zokuダチ エスカレート編・23

糞キャラ増産ならお任せの、作者がお届けする、救い様のない、糞大事君、
本格デビュー回です。ジャミルじゃなくても、多分、誰でも一度はブン殴りたく
なると思うかと。

クソ大事登場編

こたつから抜けられない!

「ジャミル、みてみて!これ、何だと思う?
おこただよお!冬の代名詞!必需品!えへへ、
これからに備えてもう買ったんだよお!」

今日はダウドに呼ばれ、ダウドの部屋に
訪れているジャミル。

「おお!こたつか!お前、何時の間に
買ったんだよ!」

「えへへ、夏の間に図書館のバイトで溜めた
お金で買ったんだよお!」

「そうか、あの描写一回きりだったのにな、お前、
あの後もちゃんと行ってたんだな、知らなかったよ、
すぐクビになったかと思ってた」

「うるさいよ!変なとこ突っ込むと
あたらせないよお!」

「冗談冗談!……んおおおー!あったけええ~……、
けど少し気が早ええ様な気もするけど……」

「いいんだよお、んふう~……、最近はもう
朝が冷える時期だし……」

馬鹿2人、こたつの魔力に取りつかれ、こたつから出ず、
そのまま転寝してしまう。

「……ジャミル、いた!何してるのよ!いないと
思ったら、又ダウドの部屋だったのね!」

ジャミル探してアイシャがダウドの部屋まで来たが……、
微妙な2人の表情を見て何だか不思議そうな顔をする。

「あ、アイシャ、いらっしゃ~い、んふう~……」

「おお、お前もこいよ、温まらせてもらえよ、
癖になるぞお~……」

微妙に頭に花が咲いてしまった様な状態の
ジャミダウコンビにアイシャは呆れかえる。

「ほーら、オプション、おみかんもあるよお~……」

「お?みかんもあるのか、もっと早く出せよ、
このヘタレ!」

「ヘタレは関係ないでしょ、んふふ~……」

「みかん?きゃー!私もお邪魔するー!!」

「おー、来い来い!」

みかんに釣られ、等々アイシャまでぐうたら
メンバーの仲間入り。

「……あったか~い、確かにこれは一旦
入っちゃうと抜けられないわよね、
それにみかんまであるんだもん……」

「だろだろ?遠慮すんなよ!」

「……電気料金はオイラが払うんだからね、
もう……、それにしても、んふふ~、幸せ……」

そんなぐうたらトリオを窓の外から眺めている
変な物体が一匹。……暫らくぶりの小悪魔、
リトルである。

「けけ、そこから出たくないのりゅ?なら、
そこから出られないようにしてやりゅ、
久しぶりに魔力の調子も回復したし、優しい
リトルのサービスりゅ、けけけのけ~!」


「……はあ、私、流石に暑くなっちゃった、
そろそろお暇するね……」

「何だよ、もう出るのかよ、お前、俺に用が
あったんじゃねえの?」

「……また後でいいわ、よいしょ、……あれ???」

「どうしたのお~?」

こたつから足を外そうとしたアイシャが又
微妙に不思議そうな顔をし、ジャミルと
ダウドに訴え始めた。

「こたつから足が抜けないのよ!……おかしいなあ~……」

「んなアホな事有るワケねえだ……、あれ?」

「…おかしいなあ、オイラも足が何か微妙に変、
何だか急に足が重くなったみたいなんだけど…、
あれ?あれ…?」

「……ふんっ!……ホ、ホントだ……、何だこりゃ……、
う、ふうううーっ!」

「ちょ、やだっ!何これっ、……足が、足がっ!!」

……ジャミルはうつぶせで寝転がっている体制で
いる為、こたつをしょっている状態なのでまるで
姿がカタツムリである。ダウドも横を向いて
寝そべっているままの恰好。こたつ馬鹿2人も
漸く事態に気づき、慌て始める。

「……うえええーっ!あ、暑いよおーっ!」

「ダウド、こたつの電源落とせっ!……は、早くっ!!」

「んな事言ったってこの体制じゃ無理だよお、
起き上がれないんだよお……」

「困ったわ……、これどうなっちゃってるのよう!!」

……間抜けな体制のまま、動けなくなってしまった
ジャミルとダウド……、足をこたつに伸ばしたままの
状態のアイシャ……、ぬくぬくこたつ天国から一転し、
地獄の溶岩サウナへと場所が変わってしまった……。

