のかおりが僕たちを包み込む。
二匹のクラゲとあおみどりの海。
君は「叶わなくてもいい」って言ったんだ。
ドアベルが鳴り、風がふっと通り抜ける。
僕は隣で、君と同じのを飲んでいる。
ここでは、ゆっくり時間が流れるから
叶えたいことも、悲しいことも
叶わなくたっていい夢も、ぜんぶ聞くから
一緒に、ああだこうだ、言おう。
planisphere
どこにいるんだろう、もう一人の自分。
探しているんだ、本当の自分。
そんなの掴んだためし、ないけど。
「ごめん」って言って、「いいよ」って言われるの好きだから、いくらでも自分のことを嫌いになれた。
かぎかっこなしの僕の台詞、そんな君の心に加えてほしい。
首元に、夏の大三角。
いまだに甘いループの渦中。
飽きるほど泣いたのに、ねぇ、また泣きたくなる。
僕の声が届く、その耳の近く。
ふとももと、ふくらはぎのうら。
そしてその脚のたもと。
すべて繋いで見えた星座が、指し示しているのはここなんだ。
宝物をそっと置いて置ける場所。
誰にも言えない秘密を、君が僕にあずけてくれる場所。
ずっと、ずっと探していたんだ。
首元に、夏の大三角。
たったひとつの僕の夏に、その星たちを加えてほしい。
ずっと、ずっと探していたんだ。
おかえり、僕のふたご。
Dear mire,From maia
春がつくられた、その翌日、君は生まれた。
深い、深い、沼のほとりに。
水底に咲くという、一輪の花は、君がその名前を思い出すのを、いまかいまかと待ちわびている。
「心と身体は変わりゆくもの」
時々、自分の温もりさえうっとおしくなるほど、何もかもが嫌になる。
僕は君に光を見て、君は影ごと受け入れた。
「心と身体は変わりゆくもの」
同じように、この沼地にも秋がきた。
緑の涙であふれた庭。
僕の顔はまるっきり透明で、その言葉一つで水面のように揺れる。
君が僕に見せてくれた、言葉にできない自分自身は、ぐちゃぐちゃで、ぼろぼろで、迷子で。でもとても正直で、愛おしい。
もう、飲み干せないほどに、緑の涙であふれた庭。
間違い探し、最後の一つまで溶け込んで、二度と見つけられないみたい。
僕の顔はまるっきり透明で、けれども悲しい時は思い出してほしい。
春がつくられた、その翌日、君は生まれた。
深い、深い、沼のほとりに。
緑あふれる季節が過ぎ、この沼地にも秋がきた。
ふたりはまるで川の流れで、いつか海を象るけれど、しばらくは実った言葉を食んで過ごす。
深い深い沼の底に、人知れず咲いていた、一輪の花が枯れた時、君はとうとう思い出す。
私の本当の名前を。
Monologue garden