自然美
思い出や約束を延命の機能として消費するとき、形容しがたい罪悪感を覚える。思い出は思い出であるだけで、約束は約束であるだけで充分に美しいのに、恣意的に延命の機能まで兼ねさせて、強引に美を倍加させようとしてはいないか。いやむしろ、そうすればするほど、美というものは損なわれてゆくのだ。美に恣意性が介入した途端にそれはスポイルされるのだ。私にできることはただ、思い出の、そして約束の純粋性を担保するために、いかなる恣意性の介入も拒絶することだけ。ただそうすることによってしか本来の美は発揮され得ない。美とは自然体なのだ。それにあれこれ手を加えようとすることは、意識的であれ無意識的であれ罪悪だ。美というものに負担をかけないこと。延命の機能など見い出さないこと。それはそれ自体で美しい。そのことが保証されるなら、私の命など損耗しようがくれてやろうが構わない。
自然美