「……う、うええええ~、……暑い、暑いよお……、
うううう~……」

「……暑い、暑いわあ……、う、ふう~……、
ああん……、あ、はあん、あん……、もう
駄目え~……」

……異様に呻くアイシャの声が何となく
エロチックなので、ジャミルも噴気して
しまい、余計な暑さと化す……。

「……らめら~、もう俺……、らまんできねえ……」

「……誰か何とかしてえ~、このままじゃ
オイラ、ヘタレの蒸し焼きになっちゃうよおお~……」

「お前自分でヘタレって認めてんじゃねえよ、
馬鹿だなあ~、それにしても……、こりゃマジで
まいった、……くうーーっ!!畜生っ、おりゃああーーっ!!」

何とかしてこたつからはい出そうと、思い切り
全身全霊を込め、ジャミルが腹に力を入れた為、
3人は更なる悲劇に見舞われる非常事態に……。


           ……ぶんぼぼぼ!!


「……いやあああーーっ!!ジャミルのバカーーっ!!
くさいーーっ!!」

「……オイラもう駄目……、死ぬ、ホントに死ぬ……」

「うわあああーっ!!……や、やった本人が言うのも
なんだが死ぬほどくせええーーっ!!」


……どうにもこうにも出来ない地獄に陥れられた3人。
又リトルの仕業だと気が付かないまま、このまま更に
時は過ぎ、それから30分が経過した。


「……あづい……、あづい……、じぬ、ううう~……、
こ、こんなどぎづごうよぐ……、アルがぎで
ぐれないがなあ~、あうううう~……」

「……何言ってんだよ、んな都合よくあの
腹黒が来てくれるか……」

「君達一体何してんの?ノックしても、インターホン
鳴らしても出ないし、でも、声は確かにするから
おかしいと思ったんだけどさ……」

「……よ……、あ、あーっ!!アルーーっ!!
助けてくれえーーっ!!死んじまうーーっ!!」

「は、はあ……?」

よほど暑くて仕方ないのかジャミルまでアルベルトの
姿を見た途端、大声を張り上げて訴える。突如現れた
今日の彼は雅に救世主、しかし、3人の状況が
良く分からないアルベルトは只管首を傾げる
ばかりであった。

