BLACK DREAM

邂逅

あかるい、まぶしいしろいくにからおちる。
おちる。
おちる。
"みぎて"をのばす。
だれも、だれもたすけてはくれない。
それほどのことをしてしまったようだ。
もうむり。むりなんだ。
あぁ、あぁ。
はいいろのくにがみえる。
ボクは_____



美しい三日月に照らされたネオン街。
昼の静けさとは打って変わって、酔っ払いたちで賑わっていた。
「ねぇ、君1人?
良かったらさぁ、俺たちと飲み行かない?」
この街ではよくある数人の酔っ払いによるナンパである。ナンパされている方は聞こえていないとでも言うように、フードを深く被りうつむく。
「てかこいつ、男?女?」
「まぁ、どっちでもいーだろ。
あの顔だったら俺、どっちでもいける。」
酔っ払いたちは目の前で失礼な話を繰り広げる。

「申し訳ありません。」

凛とした声が急に割り込んでくる。
酔っ払いたちが振り返ると、いわゆるロリータファッションを身につけた少女が立っていた。この国のものではないのか、髪も目も色素の薄い灰と紫に染まっている。月夜にもかかわらず真っ黒い日傘を刺しているのも何となく不気味である。
「そちらの子、私のでして…返していただいてもよろしいでしょうか?」
すっと中性的な子を指差す。酔っ払いたちは理解ができず、顔を見合わせる。
「は?あ〜…君も一緒に行きたいの?」
「いいえ。ですから、その子。私の彼氏なんです。」
少女がそう告げると、気まずそうな顔になる。
「あ〜な、なるほどね…、じゃ、じゃあ…すみませんでしたぁ!!」
酔いが覚めたのだろうか。素早くネオン街へと姿を消した。
「あの、大丈夫でしたか?急に彼氏だとか言ってすみません。」
ずいと少女が距離を詰める。
「な…で……」
「はい?」
「何で助けた…?」
「あぁ…困っていたようですので。
その様子ですと、ここも初めてでしょう?
お家に帰った方がよろしいかと。さもないとまたああ言った者たちに絡まれますよ。」
気づけば、少女は隣に立っていた。
「家……は、ない。」
「あら。
でしたら私のお家に来ますか?」
「はぁ!?」
何とも不思議な少女である。喋り方といい、雰囲気といい、無理やり人の心に入り込んでくるようだが、不思議と受け入れてしまう。何とも言いようがない感覚であった。
「私、ちょうど1人暮らしでして。
ひろぉい家に1人なので寂しいのですよ…。
ちょうど同居人を探していましたし。
ウィンウィンというやつではありません?」
少女がすっと"みぎて"を差し出す。

『どうせ君には無理だから。』
『いやだぁ、無理だって!』
むり、ムリ、無理!

気づけば、"みぎて"を取っていた。
「(後先考えない。悪い癖だ…。)」
「ふふっ……!ありがとうございます…
では行きましょうか!」
「…?」
一瞬、一瞬だけ。この少女から死の気配が漂った…気がした。

BLACK DREAM

BLACK DREAM

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-11-15

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