「……お、お願い、アル……、おこたつの電源を
抜いて……」

「アイシャまで本当にどうしたの!分ったよ、
とにかく電源を落せばいいのかな……」

「……た、助かった……」

アルベルトにこたつの電源を落として貰い漸く
ジャミル達は蒸しサウナ地獄から解放された。

「ダウド、君に借りていた本読み終わったから
返しに来たんだけどさ……、お役に立てて
良かったみたいだね、ははは……」

「うう、オイラえらーいっ!アルに本貸しといて
本当に良かったーっ!!」

「何だよ、バカダウド……、お前と俺、長年の
付き合いだけど、そんな趣味あったのか……?」

「うるっさいなあー!オイラだって玉には
本ぐらい読むよお!ジャミルとは違うんだから!
だから図書館にもバイト行ったんじゃないか!」

「うん、中々面白かったよ、……ヘタレの美学……」

……やはりダウドはダウドだとジャミルは思い、
何となく安心した……。



「ダウド、君の処の冷蔵庫を借りて冷たい氷水
作って来たけど……」

「ありがてええ、くれ!……助かる……!!」

「アル、ありがとう~!!」

「……オイラはこの体制だから飲めないんだよおお~!!
お水飲みたいーーっ!!」

「はあ、それにしても……」

ジャミルはアルベルトに、こうこうこうで、
こうなってしまった状況を説明する。
……アルベルトはまだしどろもどろで目を
ぱちくりさせていたが。

「足がよ、まるで接着剤付けられたみたいに
動けねんだよ……」

「訴えがイマイチ良く分からないけれど要するに、
こたつから抜けられなくなっちゃったんだ……、
そんなアホな……」

アルベルトが試しにこたつの台座を持ち上げてみる。
しかし、状況は変わらず、3人はそれぞれの体制の
まま動けないのであった……。

「……何なの、これ、僕には理解出来ない、
何が起きているの……」

頭痛がしてきたアルベルトは取りあえず、風に
当ろうと窓際に近寄る。そして、窓を開けた途端……。

「けーけけっ!あ~っ!あいつら相変わらずバカりゅ!!
お、……面白すぎて死ぬりゅーーーっ!!あーっはっ
はっはっ!!は、腹がわれりゅーーっ!!」

「……」

「りゅ……?」

丁度窓の外でバカ笑いしていた小悪魔とアルベルトが
鉢合わせする。アルベルトは無言でリトルをフン捕まえ……。

「……ぎゃあああーー!!何すりゅーー!!」

「ジャミル、窓の外に何処かで見た様な変な生き物が
いた、……珍しいから捕まえたよ、……高く売れるかな、
……うふ、うふふふふ……」

「りゅううううううーーーっ!!」


そして、漸く足が動かなくなった原因も突き止め、
今度はアルベルトも交えて4人と、そして何故か
メンバーにいる小悪魔は再びおこたタイムを
楽しむのだった。

「はあ、今回は本当、マジでアルのお蔭で
助かったぜ、……たくっ!」

「う~ん、……やっぱり一旦入っちゃうと
抜けられないわあ~……」

「ほーんと、恐ろしいね、こたつって……」

「うん、こたつにおミカン、この組み合わせって
最強なんだね、僕ももっと異国の文化を勉強
しないと……」

「おう、リトルもしっかり温まって行けよ!
それこそ脱水症状起こすまでな……」

こたつの中には縄で縛られ呻いている小悪魔がいた。

「……あ~づ~い、りゅ……、畜生、
……このままじゃ悪魔の蒸し焼き
フルコースりゅ……、うう~、覚えてろ~、
糞猿……、りゅうううう~……、……あ~づ~い~、
りゅ……」

……プウ~……

「あ、わりィ、さっきの残りだ……」

「もうっ、ホントにっ!癖が悪いんだからっ!!
ジャミルのバカっ!!」

……小悪魔、こたつで死亡、灰と化す……。

「……リトルは死なねえりゅーーっ!
……つ、つぎこそわあああー、……覚えてろ、
りゅ……」


ボクが外観我大事です。

大分朝が冷え込む様になり、めっきりと
寒くなって来た今日この頃、浮かない顔を
したアイシャがマンションから出て来た。

「おはよう……」

「はー、アイシャ、又ジャミルとケンカしたでしょ!
顔見れば分るよ!」

「全く、あの人もホントしょうがないですねえ!
女の子に対して、全然計算が出来てないわっ!」

「あの、今日は何が原因なんですか?」

「モフー!」

丁度、花壇の手入れをしていた魔法ガールズ達と
アイシャが鉢合わせする。アイシャは浮かない
表情のまま、口を開いた。

「分らないの、別にケンカしたい訳じゃないのに、
顔合わせればくだらない事ですぐにケンカに
なっちゃうの、どうしてなのかな……」

心配する魔法ガールズ達の方をそれきり見ずに、
アイシャは肩を落としたまま散歩に出掛けて行った。

「……アイシャさん、可哀想だね、モフルン……」

「モフ~」

「一回、ガツンと言ってやった方がいいのかしらっ!
ほんっとっ、困った人ねっ!ジャミルさんも!」

「はー……」


で、等の困った人は部屋で寝転び、相変わらず
スパスパタバコを吸いまくっていた。

「たくっ!アイシャの野郎!人の顔見りゃ
ぐちぐちぐち愚痴しか出ねえのかよ!
腹立つなあーー!!」

「しょうがないよね、見てると愚痴しか
出ない顔だもん、アイシャが正論だよお……」

「なんだとこのやろ!」

ダウド、一目散でジャミルの部屋から逃走す……。


……コハク、ほ、ほら、口開けて……

な、何か恥ずかしいな……

恥ずかしがることないだろ、ほら、あーん……、
大根もあるよ……

あーん……


「てめえらっ!!わざわざ人の部屋の前で
味噌おでん食うなーーっ!!味噌くせえーーっ!!」

バカップル、シングとコハク、猛スピードで逃走す……。

「たくっ!どいつもこいつも、苛々苛々……!!」

ジャミルは勢いよくドアを閉めると部屋に
引き籠る。自部屋に逃走し、様子をこっそり
覗っていたダウドは何となく納得。

「色んなカップルさんがいるんだなあー、ま、
ジャミルとアイシャにはああいうのは無理かも」

そして、又いつも通りジャミルと喧嘩した
アイシャは気分転換に商店街へ。
聞こえてくるのはスピーカーから流れる
相当相当気の早いジングルベル……、と、
商売商戦なのかクリスマスケーキ予約
受付中の洋菓子屋の看板。

「……まだクリスマスまで2か月近く
あるじゃないの……、それにしても、
私には好きな人と一緒に甘い時間を
過ごすのなんて無理なのかな……」

幸せそうに手を繋いで歩くカップルを見て
アイシャが溜息をつく。そして、イメージ
してみるのは、タバコを吸いまくって鼻と尻から
煙を噴出しているジャミルの姿であった。

「やっぱり無理かも、ハア、馬鹿みたい……、
帰ろう……」

気が付くと、アイシャはいつの間にか町から
離れた人通り少ない場所を歩いていた。

プップー!

「……?」

突然派手な外車が目の前を横切りクラクションを
鳴らす。そして、外車から派手なスーツの
パツキン男が降りて来た。

「やあ、お嬢さん、この間はどうも!」

「は、はあ?」

パツキン男はくるくる回転しながらアイシャの
前に跪くと、さっとバラの花を渡そうとする。

「あの、何処かでお会いしましたっけ?」

「いやだなあー、ボクですよ、外観我大事!」

「え、えーと……」

そう言われても思い出せず、アイシャは困惑する

「確か、あのゴミ屋敷……、……マンションに
住んでおられるんですよね、あの時は、お怪我が
無くて何よりでした!」

「えー、あ!やっと思い出したわ、あの時確か、
変な人達から助けてくれた、えーと……、変な人……」

「そうです!外観我大事です!お美しいお嬢さん……」

ロンゲパツキン男、……外観我大事は跪いたまま、
アイシャの手の甲にそっとキスした。……アイシャは
どう反応していいかわからずその場に凍りつく。

(こういう変な人って、ドラマとかで見た事
あるけど、実際に目の前にしてみると何だか
怖いわ……)

「お嬢さん、どうしてあなたの様な可愛らしい方が
あんな処に住んでおられるのです?あなたにはもっと、
お城の様な素敵な場所が似合う、プリンセス……」

……糞こっ寒い台詞を飛ばしてくる大事にアイシャは
思わずカチンとくる。

「あそこは私達のお家です!もう皆家族同然なの!
何も知らない癖に変な事言わないで!」

「おお、これは失礼、ですがボクには耐えられない、
やはり美しいお姫様には素敵なお城が似合うんですよ……」

「……もうやってらんないわ、私帰ります……」

と、歩き出したアイシャの手を大事が強く掴んだ。

「な、何するんですか……?」

「この間のお礼に、デートして頂けませんか?
イイですよね?借りは返して頂きますよ……」

「な、なっ!?」


「お休みー!お休み!たっのしいわんっ!日曜日って
すっごくわんだふるー!ね、いろはっ!」

「もう~、こむぎは毎日がいつもワンダフルでしょ!」

「♪えへへ~!」

「ですなあ~!」

「やいー!」

「アンっ!」

「お子ちゃま達と……、シロとこむぎは
本当に頭のレベルが同じね……」

「なあに?ユキっ」

「何でもないわ……」

わんぷり勢と野原家のお子ちゃま達は、お休みの日に
ゆったりとお散歩中である。

「でも、こむぎちゃんはいつも元気じゃないと!
ね、いろはちゃん」

「あははっ、悟君、だよねえー!」

「うんうん!」

「もう~っ!いろはもまゆもっ!なーにっ!」

「おお?あれはアイシャおねいさんだぞ!」

「あれ?誰か男の人と一緒にいるけど、
ジャミルさんじゃないみたいだし、僕も
見た事のない人だ……、誰だろう……」

「やいっ、やいっ!(浮気現場発見!)」

この間同じく、子犬転落騒動となった橋の近くで、
見知らぬ男とアイシャが揉めている。

「……ね、ねえ、皆……、あの人ちょっと、
何だか危ない人みたいだよ……」

まゆが口元に拳を当て顔面蒼白に……。
アイシャは変な男に無理矢理高級外車に
連れ込まれそうになっている……。

「……いやーっ!もう誘拐はいやーっ!!
またジャミルにデコピンされちゃうーーっ!」

「人聞きの悪い事を言うなっ!僕は君に
素敵な異性との付き合い方を教えてあげようと
してるだけじゃないか!」

遠くからこっそりと様子を覗っているいろは達は……。

「これはっ!ほ、本当に誘拐だっ!は、早く、
アイシャさんを助けないと!」

「……悟君!」

「いやーん、オラ何だか興奮してきたー……」

「よおーし!アイシャ、助けに行くよっ!
……今いくわんっ!」

こむぎは奮起し、子犬モードに戻る。しかし、
そんなこむぎをユキが止めたのだった。

「こむぎ、待ちなさい、確かに今、私達が行けば
助けられるけど、此処はやっぱりジャミルに
きちんと責任を取らせるべきだわ、全くもうっ、
私が行ってくるわ!……にゃんっ!」

「……ユキっ!」

「全くもう、世話が焼けるんだから……!」

ユキも猫に戻り、マンションまで一目散に
駆け出す。アイシャの危機をジャミルに伝える為……。

「ユキちゃん、どうかお願い……!」

「で、でも……、今から間に合うかなあ、アイシャさん……」

「……ユキちゃんも厳しいなあ、……うん、で、でも、
これも愛の試練……、だね」

「おおー?」

自分で呟いた言葉に顔を赤くする悟……。そして、
ジャミルはと言うと、アイシャの危機も知らず、
不貞腐れて部屋でイモを食っていた。

「いい加減にしなよおー、又爆発しても
知らないよお~……」

そして、……ドアが勝手にバンと開いた。
立っていたのは、再び猫屋敷ユキになった
人間バージョンのユキ。

「……お?」

「あ、ユキちゃん、いらっしゃーいって、此処
オイラの部屋じゃないけどさ」

「……ジャミル、この大変な時に……、あ、
アナタって人はっ!いい加減にしなさいいーーっ!!」

「……んぎゃああああーーーっ!?」

ジャミル、問答無用のユキの怒りの引っ掻き
攻撃を食らう……。

「……い、いっつ~、だから何なんだお前はよ!
いきなりっ!」

「ね、ねえ、ユキちゃん、アイシャが大変って、
ま、また何かあったの……?」

「……私は呼びに来てあげただけ、早く
行かないと本当に間に合わなくなるわよ……、
橋の処で変な男に絡まれて連れて行かれそうに
なってるの……」

「……ア、アイシャっ!!」

ジャミルはユキから話を聞くと外に一目散で
猛スピードで飛び出した。

「はあ、全くホントに……、ジャミルって
意地っ張りで不器用で素直じゃないんだから……」

「ユキちゃん、毎度お世話になります……、
どうもありがとう……」

「ふん……、ほおっておけないから……、
構ってあげてるだけよ……」

ダウドが親友代表でユキにペコリと頭を下げた。


「……ああ、ユキ、まだかなあ~……、本当に早くしないと……」

「!ちょっと本当にこれはまずい、……薬品を取り出した!」

「おおおおおー!!」

「たいやいやい!!」

「も、もう見てらんないわん!こむぎ、本当に行くよっ!
ううううう~……」


「こうなったら、古典的だけど、これしかない……」

大事が取り出したのは薬品のクロロホルム、もはや
行き過ぎのマジ基地誘拐行為に発展しそうな勢いであった……。
こむぎが堪らず、飛び出しそうになった勢いのその時……。

「ぎゃーいやあああーー!!誰かーーっ!!」

「ええいっ!大人しくしたまえっ!観念しろっ!!あ?」

誰かが大事の肩を掴む。……ジャミルであった。

「お前は……わああああああ!!」

ジャミル、何も言わず大事を思い切りぶん殴り、
大事はそのまま地面に倒れた……。

「……何て事だあーーっ!!す、数百万の差し歯が、
……差し歯があーーっ!!」

「大丈夫か?アイシャ……、ごめんな、
いつもの事だけどさ……」

「……ジャミル、……ふ、ふえええ……」

ジャミルはそのまま泣いているアイシャを
側に寄せるとそっと抱きしめる。そして、
大事の方を強く、……強く睨んだ……。

「お前、確かこの間のインチキ詐欺男だよな……?」

「覚えてろーーっ!このままで済むと思うな、
差し歯の件は必ずどうにかして貰うからなーーっ!!」

ジャミルが問う前に、大事は外車に乗って
さっさと逃走する。残されたジャミルと
アイシャは顔を見合わせる……。

「ジャミル……、あの、どうしよう……、
又私の所為で……、あの人きっと又お金の
請求に来るわ……」

「大丈夫さ、ワリィのは向こうなんだからよ、
それよりもマンション帰って一緒にイモ食うか?」

「うん……、食べたい……」

アイシャはジャミルの手をぎゅっと握った。
2人は手を繋いでマンションまで帰る……。

「どうにか間に合ったみたいね、本当に世話が
焼ける人達ね……」

「でも、ユキちゃん、あの変な人は逃げて行った
みたいだけど、何だかまた大変な事になりそう
なんだよ……」

眼鏡の縁に手を掛け、大事が逃走した方向を
見つめる悟……。

「そう……、また……、嫌な感じね……」

「……わふ~ん、何だかこわいわん、いろは……」

「こむぎ……」


……久々に又平穏を取り戻したナンダカンダ家では……。


「旦那様、お茶ですぞ、新製品らしいです、お嬢様が
町で買って来てくれました」

「おお、爺、すまんのう、どれ、一息入れるかな……」

領主と庭師は温かいお茶を飲み、ほっと身体を休める。

「そう言えば、間も無く、お坊ちゃまがお帰りに
なられるんですな……」

「ああ、数年間連絡もよこさず、一体どうした
ものかと思っていたがな……」

……コンコン

「ああ、入りたまえ……」

ドアを丁寧に開け、メイドが部屋に入って来る。

「失礼いたします、……旦那様、大事様が
ただいまお戻りになられました……」

「到着したか、出迎えてやってくれ……」

「はい……」

と、メイドが頭を下げ、部屋を出て行こうと
する前に、派手な格好のパツキンロンゲ男が
回転しながら堂々と領主の部屋に入って来たのである。

「ハロー!おじさん!お久しぶりですっ!」

「大事……、久しぶりだと言うのに、どうしたんだ、
その腫上った顔は、みっともない……」

「話すと長くなるんですが、それはもう、
思い出すだけでハラワタが煮えくり返ります……」

……大事は拳を握ると腫れた頬を摩り、憎々しげに
ジャミルの顔を思い出すのであった……。


……ボクが外観我大事ですってば!

「大事、そんな戻って来て早々、何があったのか
ちゃんと話しなさい……」

「おお、坊ちゃまの分も、お茶をお淹れせねば……」

庭師がいそいそと、台所まで行こうとしたのを
わざわざ大事が声を掛け止めた。

「じい、ボクはお茶は嫌いなんだよ、
知っているだろう?フタバのコーヒーにしてくれ!
砂糖も忘れずにな!忘れた訳じゃないだろう?」

「おおこれはすみませぬ、暫くお顔を見て
いなかったものですから、失礼……」

庭師は再び台所へと向かう、その様子を見ていた
大事は呆れた様に腕を組み庭師をおちょくる。

「やれやれ、暫く会わない内に痴呆が進んだかな……」

「大事、口のきき方に気を付けなさい、じいは
ナンダカンダ家の為に本当に良く尽くして
くれているのだよ……」

「おじさん、何となく噂なんですけど、ボクが
この屋敷を出ていた数10年間、住んでいた町で
色んな噂が立っていたんですが……、嫌でも耳に
入ってきてしまうんですよ、何でもハーレムを……」

「大事、さっきの続きだ、話してみなさい、
此処に座れ……」

領主は慌てて、話をさえぎる様に冒頭の話に
無理矢理戻す。見ていた大事はニヤリと
ほくそ笑み、ソファーに腰を掛けた。

「いやあ~、ちょっと町中で可愛らしい子を
見掛けたんですが、得体の知れないチンピラ男に
絡まれてましてね、で、ボクが助けた訳ですが、
見事にこの通りです……」

大事はここだよ、ここと言う様に再び自分の
腫れた頬を指差した。

「ほう、大変だったな……、大丈夫なのか……?」

「いや、殴られて差し歯が取れてしまいました、
おじさん、つきましては治療費をカンパして
頂けるとありがたいのですが……」

「分った、手配しよう、すぐに良い医者に
行ってきなさい……」

領主はすぐに大事にあっさり100万の束を
手渡しする、大事は待ってましたとばかりに
その場でくるくるっと回転する。

「いやあー!これだからボクはおじさんが
好きですよ!……で、余った金は小遣いに
遣っても……?」

「好きにしなさい」

「サンキューですっ!ではっ!」

大事は部屋を出て行こうとする。丁度其処へ
コーヒーを持ってきた庭師とすれ違いになる。

「坊ちゃま、コーヒーが入りましたが……」

「今それどころじゃないっ!そんなヌルイの
お前が勝手に飲め、じゃあな!」

「……坊ちゃま……」

庭師は折角淹れたコーヒーを盆に乗せたまま
寂しそうに立ち尽くした。

「……じい、すまなかった、わざわざ……」

「いいえ、いいんですよ、では、このコーヒーは
儂が頂きましょうかの……」

庭師はソファーに座り、美味しそうにコーヒーを
口にいれた。



そして、あれから数日、アイシャは常にジャミルに
くっ付いており、側を離れようとせず。

「おい……」

「なーに?」

「ちょっと、着替えたいんだけどさ、部屋出てて
欲しいんだけど……」

「だって、恐いんだもん、あの人絶対変な家柄よ……、
きっと絶対又来るわよ、それに、一人で買い物に
行くのも不安なの……」

外出恐怖症にもなってしまったらしく、アイシャは
すっかり怯え捲っている。

「……アイシャ、ここは唯でさえストロングで
ムキムキな連中と変人ばっかなんだ、なーに、
何が来たって心配するこたあねえよ……」

「でも……」

「ハア、分ったから、買い物ぐらい付き合って
やるからさ、だから少し外出ててくれや……」

「うん、分ったわ……」

アイシャは部屋の外に出て行くが、やっぱり
その表情から不安は消えない様だった。

「……困ったな……」

ジャミルはアイシャを連れ、マンションの外に
出ようとした、其処に……。

「やっほー!ジャミルおにいさま、アイシャおねえさま~、
お元気でしたかー?」

「ぶっひひーっ!」

「きゃあああーっ!お久なのーーっ!!」

「遊びに来たよーん!」

「……ユウちゃん、ブウ子ちゃん、マフミちゃん、
それにケイちゃんもっ!」

「おお、お前らか!」

アイシャは賑やかガールズ達に嬉しそうに駆け寄った。

「ジャミル、私、今日買い物いいわ、皆とお喋りしたいの」

「そっか、んじゃあ、又出掛ける時は声掛けろや」

「うんっ!じゃあ、皆、パーティルーム行きましょっ!
ジャミルまたね!」

アイシャは4人と一緒に嬉しそうにパーティ
ルームへと入って行った。

「とりあえず、一旦は落ち着いてくれたかな、
やれやれ……、助かったよ……」


パーティルームにて、アイシャは皆に
お茶を振舞う。

「お菓子もどうぞ、はあー、こうやって皆と
お喋り出来るの久しぶりっ!凄く嬉しいよ!」

「あははー!ユウもですっ!」

「きゃああー!ホントよねえー!きゃあああーーっ!」

「ぶひぶひ、ぶっひひひーっ!」

「……ブウ子、お前一人で食うんじゃねえよ、この野郎!」

「ぶふーーっ!ふんがふんがーーっ!!」

「ケイちゃんもブウ子ちゃんも相変わらずねえ、うふふ!」

「……うん……」

「ケイちゃん……?」

ケイが一瞬だけ複雑な表情を見せたのを
アイシャは見逃さなかった。

「は……、あ、ああ、ごめん、ちょっと考え事……」

「おめえが考えるツラかよ!ぶひひひっ!」

「うるせーよ、ブスブウ子っ!!アンタに
言われたくねえよっ!!」

ガールズ達のパーティルームでの楽しい一時は
あっという間に過ぎて行き、夕方になる。


「ああ~、ユウ、久々に楽しかったですー!
又遊びにきまーす!」

「きゃああああー!またねーー!」

「おう、今度はケーキ1ホール用意しとけや!
5ホールでもいいぞ!」

「……ブウ子っ!!ホント、変わらずトンでもねえ
奴で申し訳ない……」

ケイがブウ子の頭を抑え付ける、それを見ていた
アイシャは楽しそうに笑った。

「あはははっ!又いつでも遊びに来てねー!」

皆がマンションから去って行くのを見送っていた
アイシャは急に寂しくなったのか又しょんぼりと
した表情になった。肩を落とし、マンションに
戻ろうとした。

「アイシャ……」

「ケイちゃん…?」

其処に皆と一緒に帰ったと思われたケイが
再び姿を現した。

「どうかしたの?忘れ物……?」

「ううん、そうじゃないんだ、ちょっとアイシャに
聞いて欲しい事があって、ジャミルにもなんだけど、
いいかな?」

「分ったわ、私ジャミルに言って来るね!」


今度はジャミルも交え、アイシャとケイは再び
パーティルームへと入った。

「どうした、帰りたくねえだと……?」

「うん……」

ケイは下を向き、俯いたまま口を開いた。

「どうしたの、領主さまとケンカでもしたの……?」

「そうじゃないんだ、ただ……」

「……」

「この間、ナンダ・カンダ家に新しい人が来たんだよ、
数年ぶりに帰って来たらしいんだ、あたしも初めて見た、
おっさん、……お父様の甥っ子らしくてさ……」

「領主さまの……?」

「甥っ子と一緒に住んでたんだな……」

「うん……」

ケイはその時の状況を2人に話始める。


「おじさん、なんなんです?この子は……」

「ああ、お前に紹介しよう、儂の娘となったケイだ、
ケイも初めて見るであろう、儂の甥っ子の大事だ、
今まで遠くの町に住んでいたんだが、今度再び屋敷で
一緒に暮らす事になったのだ……」

ケイは不安そうに大事を見上げる。ケイから見て
あまりいい印象ではなさそうにとれた。それでも、
正式な領主の血筋の者なので、仕方なしに挨拶をする。

「宜しく、ケイです……」

「はあ、昔からおじさんは野良犬でもなんでも
ペットにしちゃうからな、仕方ないか、それに
しても何かボクの好みではない子だね!」

「なんだと、てめえこの野郎!」

「お、お嬢様……!どうか落ち着いて下され!
……お坊ちゃまも……!」

ケイと大事は睨み合う。それを庭師が必死で
止めようとするのだが……。

「はっ!お嬢様だと?とてもそんな感じには
見えないね、おじさん、どうせこの屋敷に
養女として迎え入れるのならもっと可愛らしい
方にするべきです、……そうだね、あの子なら……、
ボクのお嫁さんにもピッタリじゃないか……」

大事が想像したのは、やはりアイシャの姿らしかった。

「大事、この子はもうナンダカンダ家の娘だ、
儂の大事な愛娘だよ……」

「そうですか、でも後で後悔してもボクは
知らないですよ?それでは、夕食まで失礼……」

「大事……」

大事は再び外車に乗り、何処か遊びに出掛けて行った。

「なんなんっ!あいつっ……、あったまくるっ……!!」

しかし、切れるケイを何故か領主は冷たく
言い放つのだった。

「ケイ、大事のいう事も一理あるのだよ、お前も
もう、正式な儂の跡取り娘なのだ、そろそろ立派な
レディとしての自覚も持って貰わないと困るぞ……、
お前は今回が初めてだろうが年末の社交パーティも
控えている、ドレスの似合うお淑やかなレディにな、
何せお前はお洒落が嫌いで困るのだからな、
ナンダカンダ家の家柄に傷をつけぬようにな」

「だ、旦那様……、お嬢様……」

ケイはそれきり領主の方を見ようとせず、黙って
領主の部屋から出た。……そして、今の状況に
至っているのである。

「あたし、今日はどうしても帰りたくないんだ……」

「しっかし、ナンダカンダ家に恥かかせない様に
しろってか、……かーっ、良く言うわ、あの
おっさんもよ、てめえが今までやってきた事
振り返ってみろっての……」

うんざりするようにジャミルが舌を出した。

「でも、ケイちゃん、このままじゃ駄目よ、
ちゃんと自分の気持ちを領主さまに話した方が
いいと思うの……」

「いやだよっ!あたし、絶対帰らないからっ!
それに、自分で頼んであそこの養女になった訳じゃ
ないんだからっ!」

「ケイちゃん……」

「ねえねえっ、ジャミルっ!…あたしも此処の
マンションに住まわせてっ!あんな窮屈なとこ
いるより、此処にいた方が絶対楽しいもん!」

「何だと……?」

「え、……ええーーっ!?」


                      ……つづく……

zokuダチ エスカレート編・23

zokuダチ エスカレート編・23

SFC版ロマサガ1 トモダチコレクション キャプテン まほプリ ロマサガ3 FF9 わんぷり FF8 コードネームはセーラーV クレしん メタルギアソリッド クロスオーバー バカ どんどん増える変な住人 カオスな世界 ドラクエ オリキャラ 陰からマモル 幻想水滸伝ティアクライス 幻想水滸伝1 テイルズオブハーツ

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-11-03

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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